ケーナ入門書の話 | ふぉるくろーれ夜話/mitaquenaのブログ 

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仕事をリタイアしてから始めたケーナの演奏をきっかけに、思い出したり思いついたりした、主にフォルクローレに関するよしなしごとを綴ります。

先月から近所のフォルクローレ同好会2か所に入会し、ケーナの練習を始めた私。

 

ケーナ自体は十代の頃から、触ってはいた(最初に手にしたケーナは、当時出ていた中南米音楽専門の月刊誌「ラ・ティーナ」で毎回のように広告が出ていた、アルゼンチンのケーナ奏者・製作者の草分けであるピントス Arnoldo Pintosで、買ったのは、東京・銀座の山野楽器本店だったように記憶している)。

中学校の音楽の夏休みの課題では、休み明けの教室でMorenada del Gran Poderを独奏して、残暑厳しい教室内の空気を思いっきり冷やした黒歴史も持ち合わせている(先生を含め誰も、ケーナどころかフォルクローレ自体聞いたことがなかった(;^_^)

よって、これまでもG管で3オクターブのラまでは(リコーダーのように親指の穴を開ける等して)何とか出せてはいた。

 

しかし、3オクターブのシ以上は未踏の領域。同好会のレパートリーも、聴き覚えこそあれど、吹いたことがない曲ばかり。

当然課外の個人練習が必要となるが、都内のアパートでは音出しができないため、気兼ねなく音出しをできる場所を探すと、近所のカラオケボックスで平日日中限定一人カラオケの格安パックが見つかった。

 

そのカラオケボックスを根城に定め、個人練開始! 

しかし、いきなり課題曲の練習に入ろうにも、音が上手く出ない。2オクターブのラからして既に怪しい(^^;)。10代の頃から、裏の親指の穴を開けてしまう癖がついてしまっている。指の押さえ方、口の形作りや呼吸、タンギングのような基本からやり直す必要を感じた。

 

そこで、同好会の先生による初心者向けテキストの他、市販の教則本、模範演奏のカラオケCD等を数種買い求めた。

何かを始めようとすると、行動する前に必要以上に資料を集めてしまうのが、コレクター気質の染み付いた自分の悪い癖なのだが、生来の性格はなかなか矯正できるものではなく、仕方ない。

 

手に入れた入門書等を個人練習の中であれこれ試した末、今のところ最も参考になった・効果が実感できた(気がする)のは――、

日本人プロの先駆け、エルネスト河本さんとグルーポ・カンタティが一昔前に日本カタログショッピング(日本創芸教育)という会社から出した教材「『コンドルは飛んで行く』が吹けるケーナ講座 ケーナ入門5点セット」(独習用教材。テキスト、CD、DVD、楽譜集に、ボリビア製ケーナまで付く5点セット)である。

私はたまたま某フリマサイトにて、楽譜集が欠品のものを格安で入手したが、新品は現執筆時点でも、Amazonで入手できる。

アマゾンへのリンク(※アフィリエイトではありません)

 

20240705後記】本稿執筆後、完全版を買い直した。こんな感じ↓

なお本書の練習での使い方については、別記事をご覧頂きたい。

 

DVDで先生の口元の形や運指が目でたどれるのと、テキスト・CD所収の指慣らし用の短い練習曲が実用的なのが特に良い。

実際に使ってみて、「コンドルが飛んで行く」のケーナ演奏ができるようになるために必要なスキルを、簡単なものから一つ一つステップを踏んで練習できるように、よく設計された教材だと感じた。

ただし、付属のケーナ(ボリビアのAymara社の並製バンブーケーナ)は、個体差が激しそうだ。

今でも新品を入手可能なAmazonのサイトの口コミでも、ケーナの品質に不満のコメントが多く見られた。

実際、いま私の手元にナゼか、Aymara社の同グレードのケーナが3本あるが(^^;)、

特に素材のバンブーの肉厚の差が激しい。

お土産物のような軽くてペラッペラなものから(下写真右)、高級品に見劣りしない肉厚で程よい重みがあるもの(下写真中)まで見事にバラバラだ。

出来の良い個体は私の技量でも3オクターブのファ#まで出せるのだが、出来の悪い個体は2オクターブ止まり。


本教材の企画の際に「ある日ふと「コンドルは飛んで行く」を吹いてみたい!と思い立った、ケーナも持っていない人でも、到着日からスグに始められる教材を作ろう! どうせなら本場ボリビア製のケーナを付けよう!! 大量発注すればコストも日本製よりずっと安いだろう」と盛り上がって、実現してしまったのだろうか。
しかし、いざ実行してみたら、以前から知られた(おそらくは大手)のAymara社とはいえボリビアの一楽器工房に過ぎず、突然降って湧いた異国からの大量注文に大慌てし、原材料の調達に苦労して、普段ならはねるような素材も使って、何とか納期に間に合わせたものではないか。

調達・検品担当者は遠い南米の異国から届いた仕入品を開けてみてバラツキの多さに唖然( ゚д゚)とし、彼我の品質管理の違いに思いをはせたのではないか――などと夢想してしまう。

 

とはいえ、ケーナガチャ以外は、堅実で分かりやすく非常に良い教材だ。

私が知る限り、今まで日本で出たケーナ入門教材の中では最も実用的で効果的だと思う。これ以上のものを求めるのであれば、実際にケーナの先生について習うしかないだろう(本当はそれが最も近道な気がするが、地理的・経済的問題で難しい場合は自習用教材での独学から始めざるを得ず、その教材としては、例えば本セットが良いと思える、ということだ)

 

実際に私も、カラオケボックスでの個人練の最初に繰り返し使っているが、高音も少しずつ安定して出せるように、指もだんだん動いてきている、気がする。

 

よって、このケーナ入門セットを手に入れようとするみなさんには、教材の内容は太鼓判を押したいが、ケーナ本体はオマケと割り切って、ケーナガチャを楽しんでもらえたら、と思います。

 

今回は、個人連で自分もよく吹いている初心者向け練習曲について書くつもりだったが、ケーナ教則本の話をマクラを振っているうちに結構な分量となってしまったので、ここでおしまい。

ケーナ教則本については、1970年代のアントニオ・パントーハ「ケーナ教室」からの「私のケーナ教則本遍歴」についても語れることはまだまだあるのだが(聞きたい人がいるのかは別だが(^^;)、またの機会としよう。■