★★★★★★★☆☆☆

1990年 89min.

ネタバレ まあみなさんご存じだと思いますので。

敬称略

 

 

監 督 トム・サヴィーニ

製作総指揮 ジョージ・A・ロメロ、メナヘム・ゴーラン

脚 本 ジョージ・A・ロメロ

音 楽 ポール・マックローグ

 

出演

 ベン:トニー・トッド

 バーバラ:パトリシア・トールマン

 トム:ウィリアム・バトラー

 ジョディ:ケイティ・フィナーラン

 ハリー・クーパー:トム・トールズ

 ヘレン・クーパー:マッキー・アンダーソン

 サラ・クーパー:ヘザー・メイザー

 ジョニー:ビル・モーズリー

 

 で、仕方ないもんですからね、このゼッタイに楽しめるホラー映画を観て終わろうと思ったわけですよ。(くわしくは前回紹介しました「0:34 レイジ34フン(0:34 レイジ34フン | みたたの日常と映画ざんまいそしてディズニー! (ameblo.jp))」をご参照ください)

 

 だってジョージ・A・ロメロのゾンビもんですよ。しかも、彼のいわゆる初期ゾンビ三部作、「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド(NIGHT OF THE LIVING DEAD/1968)」「ゾンビ(DAWN OF THE DEAD/1978)(ゾンビ | みたたの日常と映画ざんまいそしてディズニー! (ameblo.jp))」「死霊のえじき(DAY OF THE DEAD/1985)」の最初の作品、要するにですね、「ゾンビ」ってえものを世に送り出した記念すべき第一号を、あの特殊メイクの帝王と言われるトム・サヴィーニが監督してリメイクしてるわけですからね、そらもう期待しかないわけですね。(とはいえ、新しいっても1990年の作品ですから、32年も前なわけで、新しいけど古いっちゃ古いです)

 

 出演している役者陣はわたしほとんど知りませんよ。そういうところでもリアリティがあっていいわけです。ゆいいつ知っているベン役のトニー・トッドにしたって、「ファイナル・デスティネーション」「デッドコースター」「ファイナル・デッドコースター」でちょびっと見たきりですからね、知らないも同然です。

 

 そんななか若干調べてみましたら、本作で最初にゾンビに遭遇するバーバラ役のパトリシア・トールマン、「ジュラシック・パーク」でローラ・ダーンのスタントしてたそうですよ。けっこうホラー映画に出てる方のようで、ジョニー役のビル・モーズリーも、本作では早々に亡くなりましたがホラー畑の人ですし、ホラー専門の方々が集まってできた映画のようです。

 

 さあ、ということで観始めたわけですけれども、わたし1968年の「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド」は大学時代に一回と、結婚してすぐくらいに一回観たっきりでして、ほとんど覚えてませんで。なんかえらいみんながケンカしてたなあ、くらいしか記憶にないもんですから、けっこう新鮮な形で観られるのですね。

 

↑メガネが時代を物語ってますよ。爆  笑

 

↑おキレイですが……、

 

↑襲われてキレます。キレイなのにコワイです。ガーン

 

↑で、早々にお亡くなりになるわけです。わたしこれ観て、「痛ってっ!」て言ってしまいました。いやていうかジョニー、死ぬの早すぎです。笑い泣き

 

 まあとはいえですね、のっけからなんの説明もなくゾンビが出てくるのも違和感ないですよね。そもそもそういう映画ですからね。逆にいつまでたってもゾンビが出てこないじゃ、そっちの方が違和感満載ですよ。なかなかにこういうホラー映画って、こうして説明不要なものってのは少ないわけで、そういうところでみんな苦労して、せっかく怖いのに、なんて評判落としてたりするのですけれども、それを考えなくていいジョージ・A・ロメロのゾンビものってのは、ほんとにスゴイですね。そもそもブードゥー教の伝説からよくもまあこんな映画を創り出したもんだと、ほんとにジョージ・A・ロメロには感謝してもしきれませんよ。亡くなってもう5年ですか。77歳で肺がんで。早すぎますよね。ザンネンでなりませんが、こうしてその偉業をいつまでも感じられる「映画」ってのは、ほんとに素晴らしいエンターテインメントだと思うわけです。

 

 ところでわたし、ゾンビもの観るといつも思うのですけれども、もし世界がほんとにこんなことになってしまったら、はたして生き延びられるのでしょうかね。恐ろしくてしょうがないですよ。ゼッタイ無理やと思います。そもそも日本人、銃撃てませんしね。まったく自信ありません。大学生のころなんか、真剣に銃の撃ち方覚えとかなアカンやろ、とか思ってましたからね。ショボーン

 

 さて、で。

 

 いきなりのゾンビの襲撃にパートナーを失ったバーバラが逃げ込んだ民家にもゾンビの魔の手が、ていうかゾンビの手が忍び寄るわけですけれども、そこへトニー・トッド扮するベンが現れますよ。おっ、救世主か、なんて思ったのもつかの間、全然救世主じゃありませんでした。一見すると救世主づらしてるくせに、でもよく見たらめちゃめちゃ必死でしたからね。演技とするなら最優秀男優賞ものですけれどね。

 

↑必死さがひしひしと伝わるいい演技です。照れ

 

 若干ですね、違和感はありましたよ。家の鍵なんですけどね。昔のアメリカの家の鍵って、内側からも鍵穴に鍵を刺してかけるようになってたんですかね。真偽のほどはわかりかねますが、もし本当にそうだったんなら、これ鍵なかったらしまいじゃないですか。だからピンチになるんですよ。閉められなくって終い、じゃシャレにもなりゃしやせんぜ、だんな、てなもんです。どうなんでしょうね。

 

↑問題のカットです。

 

 でもトニー・トッドはほんとによかったですよ。若干空回りを懸念しましたが、そうでもないほどに熱演してましたから、場の空気も読めるいい役者さんのようですね。あまり出演作が多くないのが、どうしてなのかわかりません。ケン・フォリーにも似てますが、そういう人を捜したのでしょうかね。そうだとしたら、キャスティングは絶妙です。

 

↑好感持てます。

 

 なのに、どうしても場を乱すやつが必ず一人は現れるんですよ。そこがアメリカ映画のよくないところなんですけどね、協調性のないやつを出させて混乱させて、映画をおもしろくさせようとする。でも、面白いと思ってるのはアメリカ人だけで、われわれ協調性の高い日本人は、もうこれ嫌悪感しかないわけです。

 

↑左ハリーに右がトム。最初出てきた時は、怖くて出てこられんかったんだと言ってましてね、それはわかるわぁ、なんて思ってたんですよ。

 

 ところがどっこい、ハリーのクズさといったらなかったです。トニー・トッドが言うように、地下に閉じこもってるだけじゃ助かるもんも助かりません。だれしもがそう思うはずですよ。いつかはゾンビがたくさん来て、地下室から出られんようになる、ってアホでもわかります。

 

↑奥さんのヘレンはまともな方のようでした。娘さんはゾンビにかまれて寝てるんですよ。これでは娘さん、どうせすぐに亡くなりますけど、浮かばれません。気の毒で仕方ないです。こういう親にはなりたくないわ、とつくづく思いました。

 

 ところで、こういうゾンビものって、総じて窓にクギで板を打ちつけるシーンが出てきますよね。

 

↑こんな感じで。でも都会の家って、そんなどこでもこうして大量の板とかクギとかってないじゃないですか。向こうの家って、なんか映画観てるとどこの家のだんなも、どんな輩でも、ほぼ全員DIYやってる設定じゃないですか。奥さんの尻に敷かれて指図されながら庭の手入れしたり棚つくったり。でもわたし、留学しててわかりましたけど、決してそんな家ばかりじゃないですよ。ていうか、そんな家のほうがまれなんです。ほとんどみんな、家族を愛していて、不倫なんかゼッタイにないやろと思えるくらい、ことあるごとにちゅっちゅちゅっちゅしてますよ。「死霊館(死霊館 | みたたの日常と映画ざんまいそしてディズニー! (ameblo.jp))」の夫妻の描写のほうが正解に近いんです。だからどうにもこういうDIYとかは違和感なんですね。よっぽど逃げ込む家を吟味しないと、すぐにゾンビ攻撃に屈するというわけです。まあ、映画なんですけどね。

 

 それと、ちょっとトム・サヴィーニの割にゾンビの数が少ない気はしました。まあ少なくても、家の中がメインなわけですからね、それはそれでよいのかもしれません。けっこうキンチョーはしますしね。まあそういうことでは、やっぱり良質なゾンビ映画だな、とも思うわけです。

 

 なんて言ってたら、今度はジュディがキレました。

 

↑まあみんな殺伐とはしますけどね、こういう時こそ愛と協調性なわけですよ。自分を抑えてでも協力しないと、あっという間にゾンビの仲間入りなわけです。

 

↑こういうサービスショットは、さすがの80年代(公開は1990年ですが)のホラー映画やな、と思わせてはくれます。ラブ

 

 で、そろそろ50分が過ぎようというころに、衝撃の事実が判明します。ここまで、事あるごとに何から何まで反対しまくって、協調性のかけらもなかったハリー、なんとここへ来てもいまだに「死人が襲ってきている」って思ってないんですよ。まあね、最低限見積もって、パニックなら仕方ないかもしれませんけど、それにしても、ですわ。アホにもホドがあるてなもんです。

 

↑あ、まだニュースはやってるんですね。

 

 いろいろ総合しますと、一番強いのがバーバラで、彼女は銃を撃つのも正確ですし、で、一番強いと思われていた(わたしが勝手に思い込んでいた)ベンは、実は協調性のある意外に良い人で、でもってハリー・クーパー氏は最低のヘタレだった、ということですかね。なんでこの男は、かたくなにゾンビを否定するのでしょうかね。娘さんが噛まれて、ゾンビになってほしくないって思ってるから、根本から否定しているのでしょうか。まあ、それならアリなんでしょうけれど、でもやっぱり見ていると頭にくるわけですよ。どんどんハラたってきます。もうね、最終的には、こんなやついらんかったやろ、どうせ作り話なんだから、とさえ思ってしまいました。禁句ですのに。だってほんとにムカつくんですよ。とっとと喰われてしまえばいいのに、って何度思ったことか。こういうキャラもめずらしいですね。そういう意味では貴重なのかもしれませんが、やっぱりわたしには無用の存在だったわけです。

 

 そうこうしてますと、若い子が二人いなくなりました。不注意からの炎上です。まあ、パニック模様がしっかりでてていいですけど、せっかくの若い子が亡くなって、残ったのがあのハリーじゃ、この先思いやられるというものです。残りは少ないですけど。

 

↑あ、若い子炎上……。

 

 ところで、ここまで1時間10分ほどでわたし、ハタと気づきました。「ゾンビ」って原題で「リビングデッド」で、題名から見ると「ナイト(夜)」→「ドーン(夜明け)」→「デイ(お昼)」って3部作になってるって思ってたですけど、そうじゃないんですね。「ナイト」イコール「ドーン」ですよ、シチュエーション的に。白黒の映画だった「ナイト」をジョージ・A・ロメロ自らがカラーでリメイクしたのが「ドーン・オブ・ザ・デッド」だったということなのでしょう、きっと。そう考えれば、わたし長年ギモンだった「『ナイト』のときは『リビングデッド』なのに、『ドーン』と『デイ』は『デッド』だけなのはなぜだ」という答えも出ますよね。「ナイト」のリメイク(いわゆる「別もの」)が「ドーン」でその正当な続編が「デイ」だからなんですよ。まあわたしの勝手な考察ですけどね。

 

 話は戻りますが。

 

↑娘ちゃん、やっぱりこうなりました。まあ「噛まれた」って言ってましたからね。仕方ないのです。

 

 で、そうなるといよいよトム・サヴィーニの本領発揮でしょうか。ゾンビの数が少ない、なんて言っていた懸念をあざ笑うかのように生けるしかばねが大量発生しますよ。さあワクワクしますよね。

 

↑相変わらずエキストラ応募のみなさん、いい演技してますねえ。

 

 で、闘う女戦士バーバラが、「いや、ゾンビって動き遅いやんか」とか言って一人で走って助けを呼びに出ますよ。おもしろいですねえ。佳境に入ってきた感です。まあね、バーバラさんの言うことも一理あるわけですが、どこへ行くというのか。近くならいいですけど、遠くだったらあなた、人間なのだから、寝なきゃアカンでしょうに。どうしようもなく眠くなったらどうするつもりなんですかね。そういう不安が頭にうずまき、もうどうしようもなくワクワクしてまいりますよ。Sの血が騒ぐ、というわけです。

 

 まあそこまで考えたのかどうかは知りませんけど、いずれにしても、メイクも監督も、トム・サヴィーニは技術(うで)持ってんなあ、て感嘆です。

 

↑トム・サヴィーニらしいといえばらしいです。パーティーですよね。

 

↑なんて言ってたら、あろうことかジョニーと再会することになりますよ。なんかゾンビなのに助けてくれましたけどね。

 

↑トム・サヴィーニは暴走族がお好きのようです。

 

 そしてラスト前は、ジョージ・A・ロメロが一貫して言いたかったことの象徴的シーンが繰り広げられます。

 

↑吊るしたゾンビを的にして銃で撃ってます。人間のほうがよっぽど怖い、ということです。

 

 ベンは最後はわけのわからぬまま、ゾンビに変身しておられました。この理由はなんの説明もありませんでしたから、ちょっとショックではありました。

 

↑やっぱり一番強くはなかったのですね。

 

 ラストはバーバラ、めっちゃかっちょえかったです。胸がすっとしました。

 

 総合して、特殊メイクもいいし、話の内容的にも安定していて不具合見当たらないのでよいのですが、あまりにこれハリー・クーパー氏がウザくてですね、は7つどまりとさせていただきました。さすがにやっぱり「ゾンビ」は超えられませんね。でも良質なゾンビ映画ではあります。

 

 

今日の一言

「ベンがゾンビに、イコール、ベンビ」笑い泣き笑い泣き笑い泣き

 

 

レビュー さくいん