第二部(ダッキーカヌー編)
今から一年ほど前の話です。
もういいんじゃないかい。 もう行ってもいいんでないかい。
僕ももう通算12回も川に行ってるぞ。 だからいいんじゃないか。
しかし日置川に行く前にフネをパンクしてしまい、修理していただいたとはいえ
このフネではあの川は...
いや直っているのだが、まだボンドが乾いていないだろう
で、買っちゃいました、また同じセビラーのフネを。
大阪カヌーセンターの親父さんも、‘そうか あの川に行くか う~ん そうか...’
もちろんあの川とは 吉野川 大歩危コース。
レスキュー道具も買いました。 カルビナも買いました。
決行日は8月6日
とりあえず初心に戻って一人で川をくだってみよう。
8/4 に保津川に行ってきました。
コースは馬堀から保津峡駅まで 無事でしたが、誰一人とも会わなかったので寂しさだけを感じ、
しかし的を得たような感じがしました。(今思えばただの錯覚)
よし、準備万端。
当日は朝7時に弟と二人 大阪を出発。
明石海峡大橋を渡り、鳴門大橋を渡り、鳴門市内で有名な讃岐うどん屋の釜卵うどんで腹ごしらえ。
井川池田ICで降り、カーナビ通りに車をすすめてました。
しまった、速乾性のシャツをわすれてしまった。
で MOC大歩危店で‘漕’の文字が入ったTシャツを購入。
そうだ 俺は漕ぐんだ 漕がなきゃいけないんだ。
なんてことを思いながらそのTシャツにすぐに着替えました。
(実はウェットスーツなんか持ってなかったんです。 それまでは田舎のスーパー
で買った500円の速乾性のTシャツ&水着 でやってました。 もちろんその日もです。)
モンベルの人に大歩危コースの具体的な発着場所などを聞き、
ホテルまんなかの裏手の路地に車を駐車。そこのすぐ近くに観光船の発着場所があり、
ゴール地点に設定するにはまさに最適であった。
下見をした結果、プットアウトし車に戻るにはまさにグッドな場所である。
じゃあ くだり終わったら温泉だなぁ こりゃあいいや と思い、
タクシー会社に電話し迎えに来ていただいた。
いざ、出発地点の豊永へ。
おうそうだそうだ 確かにここだった。 昨年ラフティングをしたスタート地点であった。
ここまで来れたのだからタクシー代の5千円は惜しくなかったです。
河原にはカヤックの方々がいらっしゃったので、
具体的なプットインの場所を教えていただきました。
皆さんは本格的な方々で、こちらは なんちゃってカヌーイスト。
小恥ずかしいので少し離れた場所で、
フネを膨らませ、パドルの調子を見、レスキュー道具の使い方を再確認し、軽く腹ごしらえ。
さて出発するか。
大阪カヌーセンターの親父さんのおっしゃった言葉をそのままそっくり弟に言いました。
‘パドルは体の一部や! 沈してもパドルだけは絶対に離すなよ!’と。
彼はダイビングの免許を持っており、古びてはいるがちゃんとウェットスーツを着ていました。
‘了解’と。
何かあったらやばいな。大丈夫だろうか。 弟はその前の年に子供が産まれていた。
乳飲み子をかかえているこいつに何かあったら、やばいな。 責任重大だ。
俺も嫁が妊娠してるしな。
気を引き締めないと。
豊永には 豊永の上の瀬 と下の瀬 がある。
先ずは上の瀬に突入。
びびりました。 あの圧倒的な水のパワー
おそらく吉野川全体で考えるとたいしたことのない瀬なのだろうが、恐怖を感じました。
フネに水が入っても自動的に排水してくれるセルフベイラーの機能がおっつかない。
パドルで水をさばけない。
えっ やばいんちゃうか まじ やばいな 後方の漕ぎ手になっている僕は言葉を失ってしまい、
何の指示もだせなくなってしまいました。
なんとか(?)上の瀬は無事通過。 しかし、すぐに下の瀬に突入です。
言葉を失ってしまった僕のせいで、漕ぎ手の息が合わずすぐにフネは横向けになり、
セオリー通り沈。
また、僕はその時にパドルを勢いよく離してしまいました。
(あかんやん、俺。 パドルは体の一部ちゃうんかい)
20メートル程ですが、ひっくり返ったフネと僕たち二人は流されながらも、
なんとか左岸の岩場にひっかかりなんとか立てなおうそうとしたんです。
僕自身かろうじてその岩場にひっかかったと思った瞬間、
えっ えっ えー という感じで水の流れに吸い込まれていきました。
川の中でぐるんぐるんにされ、浮こうにも浮いてこない。
必死でした。 必死でしたが、浮かない。流される。水は飲んでしまう。
30メートル程流された後でしょうか、左岸の岩場にぶち当たりましたが、
嫁の顔とまだ見ぬ子供の顔を思い浮かべるとなんとか浮くことができました。
本当に助かったと思いました。 呼吸はかなり乱れています。
体力もかなり消耗している感じでした。
あいつは大丈夫か? 弟はどうしたんだ?
水に浸かったままふと右側に首を向けると、なんと彼はカヌーイストでした。
彼はフネを立て直し、パドルも離さず、ちゃんと漕いで豊永の下の瀬を下っていきました。
めっちゃかっこいいですやん。
インディ・ジョーンズのテーマ曲が流れてくるかのようでした。
その光景を目の当たりにした僕には、少しの安心感と
この先どうすればいいんだろうという不安感がありました。
水に冷されるとやっぱり恐怖感がでるんでしょうか。
それか少しハイポサミアになっていたのでしょうか。なんせウェットスーツ着てませんから。
その後、豊永の瀬を通過した左岸側のエディにフネを置き、
僕らは僕が勢いよく離してしまったパドルを探しに、岩場を上流のほうに向け登っていきました。
おいおい なんか激しい川の流れのところで突きささってるやん。
これはどうしようもないんじゃないか。
石を投げたり、レスキューロープを投げたりしても全くダメでした。
カヤッカーの方が通り過ぎるときに、とろうと試みられましたが、
どうにも無理だったようです。 でもありがとうございました。
ラフティングシーズン真っ盛りの中、次々とラフトボートがやってきては
ツアー参加者の人達は楽しそうに通り過ぎていきました。
そんなところで一時間ほど粘りましたが、とうとう諦めることに。
上陸するには右岸側に行かないといけない。しかもパドル1本で。
それすらも恐くなりましたが、なんとか声をだし対岸にたどり着き、草むらをかき分け
重たい荷物を持ち上げ、やっと道路にでることができました。
近くにガソリンスタンドがあったのでそこでジュースを飲み、やっと一服できました。
結局、カヌーのダウンリバーは約300メートルほどで終了です。
コースは ↓ を参考(?)にしてください。
http://www.mapion.co.jp/c/f?uc=1&grp=MapionBB&nl=33/47/44.588&el=133/45/47.573&scl=25000&bid=Mlink
車を駐車している ホテルまんなか まで戻らないといけません。
節約しようとヒッチハイクを試みましたが、ただでさえ車が通らないのに
こっちは濡れまくってますから誰もとまってはくれません。
しかたなくタクシーを呼び、5千円ほどで戻ってもらいました。
その後は高松道、瀬戸中央道、近畿道で大阪にすごすごと帰りました。
この日だけでいくらお金を費やしたことでしょうか。
また何百キロもかけてわざわざ行ったのに、たった300メートルか トホホです。
モンベルで購入した‘漕’のTシャツは弟に贈呈しました。
だって漕いでないもん。
まぁ命があるだけ充分。 振り返ると やはり無謀だったのでしょうね。
いつの日かリベンジできればいいのですが...
でもいいこともありました。
1. うまい讃岐うどんに巡り合えた。
高松道のどこかのサービスエリアにお土産として讃岐うどんセットを買いました。
売店のおばちゃんにどれがうまいのか聞いたところ、この日の出製麺のが
おいしいよと言われ買いました。これがめちゃめちゃうまかったです。今でも注文して食べてます。
4月に大量買いして周囲の人達にわけました。かなり評判よかったです。
僕のおやじはうどん嫌いでしたけど、作って食べさせるとズルズルっとペロっと食べやがりました。
ここのうどんで作る釜卵うどんがたまらないんです。
どんぶりに生卵をいれておいて、そこにゆで上がったうどんを入れてかき混ぜる。
麺がつるんってします。そこに特製ダシを加えてまたかきまぜる。
最後に嫁が作ってくれた天カスを好みに応じて入れてかき混ぜる。
最高です。
わざわざ香川に行かなくてもいいと思えますよ。
‘私のおすすめ’に入れておきます。
2. ラグビーがこわくなくなった。
吉野川で大自然の恐さに接したので、ラグビーなんかしょせん相手は人間やん。
命まではとられへんやん。
と思うと恐くなかったですね。
次の日、ラグビー7人制の試合でしたが、全く恐くなかったです。
(怪我はこわいが、人はこわくない)
3. 最後に 川の楽しさだけでなく、恐さも知りました。
毎年今くらいの時期になると水難事故が増えます。
そんなに流れが激しくない川(どちらかと言えば緩やかな川)で亡くなったり
する方がいますが、特に小さなお子さんを持つ親御さんには気をつけていただきたいです。
水の冷たさ、不規則な流れ、岩場、本当に危険です。
しかしながら、その危険性を認識して正しく川に接することができるようになれば、
充分に楽しめることができると思います。
(こんなこと言える立場じゃないんですけど、実際こわい思いしましたから)