2pianos 4hands | akaneの鑑賞記録

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1996年、カナダのトロントで開幕後、世界中に人気が広がり、現在まで、全世界200都市200万人以上の観客を動員した『2pianos 4hands』。ふたりの俳優が少年から大人、父・母、音楽教師らを演じ分け、バッハ、モーツァルト、ベートーベン、ショパンの名曲からジャズやビリー・ジョエルまで、様々な音楽をピアノで生演奏するユニークなスタイルの舞台。

 

 

 

 


人気すぎて世界各地で異なるキャスト(男性および女性)による様々な版が制作され、初演時から現在までに、カナダ、米国、英国、日本、オーストラリア、香港、南アフリカ、オーストリア、フィンランド…などをはじめ世界各地にある劇場で4000回以上にわたって上演されたそうです!




まずオープニング。
なかなか演奏を始めない、みたいな小芝居があり、2台ピアノで1曲演奏されます。

そのあとは一気に、10歳ぐらいの少年時代へ!
テッドとリチャード、交互に生徒役と先生役を演じます。

 

 


1小節、4/4拍子の説明や、調性の法則など、クラシック音楽の基礎レッスンの風景です。
音階の練習、運指や手の形、手首の位置。

2つの音を鳴らして、その音程を「長3度」などと答える楽典(音楽理論)などなど、様々な場面が演じられるのですが、そのやりとりが本当に面白くて大爆笑。

お母さんに「ちゃんと練習しないとテレビは見せませんよ!」と叱られたりします。
 

 


少し上達すると発表会に出たり、子供のコンクールに出場したりするのですが、アガってしまって、全く弾けない!頭が真っ白!

 


ティーエイジャーになってくると、次第に他のことにも興味を持ったり、進路のことで親と揉めたりします。

「音楽なんかやってても食べていけない!まずはちゃんと大学に進学しなさい!」と父親に叱られたりします。

 

 


しかし段々、自分の実力が分かってきます。
超絶技巧の難しい曲は弾きこなせない。
ある程度上手にピアノは弾けるけど、クラシックの演奏家としてやっていくことは難しい。


テッドとリチャード、二人とも一生懸命に練習を積み、技術も知識も身に着けて頑張っているのですが、音楽学校の試験官は意地が悪い。

 

「きみは才能を無駄にしている。毎日5時間、2年練習してまた来なさい」。

この先生は自分ではなく他の教師に学んだ生徒が気にいらないのか?

 

そんなことがイヤになり、いままでのクラシック一辺倒からリチャードはジャズの音楽院の入学試験を受けてみるのですが、ジャズプレーヤーにもなれない。

 


ここで『マイ・ファニー・ヴァレンタイン』を演奏するんですが、かなり巧いアレンジで弾くんですけど、なんか違うんです。ジャズじゃないんです。とっても微妙なんですが、歴然としたクラシックとジャズの違いを演奏で聞かせるのが凄い!!


結局は音楽教室の教師として、ヒマな奥さんのレッスンをしたり
酔っ払いに絡まれながら、バーで「Pianoman」を弾いたり。



アーティストだけでなく、スポーツ選手でも一般的な仕事であっても、自分の限界が見えてしまったときの絶望感、諦め切れない気持ち、というのはよくわかりますよね。



どんなに練習しても天才にはなれない。
僕たちはただの上手な演奏家。
超一流ではないけれど、近所で一番かな…なんて笑ってリチャードとテッドが握手するシーンは少し悲しくなってしまいますが、この作品を作り上げた二人は紛れもなく天才!!
2台のピアノと4本の手だけでこんなユニークな芝居を創り出したのだから。
まさに最高の舞台劇!




ともかく、2人のプロフィールが凄すぎるんです!

 

 


俳優、演出家、脚本家、音楽家、であり数々の作品のプロデュースも手掛けています。

本当に芸達者で演技が面白いし、ピアノも相当弾けるんです。

クラシックの上級レベルの曲も、ポップスも。
小さい頃、ちゃんとクラシックピアノの教育を受けたんだな、という弾き方で、決して自己流ではありません。
レッスンの様子やコンクール、受験のシーンなどは、ご本人の体験談だけでなくても、実際にその場を経験した人でないと書けない、かなりマニアックな内容なんです。。
だから音楽関係の仕事をしている方たちかと思いきや、この華麗なプロフィールで、本当にビックリしました。






1996年の初演時はこんな感じだったのかな?

 



それから約30年、2人で演じ続けたこの舞台。
アンコールの時、「900回目のラストショーを、故郷のカナダで上演できて幸せです」と語って、静かにバッハの作品を演奏した時には涙が溢れてしまいました。

 

 


ただ、専門的な設定は凄く多いです。

「スケールを弾きなさい」
「何調?」
「C#」

って言われた時の「終わった」感

(黒鍵が多いので弾きにくい)



ショパンのバラード2番やリストのメフィストワルツで挫折する(超絶技巧で、とても難しい曲)



こういった感覚も分かると、本当に心の底から共感できるんですけどね。
ピアノを習ったことがある人なら、めっちゃハマりますよ!!

2004年、2012年には日本公演もあったそうです。

見たかったな~~


笑って笑って笑って、少ししんみりして。
極上のエンタテインメントを味わえますよ。

 

おススメです!