地面師たち(Netflix) | akaneの鑑賞記録

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『地面師たち』(じめんしたち)は、新庄耕の小説を原作としNetflixで配信されている日本のドラマ。

土地の所有者になりすまして売却をもちかけ、多額の代金をだまし取る不動産詐欺を行う「地面師」の犯罪を描く。

100億円の市場価値を持つ希少な土地に目をつけた地面師詐欺集団は、あらゆる手段を使って前代未聞の巨額詐欺を成功させようとするが...。

 

2017年に実際に起きた被害額約55億円に上る「積水ハウス地面師詐欺事件」をモデルとしている。
 

 

 


気骨のある社会派ドラマ「エルピス‐希望、あるいは災い」や、サブカル度たっぷりのラブコメ「モテキ」を代表作に持つ大根監督がNetflixで初めて手掛けた作品になります。

2時間の映画では描き切れず、かなり人が殺されるので地上波ドラマも無理。
ということでNetflixが最適だったのではないでしょうか。
予算もふんだんにあるからセットやロケ、演出にもチープなところがなく、知能犯特有のダークな世界観を堪能できます。




第1話は、1話完結で地面師詐欺の手口を紹介。
2話以降は100億円不動産詐欺という大きなヤマに挑み、視聴者も巻き込んでのスリリングな展開となります。

『オーシャンズ11』などのジャンルに近いですが、洒落た感じは全くなく狂気が強め。
インフォーマ」でも思いましたが、全体の雰囲気が、韓国ドラマに似ている感じがします。
カメラワークや脚本のスピード感など。

オープニングも「今際の国のアリス」みたいなスタイリッシュな感じで、これは Netflix Asia のテイストなのかもしれませんね。
「インフォーマ」は後半失速しましたが、これは全7話、一気に見てしまいました。

 

本当に面白いし、カッコいい!

そして電気グルーヴの石野卓球さんによる音楽が素晴らしい!
無機的なテクノサウンドでありながら気持ちが高ぶり、俳優の演技と共にアドレナリン全開になります。



まず、キャストが本当に豪華!

 

 


●リーダー:ハリソン山中(豊川悦司)
 地面師集団のリーダー。元暴力団幹部。1980年代後半のバブルで地上げ屋として名を馳せ、地面師詐欺集団を束ねて大規模な不動産詐欺を複数仕掛けた。バブル崩壊後、一度は実刑判決を受けて出所後は鳴りを潜めていたが、ITバブルを機に再び動き出した。一見紳士的な性格だが、殺人を楽しむ狂人でもある。


●交渉役:辻本拓海(綾野剛)
真面目なサラリーマン風の風貌で交渉役として活躍する交渉役。地面師をする以前は高級デリヘルの送迎ドライバーをしていたが、仕事中のトラブルをきっかけにハリソン山中と接触する。

 

 


●法律屋:後藤(ピエール瀧)
元司法書士でそれ以外にも複数の不動産関係の資格を持つ法律屋。法律の知識を活かし、買い手との交渉や仲介を担当する。関西弁を話し、口が達者で高圧的な性格。妻子持ち。
 

 

●図面師:竹下(北村一輝)
土地や物件の情報を仕入れ、地主の情報のリサーチ・土地価格の評定などをする情報屋。重度の薬物中毒者で横柄な性格。分け前について不満を抱いている。

 

 

 

 

●手配師:麗子(小池栄子)
地主などに成り済ます人物のキャスティングを担当。身寄りがなく、目先の金に困っている曰くつきの人間を常に数十人ストックしている。地主の経歴などを覚えさせる教育担当でもある。


 

 

●ニンベン師:長井(染谷将太)
身分証や公的証書の偽造を手掛けるニンベン師。ハッキングのスキルにも長けている。猫好きで、ウーバーも来ない様な工業地帯にある廃ビルを根城にしている。
 

 

 



彼らを追っている警察のメンバーは

 

●下村辰夫(リリー・フランキー)
山中たちを追う警視庁捜査二課の刑事。階級は警部。定年が近く、持病を抱えている。

●倉持(池田エライザ)
辰と組む新人刑事。刑事ドラマが好きで捜査一課志望。

 

 

 

 


地面師にまんまと騙されてしまった大手企業「石洋ハウス」は、国際事業も手掛ける業界最大手の不動産企業。社内では、会長の和田島と社長の安倍川の間で派閥争いが起きている。

●開発事業部部長:青柳(山本耕史)

 

 

 

大井町の開発プロジェクトが頓挫したことで、数十億円規模の案件のために代替となる土地を探していたところ、港区高輪の土地にかかる不動産取引で地面師の標的となる。パワハラ気質で、土地を手に入れるためならコンプライアンスも気にかけない。ブローカーや地上げ屋にもコネがある。安倍川に育てられ、現在の開発本部長の地位まで昇り詰めた生粋の社長派。会長派の須永(松尾諭)とは出世競争で対立している。
 

 

 



犯罪モノといっても不動産取引ですから、ド派手なアクションはほぼありません。
基本的には地味な現地調査や書類のやり取りが中心です。

 

 

 

決済手続きも現実的な銀行振込が選択され、現ナマがドーンと積まれることもありません。
にもかかわらず、狡猾な駆け引きに魅力を持たせ、動きの少ない会議室のシーンでも臨場感を感じさせるのは大根仁監督の手腕によるものでしょう。


不動産詐欺を働く地面師グループ、彼らを追う警察、騙される企業、の三つ巴なわけですが、警察と企業はなるべくリアルに、犯罪グループはやや脚色して、という匙加減が非常にハマっています。

 


不正を追う警察がやたら正義感をかざしたりもせず、企業マンたちも「出世や派閥」そんなしがらみや欲に目がくらみ騙されてしまう。

 


かといって犯罪者集団をことさら極悪人に仕立てることもファンタジックにカッコよく描くこともなく、後味の悪い展開、薄気味悪さもたっぷり。

 

ハリソン山中を演じた豊川悦司さん。凄い存在感でしたねー。

 

 

その落ち着きと色気。

細部にわたる緻密な計画性。
しかしながら一体何を考えているのかわからない不気味さと狂気を兼ね備えているんです。




第1話を見終わった時、「印鑑証明そのものが偽物って、すぐバレちゃうじゃん」と思ったのですが、この詐欺は「バレてしまうこと」が重要なんです。
本物の印鑑証明を偽造したら、本当の土地の所有者に迷惑がかかってしまいますから。
あくまでも架空の取引で企業から金を巻き上げることが目的なんですね。

 

 


それにしても、購入する企業側で売り主(土地の所有者)を直接調べないのがちょっと気になりました。
「あまりゴチャゴチャ言うと売主の機嫌を損ねる」と所有者にすごく気を使って、「他にも買い手は一杯いるから他に話を持っていく」と言われたら焦って言いなりになってしまう。
不動産バブルの時代だったからか、買い手の方が立場が弱いんです。


不動産登記を調べればある程度、所有者の情報は分かるはずですし、それこそ探偵や情報屋を使ってでも顔写真を入手したり現在の状態を調べ尽くすことはしないんでしょうか。
弁護士が代理人になれば、本物の印鑑証明も取れるんじゃない?
ま、こういうことは詳しくないので良くわからないんですが。

 


仲介業者や代理人が用意した書類だけを精査し、本人と1回会ってサラッと本人確認を済ませるだけでは、あまりにもリスクが大きいと思いました。
しかしこれが日本の「印鑑&書類社会」の弊害であり、名刺と肩書だけで信用してしまう契約体質の甘さなのでしょう。





モデルとなった2017年の「積水ハウス地面師詐欺事件」はネット上でも記事が残っています。
 

 

 

 


積水ハウスにしてみれば、また会社の不祥事をほじくり返されて大変なのではないかと思いますが、不動産詐欺への警鐘、自戒も含めての映像化許可なのでしょうか。

 


これだけの大手企業でも、冷静に考えれば絶対引っかからないと思う手口でも、何かに追い詰められていたり、競争の原理が働くと、いとも簡単に騙されてしまうという人間の弱さが見事に描かれていました。


Netflix 

一番安いコースなら月々790円。広告有りとなっていますが、ほとんど流れません(というか見たことない)。

是非、見ごたえのある日本のドラマを楽しんでください!
おススメです!