光の帝国・常野物語(とこのものがたり) // 恩田陸 | みゅうず・すたいる/ とにかく本が好き!
光の帝国―常野物語 (集英社文庫)/恩田 陸
¥520
Amazon.co.jp


 「光の帝国・常野物語(とこのものがたり)


 恩田陸、著。 1997年。



 「蒲公英草紙・常野物語」を、昨年購入したら、

シリーズ物だったので、第一作の「光の帝国」を

急きょ購入して読みました。


 ああ、計画性の無い行き当たりばったりな、

無節操読書には、時折これがあるのです。

まぁ、それでも懲りない私ですが・・・。


 このシリーズは、常野(とこの)から来たと言われる

不思議な能力を持った人々の物語です。

常野の人々は、穏やかで知的で、権力志向を

持たず、普通の人々の中でひっそりと暮らしてきた。


 この短編集の内、「大きな引き出し」では、

あらゆるものを記憶し再生できる力を持った家族

の物語が語られ、「二つの茶碗」では人の未来を

予知する力のある女性の物語が・・・。


 「オセロ・ゲーム」では、常野の人々に敵対する者

の存在があることが綴られ、「光の帝国」では

常野の過去の悲惨な事件が・・・。


 全ての物語は短編として独立している。

哀愁の漂う、独自の色合いの作品です。

基本的に、主人公はそれぞれ全く別の人物で、

それぞれのストーリーが展開される。


 そして、全ての物語は、エピソードとして完結

しているのだが、同時に物語は閉じないと言う

いささか変わったスタイルを取っています。


 つまり、ひとつの短編が、同時に巨大な

ジクソーパズルのワンピースとして存在する。

しかも、現時点では、必ずしも隣り合ったピース

同士が並んでいる訳では無い。


 この、ジクソーパズルは完成するのだろうか?

全ての物語が、独立した作品として存在しながら、

やがて一枚の大きな絵を形成する。


 そして、その時初めて、「常野物語」と言う、

巨大な絵が出現する。

・・・、そのような事が、可能なのだろうか?


 もし、そんな事ができるのなら、前代未聞の

とてつもない物語が出現する事になるのですが、


 恩田陸さんは、はたしてそのような意図を

本当に持っているのだろうか?


 単に、独立し時に絡み合い、シリーズが進行して

行くだけとは思えないのですが・・・。

何故なら、全ての短編が閉じていない事には

何らかの意図があるはずだから・・・。


 だから、私としては「光の帝国」は、郷愁の物語

であり、恩田さんの「遠野物語」であるとしか、

今は言えない。


 哀愁の漂う、興味深い作品であるとしか言えない。


 シリーズを読んで行こう。

そう、思います。

多分、完結した時にしか評価出来ない、そんな

作品のように思われます。


 現時点では評価不能。

短編として、これこれの話が好きとしか言いようが

無い。


 う~ん、困ったものを書いてくれます。

ただ、興味深いと評価しておきます。