高橋みさ子のブログ

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趣味のウォーキングを通して出逢った町や自然を
写真とともに楽しくご紹介しています。宜しくお願いします。

(備前焼緋襷花入 ミント・ガクアジサイ ・シダ)

 

備前焼緋襷(ひだすき)花入に ミント、ガクアジサイ 、シダを投げ入れで生けてみました。

 

花材は近在の野山から頂戴しました。

 

ミントは清涼感のある良い香りが漂い、白い小さな花を咲かせています。

 

 

(備前焼緋襷花入 22cm  ×  9cm)

 

華道の投げ入れは、一般的には高さ30cmほどの花入を用いてダイナミックに生けますが、こちらものは高さ22cmと少し小振りですので、身近な花材をお手頃なサイズ感で生けることができます。


 

(緋襷の作例 藁を巻き付けた焼成前の花入)

 

花入は、緋襷(ひだすき)と呼ばれる備前焼の伝統技法を用いて電気窯で焼成されたものです。

 

緋襷は、成形・乾燥という工程を経たのち藁を巻き付け、巻き付けたままの状態で焼成すると、

藁のアルカリ成分と土の鉄分との化学反応で赤茶色に発色します。

 

作品全体を覆うように巻いた場合は、今回の花入のように全体が赤茶色になります。

 

聞いた話しでは「昔は藁は縦に巻くのが相場」だったそうですが、現在は縦にも横にも斜めにも自由に巻かれ、緋襷の多様な "景色" が生み出されています。

 

備前焼は釉薬を使わない焼き物ですので、窯詰めの自由度が高く、器を重ねて焼くことも、横倒しにして焼くことも出来ますが、ときどき器同士が焼き着いてしまいます。

 

備前焼で藁が用いらるようになった元々の目的は、発色のためではなく、藁で器と器の間に隙間を作り癒着を防ぐためだったとのことです。

 

(写真)備前焼緋襷花入 投げ入れ ミント・ガクアジサイ ・シダ 

    2024年6月24日、29日撮影

(備前焼鶴首花入 スイバ・黄花コスモス・南天の葉・ホソムギ)

 

備前焼の鶴首花入に スイバ、黄花コスモス、南天の葉、ホソムギを生けてみました。

 

花材は散歩道沿いに生えているものを頂戴しました。

 

 

(備前焼鶴首花入 木村陶峰 2024年6月7日撮影)

 

黄花コスモスは秋のイメージでしたが、岡山県備前市では5月下旬から咲き始め、意外と花季が長い花なのですね。

 

立ち姿の美しいこちらの備前焼鶴首花入は木村陶峰(陶正園)の作で、使い勝手が良く過去にも何度か当ブログでご紹介させて頂きました。

 

生け花の拙き技量を補ってくれますので、大変重宝しています。

 

備前焼の素朴で穏やかな土味には、路傍の草花がよく似合いますね。

 

(写真)備前焼鶴首花入(陶正園 木村陶峰)  スイバ・黄花コスモス・南天の葉・ホソムギ

    2024年6月7日撮影

(NHK「虎に翼」 NHKプラスより画像引用)

 

 

2024年度上半期のNHK朝ドラ「虎に翼」は好評とのことで、筆者も楽しく拝見しています。

 

ところで、2024年7月3日放送回(第14週 第68話「女房百日 馬二十日?」)で、尊属殺の重罰規定に関する直明(主人公 寅子の弟)の台詞で少々気になることがあり、その点について書いてみたいと思います。

 

仕事から戻った寅子は、昭和25年10月13日付けの帝都新聞を囲みながら家族らとこんな会話を交わします。

 

  道男 「なあ 尊属殺ってなんだ?」

  寅子 「自分より上の世代の人を死なせてしまうこと。」

  直明 「尊属は 直人から見ておじいちゃん おばあちゃん お父さん お母さん あとは

       おじさん おばさんのこと。」

  寅子 「うん。その記事は『尊属殺を罰する法律が憲法に反しているのでは?』っていう話  

       し合いがなされたことが書かれているの。」

     直人 「憲法に反している? どういうこと?」

  寅子 「憲法第14条で『人間は法の下に平等』と定められているのに、尊属殺は『死刑また

       は無期懲役』 それ以外の殺人は『死刑または無期懲役もしくは3年以上の懲役』と

       刑罰の重さが違うの。」

  直明 「今の法律だと もし道男が僕を殺したら う〜ん 刑務所に3年入る刑罰かもしれな    

       いけど、直人が僕を殺したら死刑か無期懲役になるってことだよね。」

  寅子 「特別な事情がない限りはそういうこと。」

 

さて、前置きが長くなりましたが、いよいよここからが本題です。

 

刑法200条(尊属殺)は現在は削除されていますが、かつては「自己または配偶者の直系尊属を殺したる者は死刑または無期懲役に処す」と規定されていました。

 

直系尊属とは、父母、祖父母、曾祖父母などを指し、叔父叔母は確かに尊属ではありますが、傍系の尊属であって直系の尊属ではありません。

 

直人から見て直明は伯父(戦死した父 直道の弟)に当たりますので、直明の台詞は誤謬ということになりますね。

 

尊属殺人罪は一般の殺人罪より重い刑罰を科しますから、尊属であっても "直系に限る" としている訳ですね。

 

時代は下り、昭和48年(1973年)には最高裁で尊属殺重罰規定違憲判決が下されます。

 

この判例は法学部の学生であれば誰もが知るほどの超重要判例で、最高裁で初めて違憲判決が下されたことでも有名ですが、昭和25年に合憲判断が下されていたことは、このドラマで初めて知りました。

 

ところで、昭和48年の最高裁判決について留意しなければならないこととして、道徳的要請が反映された尊属殺の立法趣旨そのもの、つまり刑法200条という条文の存在そのものを "法の下の平等に反して違憲だ" と判断した訳ではありません。

 

刑罰の重さの程度が行き過ぎだと問題視したのですね。

 

例えば、実刑を科すことが被告人に酷な場合、もし執行猶予を付けることができれば、猶予期間を無事満了すれば刑の言い渡しの効力は消滅します。

 

しかし「死刑または無期懲役」であれば、情状酌量などによって刑を減軽しようとどうあがいても、刑法の規定上、執行猶予を付けることはできません。

 

尊属殺の規定では、直系尊属から苛烈な扱いを受け続けた被告人に対して同情の余地があったとしても、実刑は免れません。

 

普通殺人であれば執行猶予の余地がある事案でも、尊属殺ではその余地が全くないというのは「法の下の平等」に反するのではないかというのが議論の核心だったのですね。

 

さて、寅子と家族らとの会話は続きます。

 

  直人 「(新聞記事に)合憲って書いてあるってことは・・・」

  寅子 「残念だけど裁判はやり直し。おそらく被告人はもっと重い刑罰になる。」

  道男 「はあ?」

  寅子 「重罪を科す尊属殺の規定は憲法に反する。裁判をやり直す必要はない。判決の中で

      そう反対意見を訴えたのは最高裁判事15人の中で2人。矢野さんていう判事と穂高先

      生よ。」

  直治 「2人ぽっちなんてそれだけじゃ何も変わらないよ。」

  寅子 「ううん。そうとも言い切れない。判例は残る。判決は覆られなくても、おかしいと 

      声を挙げた人の声は決して消えない。その声が、いつか誰かの力になる日がきっと来

      る。私の声だって、皆んなの声だって、決して消えることはないわ。」


穂高教授の少数意見「尊属重罰規定は違憲である」というその声は23年後に実を結ぶことになるのですね。

 

 

(NHK「虎に翼」 2024年7月3日放映 NHKプラスより画像引用)

 

最後に、昭和25年10月13日付けの帝都新聞の記事に目を通してみましょう。(帝都新聞はドラマの中の架空の新聞社ですが、記事の内容は史実を踏まえているようです。)

 

「原審は実父殺し事件に対し福岡地裁が刑法の尊属殺人規定は、多分に反民主主義的で憲法十四条=法の下に万人平等=の精神に反するとし、同被告に対し普通傷害致死罪の判決を下したがこれを不服として合憲なりと飛躍上告した福岡地検の上告を認めたものである。」    

 

実父を傷害致死で死なせてしまった被告人に対し、当時の刑法に従えば尊属傷害致死罪(現在は削除)を適用すべきところ、福岡地裁は同条は「法の下の平等」に反し違憲だとして普通傷害致死罪を適用し、また尊属殺人罪の違憲性にも言及したのですね。

 

それに対し福岡地検が跳躍上告し、最高裁で尊属殺人罪、尊属傷害致死罪の違憲性が争われたと言う経緯だったようです。

 

昭和25年の最高裁判決文には「刑法において尊属親に対する殺人、傷害致死等が一般の場合に比して重く罰せられているのは、法が子の親に対する道徳的義務をとくに重要視したものであり、これ道徳の要請にもとずく法による具体的規定に外ならないのである。」とあります。

 

昭和48年最高裁の尊属殺重罰規定違憲判決も、この "道徳の呪縛" から逃れることはできなかったということですね。

 

「道徳の要請に基づく」尊属重罰規定は、道徳という普遍的な合理性に裏打ちされているのだから法の下の平等に反するものではない 、と言うのが最高裁の考え(多数派意見)だったのでしょう。

 

一方、福岡地裁の判決は、戦後早々に新憲法の精神を汲み違憲判断を下した画期的なものだったことが分かります。

 

昭和48年最高裁の尊属殺重罰規定違憲判決は、普通殺人罪より刑罰を重くすること自体に違憲性はなく "重罰の程度" に違憲性があるとしたのに対し、昭和25年福岡地裁の違憲判決は、条文の存在そのものを違憲とし、まさに「法の下の平等」の精神に則った先進的なものだったのだと、心を動かされます。

 

(参考資料) 裁判所 裁判例検索 最高裁判所判例集 昭和25(あ)292

備前焼 徳利型花入 シラン(紫蘭)

 

備前焼の徳利型花入にシラン(紫蘭)を生けてみました。

 

散歩道沿いに雑草に紛れて楚々と白い花を咲かせていましたが、萎れてしまい先端の蕾だけになってしまいました。

 

 

(備前焼徳利型花入 18 × 12 cm)

 

備前焼の徳利型花入は、穴窯の "ころがし" で焼成したもので、備前焼の特徴がよく表れています。

 

”ころがし” とは、窯の棚が組まれていない焼成スペースを指し、いわゆる「地べた」のことで、薪を投入する際に作品が薪に当たり割れてしまうリスクはありますが、灰に埋もれることで味わい深い景色が生み出される場合があります。

 

 

(穴窯 焼成後の様子)

 

穴窯焼成後の様子です。 (著作権の関係上、ぼかしを入れさせて頂きました。)

 

赤い矢印が花入が置かれた場所です。首の先だけちょこっと見えますね。

 

拡大してみましょう。

 

 

首以外は灰が厚く降り積もっています。

 

灰が降り積もった部分は、熾(おき)が器面に焼き付いて "焦げ” になります。

 

窯から取り出した後に、 サンドペーパーを使い器面の凸凹をならす "擦り” という手作業をします。

 

また、灰に埋没した部分は還元がかかります。

 

備前焼といえば茶色をイメージされる方も多いと思いますが、茶色は酸化焼成の色で、還元焼成では青っぽくなったり灰色っぽくなったりします。

 

備前焼の様々な景色や色彩はこのように偶然に生み出されることも多く、まさに土と炎さらには "灰" の芸術であると言えましょう。

 

(写真)備前焼徳利型花入 シラン 2024年3月12日、5月14日撮影

 

(備前焼一輪挿し アメリカフウロの葉紅葉と種 2024年5月13日撮影)

 

備前焼一輪挿しにアメリカフウロを生けてみました。

 

アメリカフウロはどこでにも見られる雑草で、身近すぎてゆっくり目に留めることもありませんが、よく見ると個性的で面白い植物です。

 

まず葉っぱから観察してみましょう。

 

 

(アメリカフウロの草紅葉)

 

アメリカフウロは花が終わると葉っぱが色づき始め、岡山県備前市では5月に草紅葉が見られます。

 

葉っぱ一枚一枚にそれぞれ表情があってグラデーションも豊か。

 

葉っぱの先だけ紅葉していたりして、面白いですね。

 

 

(アメリカフウロの種)

 

葉っぱにも負けず劣らず、種もとても個性的。

 

受粉を終えると花柱がニョキニョキと長く伸び、花柱には縦に5本の筋、その根元には5個の鞘、鞘の中には種が収まっています。

 

実が熟すと花柱の筋がピョンとめくれ上がってバネの力で空中を飛び、中の種が弾き出される仕組みです。

 

 

(弾き飛ばされた鞘と種)

 

弾き飛ばされた鞘と種。

 

また、熟した鞘を指で揉むと、目にも止まらぬ速さで鞘が勢いよく弾かれ、種がパッと飛び出します。

 

それにしても毎回思うことなのですが、植物は本当に賢いですね。

 

タンポポのように風を利用したり、「ひっつき虫」のように服にくっついたり、アメリカフウロのようにバネの力を利用したり、種を遠くに飛ばす(または運ぶ)工夫には、植物の知恵が凝縮されているように思います。

 

 

(備前焼一輪挿し 12 × 7.5cm)

 

一輪挿しは薪窯で焼成したもので、備前焼ですので釉薬は使っておらず焼き締めの作品です。

 

(写真)備前焼一輪挿し アメリカフウロ 2024年5月13日撮影