死霊狩り(ゾンビー・ハンター) // 平井和正 | みゅうず・すたいる/ とにかく本が好き!
死霊狩り(ゾンビー・ハンター)〈1〉 (ハルキ文庫)/平井 和正
¥588
Amazon.co.jp

 「死霊狩り ゾンビー・ハンター


 平井和正、著。 



 先日、コミックスで「死霊狩り」を読みました。

これが、とても面白くて、久々に原作を読みたく

なって、2001年版を購入。


 再読にも関わらず、やはり、面白い!

天界のお筆先になる以前の平井和正さんは

本当に、圧倒的に面白いですねぇ!


 「8マン」「幻魔大戦」の原作者でもある

平井和正さんの作品だから、面白くない訳は

無いのですが・・・。


 この、「死霊狩り」シリーズも、元々コミックスの

原作として書かれたものを、青年むけに小説化した

ものです。


 台詞廻しにいささか時代を感じますが、それも

読み進める内に気にならなくなり、壮絶な物語に

のめり込み、貪るように・・・、読了。



 レース中の事故から奇跡的生還を果たした

田村俊夫は、再起に必要な金のため、カリブ海の

孤島で、秘密機関による「訓練」に身を投じていた。

失敗が死を意味するその訓練は、地球外生命体

に憑依されたゾンビーたちと戦う者を選別する

ための冷酷な生存テストであった。

過酷な試練を潜り抜けた者たしを襲う、

さらなる事態!

人類の存亡を賭けた死闘を通じて人間の心の

闇に鋭く迫る、SFアクションの最高峰。

 (裏表紙より引用)



 地球外生命体が、緑色のアメーバ状なのは、

時代を感じますが、物語そのものはいま読んでも

迫力があり、本当に凄い!


 サバイバル・テストでは、世界中から選び抜かれた

六百人のメンバーの内、生き残ったのは二十名に

達さなかった。


 その時、生き残った主人公の俊夫は苦痛に顔を

しかめながら笑った。

それが、俊夫の最後に見せた笑いだった。


 そして、このシリーズで最後まで、二度と

俊夫が笑うことは無い。

何故なら、ゾンビー化した大切な人と闘わねば

ならない運命を背負うことになるから・・・。


 ゾンビー化した者が、必ずしも邪悪な存在とは

限らないから・・・。


 戦争をして、大量虐殺をする人類。

暴走する文明。

必ずしも、人類は善良な存在ではないから・・・。


 ゾンビーを抹殺するゾンビー・ハンターには、

善悪の判断はなく、単なる殺戮マシーンだから・・・。



 物語のラストシーンで、ゾンビー・ハンターになる

ことを承諾し、俊夫が立ち去った後。 俊夫の

同僚が去り際に最高責任者に声をかける・・・。


 「Sというのは、サタンの頭文字かね、ミスターS?」


 無人と化した司令室にひとり残ったSは身じろぎも

しなかった。 やがて表情がわずかに変化した。

石像に似た顔がそれだけで驚くべき変化を遂げた。

うすい唇の両端がきゅっと吊りあがり、Vの字を

形造ったのだ。 恐ろしい笑いであった。


 そして、この物語は第二部・第三部と展開されて

行く。 


 当時の、平井和正さんの作品は全て業を

背負わされている。

凄惨で、そして哀しい。

これも、そのような作品です。


 平井和正さんは、あとがきでこう語る。

 「少年漫画の原作としては制約があり、

人類という悪霊存在を描くには限界があった。」


 ゾンビーではなく、「人類という悪霊存在」。

ここに、主人公と作者の苦悩がある。


 これは、凄さまじい作品です。