町田その子「夜空に泳ぐチョコレートグラミー」 | 虹がでたなら

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町田その子「夜空に泳ぐチョコレートグラミー」

カメルーンの青い魚、夜空に泳ぐチョコレートグラミー、波間に浮かぶイエロー、溺れるスイミー、海になる…魚の名前が印象的なタイトルの5つの短編。
それぞれが濃密な物語なのだけれど、それが見事に繋がっていて、深い。

サキコとりゅうちゃんの子どもの頃から続く、ひりひりするような切ない恋の物語。
その息子、啓太と同級生の晴子が、お互いを意識しつつ自分の殻を破り成長する物語。
自殺してしまった恋人への思いを抱える沙世と、勤務先の軽食屋のオーナー、彼を頼ってやってきた環が関わるなかで、それぞれの真実に気付く物語。
…などなど、どれも切なくて…。
でも、その中で、それぞれが自分の生きる道、生きる場所を選び、一歩踏み出していく姿に希望を感じます。
町田そのこさんの小説は、さみしい、苦しい思いを抱く人がいながらも、そこに優しく寄り添う人がいることにより、強さやたくましさが生まれてくる過程に温もりがあります。