闇に佇みて -14ページ目

ひげ



父のひげ

仕事から帰ってくると
程よく伸びていて

抱き抱えられて

そのひげで
頬擦りされた


じょりじょり

じょりじょり


嫌がりながらも
嫌いではなかった

楽しんでいた


笑いながら

じょりじょり

じょりじょり


時は
止めどなく
こぼれて落ちる




父のひげは
全て白くなり


頬擦り
されることも
なくなった


そして
僕は

そんなことを
思い出したながら


毎朝

出勤前に
ひげをそる


どうにかなるさ




空には手を

大地には足を


円を描くように
広げよう


そして
胸を張り

深呼吸して


『どうにかなるさ』


と言ってみよう



ほらね




はだいろ


小さい頃

12色のクレヨンを
使うたび

はだいろだけが
小さくなった


今思えば

人の優しさに

包まれて
いたのだろうと

思う



時が経ち

柵や孤独を
目の当たりにしてきた
私の

手元にある
12色のクレヨンで


真っ先に
使い切るのは



なにいろ

だろう