そして、貴子を見つけると、「ああ
彼の目に浮かんでいたのは、驚きでも嫌悪でも緊張でもなく、安堵だった。
ようやくここに辿り着いた。やっとこの時が来た
その目がそう言っていた。貴子は、それと同じものが自分の目にも浮かんでいることを知っていた。
怯えでも卑下でも媚でもなく、ついにこの時が来たという、やれやれ長かったという安堵なのだ。
「足、大丈夫
さっきから変な歩き方してるよ
」貴子は融の足を見た。
「正直、ヤバイと思う
すげえ痛い
」融は膝をさすり、素直に答えた。
「だからさ、気が紛れる話をしてくれないかな
」「そうだね
」二人は、どちらからともなく並んで歩き出した。
前方で、大声で喋り続ける六人が見えるが、随分離れていた。
「じゃあ、あたしが歩行祭で、密かに賭けてたことがあったって話は
」「いいね
」道は集落を抜け、再び川べりに出た。
そして、川の向こうには、高台に大きな市街地が見えてきていた
あの中に、彼らの母校が、彼らの終点が待っているのだ。つづく