冗長さが三割り増し。面白くなさが五割り増し。え?パラメータ振り切った?気にしない気にしない。
そんなテンションで出会い話です。暗めのイメージで書こうとしてましたが無理でした。
まだ続きます。でも面倒だからもう上げときます。
と思ったけど、長くなりすぎたので分けます。
暗い夜道を歩いていた。
街灯の疎らな暗い夜道を。
行くあてといえば、踵を返す以外にはなかった。
寸分先すら覚束ないその道は、どこまでも続くようにも、数歩先で途切れてるようにも思えた。
街路樹さえも葉を散らす、そんな寒い冬のことだ。
落葉する街路樹は冬に日向を提供するが、真夜中の痩せ細った木々は、僕に薄ら寒さを感じさせることしかできなかった。
この日僕はある少女と出会うことになるが、それは運命的なものでは決してなく、ただすれ違おうとも何の問題もない些細な出来事であったと、ここで念を押しておこう。
「何見てやがんだよ」
僕が最初に発したのはそのような言葉だったように思う。
しかしもしかすると、
「ねぇ、なんで見てるの?」
といった言葉だったかもしれない。
とにかく彼女はこう答えた。
「見られてる貴方がいるとき、そこには貴方を見る誰かが必要だからよ」
そして僕は間違いなくこう言った。
「なんだ。気狂いか」
言いながら僕はその横を通り過ぎた。通り過ぎる瞬間彼女が何か声を発した気もするが、僕は気にも留めなかった。
しかし暗闇を数歩歩いた時、
「待って」と、絞り出すような声が聞こえた。だが後になって思えば、これも幻聴だったかもしれない。
僕は街中で喚き散らす狂人を見るような目で彼女を振り返り、ありったけの親切心と真心をこめて言ってやった。
「最寄の精神科の番号が聞きたいのか?」
その言葉に彼女は事も無げに答える。
「違うわ。だって私、もう通院してるもの」
それは暗い夜道の街頭と街頭のちょうど間での出来事だった。
中途半端な僕と彼女にとって、その出会いがこのような場所であったことは少々滑稽ではあるが、よくよく考えてみれば彼女は立ち止まっていたのだし、そこに彼女の恣意性が介在していたと考えられなくもない。
それから彼女はこう続けた。
「貴方は死んだ鴉の、黒目の影みたいな目の色をしてるわ」
「てめぇは女の新鮮な動脈血に塗れた、ナイフの刃のような目の色をしてやがる」
「目上に対して口の利き方がなってないわね」
「それは手前が相手を見下しているからだと早く気付けよ」
「程度の低い相手を正当に見下してるのよ」
「てめぇに能力があるとでも?」
「少なくとも普通の地球人よりはあるわ。強化人間だもの」
「それは選民思想じみた考えた方だぜ?早々に改めたほうがいい」
そういって僕は溜息をつき夜空を仰いだ。傍から見れば、早く厄介ごとから逃れたいと神に縋ったようにも見えたかもしれないが、生憎僕に縋りつくような神はいない。
ちょっと疲れたわね、そう言って彼女は悠然と歩き出す。向こうのベンチへ腰掛けましょ、という言葉を振り返りもせずに放り投げて。
「逆に聞くけれど、貴方に能力はあるの?」
彼女は自分が椅子に腰をかけるなりそう聞いた。彼女の背を追いかけていた僕が、まだ座っていなかったのは言うまでもない。
「能力?そうだな。僕はまだ8年しか生きちゃいないが、それにしては分別のあるほうだと思うよ。我ながら」
「同年代のうちではなく、全体で見たときの相対的な話よ」
「はぁ?んなもんあるわきゃねぇだろ」
そんな言葉を吐き捨てると同時に、ベンチに腰を下ろす。
「そうね。貴方が能力を付けるにはまだ時間が必要なのかもしれないわね。けれど、もし貴方が今能力を欲するのなら、私はそれに応えることが出来るかもしれないわ」
貴方、すぐにでも力が欲しいって顔してるもの、と僕の顔を見もしないで彼女が言う。
「間違ってない、かもしれねぇな。正直なところ、僕はもう今のレベルで争うことにうんざりしている。周りのやつはちっとも論理的に話すことが出来ない。でも上のレベルで対等にやりあうには、まだまだ力不足だ」
僕は内心を少しだけ覗かせる。生まれてからずっと僕に覆いかぶさったままの、この倦怠感の一部を。
「それはそうね。やっと教育が始まった程度の子供に論理的に話せという方が無理だわ。そして、貴方も上のレベルで争うには役者不足よ。この世界には想像もできない”化け物”がいくらでもいるわ」
彼女はそんな大袈裟な台詞を吐いて、さらに言葉を続ける。
「でも彼らと、少なくとも”同じ次元”に立つ簡単な方法があるわ。なにか聞きたいかしら?」
「しょうもないことでもったいぶるなよ。自分でハードル上げて楽しいか?」
しかし、やはり彼女は少しだけもったいぶるよう間を持たせてこう言った。
「私と、契約するのよ」
「契約?確か・・・初等部四年次で習う内容だな。テクスト引用:私たち地球人はパラミタへ行くために、パラミタの生命体と契約を結ばなければなりません。:引用終わり。どうだ、一字一句間違ってないだろう?」
少し真面目ぶった調子で僕が言うと、
「たった一行じゃない。威張られても寧ろ困惑するわね。というか私、初等部の教科書の内容なんてもう覚えてないわ」
と彼女が答える。
「ああ、待て。てめぇが言いたかったのはこっちだ。引用:私たち地球人はパラミタの生命体と契約を結ぶことにより、強い力を得ることが出来ます。それはとても強力な力なので、正しいことに用い、けして悪用されてはなりません。:引用終わり。これは初等部6年次後期の学習内容だ。」
「もう6年次の内容までおさえてるのね。それとももっと進んでるのかしら?」
「残念ながら教科書もそう簡単に手にはいらねぇんでな。というより、そこまで手がまわらねぇよ」
それこそ化け物じゃねぇんだから、そう僕は付け加えた。
「そう。なら補足ね。パラミタの生命体と契約を結ぶと身体能力や思考能力が大きく向上するわ。しれっと言ってしまうけれどこの先、コントラクターでないと何も出来ないわよ?」
「どういう意味だ?」
「そのままの意味よ。どんな分野でも最先端を行くのはコントラクターになるでしょう。なにせ契約を結ぶだけで、一流のアスリ-ト並みの運動能力や学者並みの思考能力が得ることが出来るのだから」
「成る程な。しかし何かリスクみたいなものはないのか?少々話がうますぎる」
「そうね・・・特にないわ。強いてあげるなら契約者が死んだとき、自分も死ぬか重篤状態になるってことくらいかしら」
「最っ悪じゃねぇかっ!!吃驚したわ!」
想像もしてなかった返答に僕の声が裏返る。
「あら、それほどでもないわ。コントラクターとして生きていくなら、パートナーを失った時点で人生お仕舞いみたいなものだし。実証はされていないけれど、パートナーが死ぬことでそれまで持っていた能力を失うのだとすれば、彼や彼女らの社会的地位は一瞬で崩れ去るでしょう」
まぁ3人も4人もパートナーがいる人は知らないけれど、と彼女は言った。
「ふぅん・・。まぁ要するにてめぇが死ななきゃ、僕はノーペイで力を得られるんだろ?」
「いいえ、一つ条件を飲んでもらうことになると思うわ」
「はぁ?条件は先に言うのが筋だろ。ったく、聞いてやるから言えよ」
「私に時間を合わせてもらうわ。具体的にはその身体を二十歳前後まで成長させてもらうことになるわね」
彼女はそんなことを悪びれもせず言い放った。
それは肌を刺す様に寒い冬の、薄暗闇の中での出来事だった。
この条件を飲むか飲まないかという選択に対しての僕の答えが、この先の僕の人生を左右したとは思えないし思いたくもないが、左右に分かれたどちらかの道の先で小石を蹴飛ばすか蹴飛ばさないかという程度の未来を決定するくらいの影響力は持っていたのだと思う。
夜空に浮かぶ無数の星もこの時だけは瞬きをやめ、僕らのやり取りを静かに見守っているようだったと僕は意味もなく思い出した。