ハンターキラー  潜航せよ | akaneの鑑賞記録

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ロシア近海で1隻の米海軍原子力潜水艦が消息を絶った。ジョー・グラス艦長率いる攻撃型原潜“ハンターキラー”は捜索に向かった先で、無残に沈んだロシア原潜を発見、生存者の艦長を捕虜とする。同じ頃、地上ではネイビーシールズ精鋭部隊の極秘偵察により、ロシア国内で世界を揺るがす壮大な陰謀が企てられていることが判明する。
未曾有の緊急事態を回避するため、ハンターキラーに下った任務は、絶対不可侵の水中兵器ひしめくロシア海域への潜航命令。グラスは任務遂行のため、シールズとタッグを組み、禁断の作戦実行を決断、世界の運命は、一隻の潜水艦に託された。


いや~!面白かった!

これは超超オススメ!


米海軍原子力潜水艦ヒューストンの元艦長ジョージ・ウォーレスと、ジャーナリストとしての受賞歴を誇り、ベストセラー小説家でもあるドン・キースが共同執筆した小説がベースなので、ものすごくリアルなんです。

プロデューサーたちが、国防総省と米海軍の協力を取りつけて、バトラーや監督、スタッフたちは撮影前にパール・ハーバーへ行って、ヴァージニア級原子力潜水艦に乗船して海に出たり、海軍の技術顧問であるラッセル・クーンズから指導を受け、軍事コンサルタントから潜水艦乗組員が使う辛口で強い口調のスラングも学んだとのこと。
海軍は、パール・ハーバーに着岸している原子力潜水艦を開放し、2日間だけ撮影を許可。1日目は潜水艦の内部、2日目は潜水する様子を撮影することができたそうです。

 

8000トンもの巨大な機械が海を潜っていく映像は、CGでは絶対に作り出せなかったと。

 


海軍顧問のクーンズは撮影現場に何度もやって来て、最新の潜水艦を細部まで完璧に再現できているか確認し、言葉遣いや指令の出し方なども細かくチェックしたそうです。

「潜水艦に乗って海面から50度降下すると、すべてが傾き始める」ことから、潜水艦指令室のセットを巨大な回転台の上に設置して撮影。

カメラを傾けるのではなく、セットが傾くことで俳優たちもよりリアルな体感ができます。

 

 

そういった「本物」の重厚感が随所に感じられるのも魅力。

ハラハラドキドキの連続で、ミサイル飛んで来ようものなら、思わず椅子の上で身をよじってしまうぐらい迫力満点です。

ぜひ映画館で観てほしいですね!

 


ハンターキラーの艦長ジョー・グラスは、兵学校卒ではなく完璧な叩き上げなんです。

 

 

ずーーーっと潜水艦の中で下働きからあらゆる部署を経て、中佐に上り詰めた人。
だから潜水艦の隅々まで知り尽くしていて、現場での知識がハンパない!
どんな状況になっても、冷静に即座に判断を下せる。
それがもう惚れ惚れしますね。これぞリーダーシップですよ。
決して押し付けや独りよがりではなく非常にリベラルで、一瞬にして部下の心を掌握してしまう人間力、統率力を持っています。
こんなリーダーだったら、絶対命かけてついていきます!

外の様子が一切分からない潜水艦の中に閉じ込められている状態で、頼りは「音」だけ。

 

 

何が近づいてきたか何が起こっているか、そのほとんどを音で判断するのが、より緊張感を高めます。
ロシアの海域を進行するわけですから、びっしりとソナーやら探知機が密集しています。
何十メートルも海の底にいるのに、船影だけでなく船内の会話や呼吸音まで海上の駆逐艦から探知されてしまうのが怖いですね。

見ている方も息を止めてしまいます。

様々な危機が襲ってきて、その都度、船員たちが「キャプテン!!!」って必死の形相で指示を仰ぐんですが、彼の決断は一つ間違えば潜水艦もろとも自滅するか、即座に第三次世界大戦を引き起こす恐れもあります。

その判断は時に、常軌を逸した策や究極に危険な賭けに出ていることもあり、副館長役の人がその都度「そんな無茶なことを!」「普通はこうします!」と意見するのですが、それも単に対立しているという感じではなく、《通常はこういう対応をしますが、艦長はその一歩先を見越している》みたいに軍事的なことを観客目線でわかりやすく説明してくれているようで共感しやすい。


そしてもう一人、陸のリーダーがネイビーシールズ特殊部隊のビル・ビーマン。

 

 

グラス艦長に比べると、口は悪くガサツなんだけど、本当に頼りになる精鋭。
3人の部下を引き連れてロシア側の基地に近づき、何が起こっているか偵察をする任務だったのに、たった4人で敵に拉致されたロシア大統領を奪還することに!!
もう、どう考えても無謀な作戦なんですけどね。
大事な部下を失いつつ、自分もギリギリの状態でロシア大統領を海中の潜水艦に引き渡したあと、怪我を負い一人残してきた新入りの部下を助けに、また敵地に戻っていくんです。
驚く新人に「ま、エクササイズだよ」なんて軽口たたいて。
新人君は、まだまだ全然ダメで怒られてばかりだったんですが、基地から脱出する際、彼の的確な射撃によって援護されたことをちゃんと褒めて認めるんです。


もうほんとにね、仕事の内容がキツくっても頑張れるんですよ。
リーダーが素晴らしくて、確固たる信頼関係があれば。



沈没したロシア潜水艦のアンドロポフ艦長はミカエル・ニクヴィストさん。

 

 

これが遺作となり、2017年お亡くなりになりました。
まだ50代だったのに。。。  
ミッションインポッシブルでのヘンドリクス役やミレニアムのミカエル役がとても印象に残っています。
敵国の潜水艦に助けられた艦長。もちろん捕虜ですからどんな命運が待ち受けているかわかりません。
しかし彼も幾多の兵士を育て上げた名艦長。
自分たちの潜水艦が沈没した理由を理解し、大統領奪回に向けて協力します。
グラス艦長とのやり取りが痺れますね。本物同士が分かり合える瞬間。

「人、人を知る」っていうんでしょうか。

(こんな格言なかったっけ?)


紅一点で登場する、政府高官役(CIA?)のリンダ・カーデリーニさん。  
なんとグリーンブックで、トニーの奥さんを演じていた女優さんです!

 

 

あんなにチャーミングで可愛らしい奥さんが、今回はキリっと凛々しいキャリアウーマンなんですが、変に女性を意識したキャラ設定ではなく、非常に自然体で溶け込んでいて、そういう脚本演出も素敵だなと。




まぁとにかくグラス艦長とネイビーシールズのビル、そしてアンドロポフ艦長がカッコよすぎる!!
下手に家族とか恋愛とか絡めてないのもいい!
敵味方関係なく、人として認め合い、今すべきことを全うする。
このシンプルな男のドラマが本当に感動でした。
ボヘミアン・ラプソディでも思いましたが、徹底的にリアルにこだわった製作陣も素晴らしい。

まぁちょっと

 

ロシア大統領の扱い雑じゃね?

SP弱すぎじゃね?

 

ってのはありましたどね(笑)
これがアメリカ側だったら、SP1人で敵を50人ぐらいぶっ倒してます。

 


今回、ゲイリー・オールドマンはちょっと嫌な上官役。

クーデターを起こしたのもロシアの軍事大臣。
「バイス」でも描かれていましたが、常に好戦的な政治家がいるのですね。
「先を越されたら負け!」みたいな考え方で突き進んでしまう思想。
アクションエンタテインメントでありながら、戦争の火種はどこにあるかわからない恐怖、それに立ち向かうべく日々、世界を守っている人たちがいること、その勇気と献身も描かれていると思いました。
 

 


ジェラルド・バトラーさんと言えば「300」での超肉体派が思い浮かびますが

 


最初に知ったのは「オペラ座の怪人」のファントム!

 

 

実際のミュージカルではどちらかというと繊細で幻影のようなイメージのファントムを、非常にセクシーで人間くさく演じていて大好きでした。

歌い方がクラシックではなく一人だけロックっぽくて物議もありましたが、ほとばしる情熱がホントに素敵なんです。
この映画も大好きで3回ぐらい見て、スペシャルDVD BOX買ったな~。


今回は肉体を駆使して戦う役ではなく、頭脳明晰で冷静沈着なジョー・グラス。また新たなバトラー様に出逢えました。