闇に佇みて -15ページ目

油断



追い越され

花散り終えて

遠き春


重ね着




花冷えに

除けたい冬を

羽織りけり



寒い

四月には
気楽な装いで

窓を開け放した
バスに揺られて
街を離れ

薄紅色の鱗を
そよ風に踊らせながら
酔いしれて游ぐ

魚の群れを見に行く


辿り着けば

待ちわびた季節の
予言者たちが

早々と
群れをなして
酔いしれながら
游いでいる


まるで
絵画館での
歩幅と眼差しを
思い出したかのように


僕は独りでも

その歩幅と眼差しを
合わせれば

同化して

首を反らして

薄紅色の鱗を
心行くまで
見ていられる


だけど

ひとひら剥がれた
薄紅色の鱗が
僕の心に落ちたとも

秘密めいて
打ち明けられる
人はいない


待ち焦がれた
季節の到来を
感じながら

必死に
花を愛でても


それだけが
花冷えのようで


何故か


寒い



それだけが