逢魔が源内 // 菊地秀行 | みゅうず・すたいる/ とにかく本が好き!
逢魔が源内 (角川文庫)/菊地 秀行
¥660
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 「逢魔(おうま)が源内」


 菊地秀行、著。 2004年。



 昨年後半から、良く平賀源内が出て来ます。

特に、意識的に「源内」の出て来る作品を選んで

いる訳では無いのですが・・・。


 しかし、この平賀源内と言う人・・・。


 元々、讃岐藩の侍にして本草学者=医師で、

他藩には仕官しないのを条件に離藩を認められ、

自ら浪人になる。


 江戸で、田沼意次がパトロンになり、自分の

興味を満たす自由人のように生きる。


 薬品会(万国博覧会のようなもの)を開催したり、

蘭学にも精通しておりオランダの科学や物品を

紹介したり・・・、エレキテルなどは自作して

見たりしている。


 さらに、石綿を開発したのもこの人。

油絵を描いた画家であり、西洋画を秋田藩に

指南したり、


 多くの戯作や浄瑠璃の作家でも有名。

後年は、鉱山の発掘を手がけ、「山師」などと

呼ばれる。


 天才と言うより、もはやバケモノですね、これは。

年表を眺めるだけでへたな小説より面白い人物

です。


 で、この作品の主人公は勿論「平賀源内」です。

が・・・、菊地秀行さんですから、当然「あれ」です。

体内に、もう一人の源内が・・・。


 黄昏時の30分ほどの間、逢魔が時に、源内は

「あいつ」に変わる。

異世界の存在・・・、あいつ。


 この世の理では無い、あちらの世界の術を使う

あいつは、源内にとっても敵でありながら、時に

源内を助けたりもする理解不能の存在。


 この世のバケモノ源内と、異世界の存在あいつ。

そして、不可思議な事件を巻き起こす「この世の

ものでは無い」者たち。


 数かずの怪事件を、源内が解決して行く

短編集です。


 この作品は、平賀源内と言う実在の人物を

主人公に据えたことにより、いつもの菊地作品

に比べて、制約があるせいか、菊地テイストは

抑え気味です。


 しかし、この人の場合、制約のある作品の方が

面白い!

自由にさせると、超人・魔人の忍法帳になって

しまうからです。


 実在の源内自身がバケモノだけに、この主人公

には、実に怪異が似合う。

これは、面白い作品に仕上がっています。


 久々に、満足出来る菊地作品を読みました。

面白かったですよ。


 しかし、こう源内さんをあちこちで見かけると、

興味が湧いて来るものですね。

今年は、「平賀源内」をテーマに何冊か読んで

見たくなりました。


 源内ファン(?)の方は、良い本があれば教えて

下さい。