アンダーカレント | akaneの鑑賞記録

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「愛がなんだ」「街の上で」の今泉力哉監督が真木よう子と初タッグを組み、フランスを中心に海外でも人気を誇る豊田徹也の長編コミック「アンダーカレント」を実写映画化したヒューマンドラマ。
謎の男・堀を井浦新、探偵・山崎をリリー・フランキー、失踪した夫・悟を永山瑛太が演じる。「愛がなんだ」の澤井香織が今泉監督とともに脚本を手がけた。

 

 

 

 



かなえは家業の銭湯を継ぎ、夫・悟とともに幸せな日々を送っていました。

 

 

 

ところがある日、悟が突然失踪してしまいます。

 

かなえは途方に暮れながらも、一時休業していた銭湯の営業を、叔母と一緒にどうにか再開させます。

 


数日後、堀と名乗る謎の男が銭湯組合の紹介を通じて現れ、ある手違いから住み込みで働くことになり、堀との奇妙な共同生活の中で穏やかな日常を取り戻していきます。

 



一方、友人・菅野に紹介された胡散臭い探偵・山崎と悟の行方を探すことになったかなえは、夫の知られざる事実を次々と知ることに。






原作漫画は知らないのですが、かなり人気作品のようですね。

なにがどう、ということもなく、淡々と流れるようなストーリーなのですが、ゆったりとした日常風景にミステリーが忍び寄ってくるところに面白さがあり、集中力が途切れずに見られたということが、この作品の魅力なのかなと思いました。

細野晴臣さんの音楽が素晴らしく、映像も全体的に淡い水色で彩られていて、心が静まります。

 

 

 

 

真木よう子さんは、滑舌があまりよろしくなくて、ちょっと苦手な女優さんなんですが、この映画では、雰囲気がピッタリでした。

なんとなく心にわだかまりを抱えている、物憂げで揺れる30代女性。でも存在感はしっかりあって。

 

 

 

 

井浦新さんの、何か心に秘めている誠実な人柄も良かったです。

 

 

 

二人で向き合ってご飯を食べる日常にほっこりします。

 

 

 

 

 

 

悟役の永山瑛太さんもハマってましたね。

捉えどころにないところが。

 

 

 

 

 

江口のり子さんが、かなえと悟の同級生として登場し、悟を探すために探偵を紹介してくれるのですが、標準語の江口さんだとやや魅力が半減しますね。
インパクトが弱いというか…演技力が薄まってしまう感じ。
別に大学の同窓だから、関西出身でも良かったんじゃないかなぁ。

 

 

 

 


探偵・山崎役のリリー・フランキーさんはさすが!でした。

 

 

いい加減で怪しげな雰囲気でありながら仕事はできるし、一番核心を突いてくる人物。
全体的に緩く漂っている登場人物の中で少々常軌を逸した不協和音として、今まで停滞していたモノを動かしていく原動力になっています。


人を分かるってどういうことですか?

 


山﨑が発したこの言葉が、全てを物語っています。

自分自身でさえ手に余ることがあるのに、ましてや他人のことなどどれほど分かるのだろうか?
自分の解釈に当てはめて、分かっているつもりになっているだけじゃないのか?
 

 



かなえは幼い頃、親友と二人で不審者につかまり、親友を亡くしました。
自分だけが助かったことが、心に深い傷を残しています。

 


堀は、親友の兄でした。
その事件が原因となり、家族はバラバラになってしまったのです。

 


かなえの夫・悟は、虚言癖があり、そのせいで物事の辻褄が合わなくなって逃げ出すことを繰り返していました。
 

 


三者三様に抱えているトラウマに、少しずつ歩み寄っていくけれど、ハッキリ解決するわけでもない。
そんなに簡単に人の心は割り切れません。
でも、一歩踏み出したことによって、何か吹っ切れることもあります。
解決しなくても、自分の中で納得できればそれで十分だったりしますよね。

 


そういう繊細な心の動きを紡いだ、余韻のある映画でした。