レイフ・ファインズ、アニヤ・テイラー=ジョイ、ニコラス・ホルトの共演で、孤島にある高級レストランに隠された秘密が明らかになっていく様を描いたサスペンス。HBOのドラマシリーズ「メディア王 華麗なる一族」で注目されたマーク・マイロッド監督がメガホンをとり、「マネー・ショート 華麗なる大逆転」「ドント・ルック・アップ」のアダム・マッケイがプロデューサーを務めた。
有名シェフのジュリアン・スローヴィクが極上の料理をふるまい、なかなか予約が取れないことで知られる孤島のレストランにやってきたカップルのマーゴとタイラー。目にも舌にも麗しい料理の数々にタイラーは感動しきりだったが、マーゴはふとしたことから違和感を覚え、それをきっかけに次第にレストランは不穏な空気に包まれていく。レストランのメニューのひとつひとつには想定外のサプライズが添えられていたが、その裏に隠された秘密や、ミステリアスなスローヴィクの正体が徐々に明らかになっていく。
世界で最も予約の取れないレストラン、ホーソン。
有名シェフのジュリアン・スローヴィクのレストランは孤島にあり、船で案内されます。
自称:食通のタイラーは、超高額なコースを予約できて有頂天ですが、本命の彼女には振られ、代わりにマーゴを伴ってやってきました。
コイツがほんま、クズ野郎で、こんな奴とご飯食べても絶対美味しくないですーーーー!!
全てを美食のために捧げるレストランの超高額なコースを予約したのは、マーゴとタイラーを含め11人。
シェフのスローヴィクが名声を得るきっかけとなり、またその一言で料理人とレストランの運命を左右する大物料理評論家とその腰巾着の編集者。
料理番組のリポーターとして再起をかける落ち目のスター俳優とそのアシスタント。
裕福な熟年夫婦。
金にモノを言わせて高級料理を貪るマナーの悪い若きIT長者……。
料理の本質が分かっていない自称・食通家たち。
天才的なセンスとカリスマ性に満ちた伝説のシェフが振る舞うのは、芸術的なまでに美しく、完璧なコース料理の数々。
この隔絶されたレストランの特徴は、「料理のために人がある」こと。
人が食べるための料理ではありません。
料理を食べる「eat」のではなく、味わい「taste」なさいと。
人が料理にひざまずき、客がレストランに従属する。
権力関係が逆転しバランスが崩壊した光景に、少しずつ違和感を覚え始めます。
ソースを泡状にしたり、凝った盛り付けにしてタイトルを付けたり、というのはまぁ良くある手法ですが、「パンに付けるスプレッドやソースだけを提供して、パンは出さない」と、妙に哲学的なウンチクが述べられるようになってくるんです。
そして、客にもそれぞれ秘密があり、その秘密はコースが進むにつれ徐々に明らかになっていきます。
絶対的支配者であるシェフ:スローヴィクと、洗脳集団のような料理人たちに翻弄されるなか
ただ1人、マーゴだけがフラットな目線を保ち、シェフや店の矛盾に気付いて行動を起こします。
「ミッドサマー」のような感じのストーリーですね。
宗教ではありませんが、カリスマシェフに心酔しているというか、洗脳されてしまった人間たちの不可解な行動と顛末。
もちろん、主人公のシェフが彼らに対して何を感じているかは想像に難くないし、復讐したくなる気持ちは理解できます。
何もわからないくせに分かったような口をきき、偉そうに食通を気取る奴らや、ともかく金にモノを言わせるだけで味わいもしない面々にうんざりしているのは良く分かるんですが、なぜそこまでしなければならないのかの動機が弱いように思いました。
直接的に彼らから酷い被害を受けた描写が無いので、代表的な人物をピックアップしただけ?というか「いや、とばっちりやん?!」みたいな人もいたし、料理人たちの心理も具体に紐解かれないので「そんな一蓮托生でいいんかい??」って思っちゃいました。
結末がどうなるか、なぜタイラーだけが知っていたのか、他の客もみんな知っていたのか、その辺も曖昧でした。
シェフの母親がいたのはなぜ??
シュールな寓話のような感じで見れば良いでしょうか。
「ドント・ルック・アップ」のアダム・マッケイがプロデューサー、というのもなるほど、って感じです。
シェフもなかなかに狂ってますけれど、客の中でマーゴだけが異質であることは、はっきり理解できたようです。
コースが進むにつれ、彼女にだけヒントを出し、別行動をとるチャンスを与えるんですね。
それをきちんと読み取り、考え、最適の方法でシェフにオーダーしたマーゴの勝利、といったところです。
この映画での料理は憎しみと欺瞞に満ちています。
素朴で心温まるお料理を楽しみたい方には、やはりこちらをお勧めします!