(ベンガラの里 吹屋=岡山県高梁市 2020年11月14日撮影)
JR備中高梁駅(岡山県高梁市)で下車し、駅前で路線バスに乗り換え走り続けること一時間。
中国山地の山深いクネクネした細道を辿ると、忽然と吹屋の里が姿を現します。
江戸時代から昭和の中頃まで、高級な赤色顔料であるローハベンガラ(弁柄)で富を築いた吹屋。
太陽を浴びて明るく映えるベンガラ格子。
ベンガラとは酸化第二鉄(赤い鉄さび)のことで、防腐効果があるため木材に塗られます。
鮮やかな色合いが目を引きます。
屋根は石州瓦で葺かれ、ベンガラ格子と統一感のある色調が印象的です。
石州瓦は島根県を産地とし、鉄分を含んだ釉薬で焼成される瓦とのこと。
ベンガラ漆喰の朱色の壁。
漆喰に酸化第二鉄を混ぜることで色調を華やかにします。
吹屋の里にはベンガラ漆喰がよく似合いますね。
ベンガラ染めの暖簾。
ベンガラは塗料だけでなく染料にも用いられます。
防虫効果や抗菌作用があるとのこと。
ベンガラ焼きのマグカップ。
釉薬にベンガラを加えたこのマグカップは、吹屋の土産店で売られていました。
説明書きに目を通してみましょう。
「ベンガラとは
弁柄は成羽町吹屋の特産品として全国唯一の生産地であり、陶器、漆器、建造物、船舶等 高級塗料として使用されてきた。
弁柄の成分は酸化鉄(FeO3)で、防腐、防虫、抗菌効果のある塗料として利用されてきました。
久世代官所の名代官としてその名を馳せた早川正紀が吹屋を管轄するようになったが当時 農民からの汚水公害等の苦情で低迷する。
鉱山再興を幕府に陳情、融資を受け吹屋弁柄の製造に非常に大きな貢献を残している。
鉱山の捨石から偶然発見された天然弁柄は非常に高級品として名を出し、全国に販路を作って行った。
片山家の記録(天保・弘化・安政)によると訪問先約40ヶ国、江戸、大阪の大消費地や中・四国を始め、駿河、尾張など東海道筋、越前、越中、加賀など北陸路、薩摩、肥前、肥後九州一円で非常広範囲、記されている。
商才にたけたものを売子とし、手甲、脚絆と手ぬぐいを赤く染め、吹屋弁柄をPRして売込みつとめた。その後、現代では同じ種の黒・黄などもある。」
ベンガラは輪島塗などの漆器にも用いられ、品のある紅色の代名詞とも言える顔料です。
また、吹屋ベンガラは高温で焼いても黒く変色することがなく鮮やかな赤を発色するため、伊万里焼や九谷焼などの陶磁器の絵付けに特に重宝されたそうです。
しかし時代が下り、ベンガラが化学合成されるようになると吹屋のベンガラ製造は衰退し、1974年(昭和49年)にその歴史を終えたとのことです。
さて、吹屋の里をうろうろ歩いていると何とTOYOTAのボンネットバスがやって来るではありませんか!
昭和40年代に備北バスによって運行されていたボンネットバスを、観光資源の一つとして高梁市が買い取ったとのこと。
吹屋や「八つ墓村」の映画ロケにも使用された広兼邸を巡る観光バスとして活躍しているそうです。
丸い後ろ姿がキュートなボンネットバス。
目の前をゆっくり通り過ぎて行きました。
吹屋とボンネットバス これ以上のマッチ感ないかも?
一度機会があれば乗ってみたいものです。
最後に、吹屋の地図のご案内です。
(写真)岡山県高梁市成羽町吹屋 吹屋ふるさと村 2020年11月14日撮影
(参考資料)YouTube