真ク・リトル・リトル神話体系1//H・P・ラヴクラフト他 | みゅうず・すたいる/ とにかく本が好き!
新編 真ク・リトル・リトル神話大系〈1〉/国書刊行会

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 「真ク・リトル・リトル神話体系1」


 H・P・ラヴクラフト他 2007年版

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内容(「BOOK」データベースより)
H・P・ラヴクラフトが創造し、A・ダーレスを初めとする作家たちによって拡大しつづける“ク・リトル・リトル神話”の真なるアンソロジー、待望の新装版。狂気のアラブ人、アブドゥル・アルハザードが記した魔道書『死霊秘法(ネクロノミコン)』が初めて登場する「廃都」、邪神クァウグナール・ファウグンとの戦いを描いた「夜歩く石像」など、“ク・リトル・リトル神話”創生初期の名作を収録。

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 国書刊行会より1982年に刊行された『真ク・リトル・リトル神話体系』の、新編復刻版。
最初期のク・リトル・リトル(クトゥルー)神話体系に連なる作品群が収録されている。
『ラヴクラフト全集』との一番の違いは、ラヴクラフト以外の作家の作品も網羅されていること。

 現在ではクトゥルーという表記が一般的だが、この単語は本来人間の発声器官では表現不能なので、クトルフを始めとして諸種の表記がある。
「ク・リトル・リトル」というのもその一つで、たぶん、日本に於いてはこの表記が最初期のものではないだろうか。

 さて、本作の収録作品だが、御本家ラヴクラフトを筆頭に計5作が治められている。

 『廃都』 H・P・ラヴクラフト
主人公の立ち入ったアラビアの砂漠の彼方の廃都には、クトゥルー神話体系に連なる邪神たちの記録が残されていた。
『狂気山脈にて』など同列の作品群の中にあって最初期の作品。
世に言う『クトゥルー神話体系』はここから始まった。

 『妖魔の爪』 S・グリーン
グリーンはラヴクラフトの元妻。
彼女のアイデアをラヴクラフトが代筆した作品。
暗闇の海に浮かぶ海魔の描写が不気味。

 『怪魔の森』F・B・ロング
森に巣くうのは深宇宙より飛来した怪物。
半ば精神的存在でありながら、実態を備えるという矛盾した怪魔を想像し表現しようという試みが、読者の心に不安感を植え付ける。

 『俘囚の塚』Z・ビショップ
これも怪魔の歴史発掘もののひとつ。
アメリカン・ネイティブに伝わる邪神伝説という設定が珍しい。

 『電気処刑器』 A・デ・カストロ
列車に乗り合わせたサイコにより、新型電気処刑器の実験台にされかけた男の話。
まるでサイコ・スリラーのような作品なのだが、追いつめられた男が突如「ふんぐるむい ふたぐん……」と呪文を唱え出して……。
この無茶ぶりがおちゃめ。

 『夜歩く石像』F・B・ロング
石像は半ば封じられた邪神であり、それが復活しつつある。
石像状態でも人間を殺すほどの力があるのに、これが完全復活すれば、人類滅亡!?
主人公はこれを阻止できるか!?
現代とはテンポの違う作風が、妙にノスタルジック。

 『真・ク・リトル・リトル神話体系1』。
クトゥルー神話に連なる作品を書くという事は、新旧を問わず作家にとって魅力あるゲームであるようです。
最初期作品群は古いハマーフィルムの如き味わいあり。
堪能させていただきました。