丸山正樹「ワンダフル・ライフ」
「あなたは必ず、この本をもう一度読みたくなる。」
…と帯にありますが、本当にその通りでした。
というか、もう一度読んで確かめて、理解したい、という感じ。
「無力の王」「真昼の月」「不肖の子」「仮面の恋」というタイトルの、四組の男女の物語が、三回ずつ平行して描かれます。
「無力の王」は、脊髄損傷で体が動かなくなってしまった妻と、介護をする夫の物語。
感謝をすることのない妻に腹を立てながらも、自分で選んだ介護という道をやめることはできない…。
「真昼の月」は、子供を作りたいと考える夫と、それを拒む妻の物語。
「不肖の子」は、上司と不倫する女性の物語。
「仮面の恋」は、四肢麻痺の男性と、メールで出会った女性の物語。
全く関係のない物語のようでありながら、最後に見事に繋がるのです。
重度の障害をもつ人の介護の問題。
障害をもつ子どもを受け入れることができるのか、という問題。
障害のある人と男女として交際できるのか、という問題。
人の尊厳にも関わる重い部分もあるけれど、
希望の感じられる物語。
この巧みに構成された人間関係とそれぞれの心の変化を、さらにもう一度読んで確認したい。