壽 初春大歌舞伎 | akaneの鑑賞記録

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今年初めての歌舞伎座。
昨年11月以降、かなり洋楽脳になってましたが、やっぱり歌舞伎も楽しいねえ!

昼の部は幕見で。
10時から並んだので、余裕でお気に入りの席をゲットできましたが、
最終的にはどの幕も立ち見の状態でした。

 

 

●舌出三番叟
松羽目の舞台に三番叟と千歳が登場。

「翁」はいなくて2人のみ。

天下泰平、五穀豊穣を願う祝祭的な踊りです。
「三番叟が<舌を出す>滑稽味ある振りが特徴です」って書いてあったけど、いつ舌を出したのか全然わかりませんでした。
五穀豊穣というよりは、婚礼っぽいことしていたような。
こういうのはイヤホンガイド借りないとわかんないんだよねー。
まぁ新春1幕目にふさわしい、お目出たい踊りです。

 


●吉例寿曽我
初春に「曽我狂言」を上演する江戸歌舞伎の吉例にならい、こちらも縁起の良い曽我もの。寿曽我対面よりはシンプルです。
2017年1月の松竹座でも見ました。
場所も工藤の屋敷ではなく鴫立澤で、登場するのは工藤の妻である梛の葉。
仇討ちをしようとする十郎五郎を諭したうえで、梛の葉が工藤から預かっていた狩場の通行証を渡すというストーリー。
場面が雪景色で、梛の葉の赤い着物がとても映えます。
芝翫さん、場内に響き渡るような大きな声で、稚気溢れる曽我五郎。

十郎は七之助さん。
舞鶴は児太郎さん。すごく立派だったなぁ。

このところメキメキ進歩して、とっても存在感ありました。
時々ご近所で見かけますけど、普段は眉がなくて強面のガタイの良いお兄ちゃんです。
そして梛の葉には福助さん!
やはり右手は動かないようですが、前回よりもセリフも明瞭になり、最後はすっくと立ちあがってポーズを決めていました!
回復が進んでいるようでなによりです。


●廓文章
大坂新町の吉田屋へやって来たのは、編笠をかぶり紙衣姿に零落した藤屋の若旦那伊左衛門。

放蕩の揚げ句に勘当されながらも、恋する遊女夕霧に会いたい一心の伊左衛門を、吉田屋の亭主喜左衛門と女房おきさ夫婦は正月飾りも整った座敷に迎え入れます。

一人待ちわびる伊左衛門のもとへ、ようやく夕霧が姿を現しますが、二人は痴話喧嘩を始める始末…。
昨年4月の御園座に続き、2度目の吉田屋。

今回の夕霧は七之助さんです!!
いや~~~超クールビューティ。

綺麗~~~!

 

 

これだもん。ほんと美男美女!うっとり…
夕霧の大きなかつらは「伊達兵庫」といって、最高級の花魁の髪型です。
重さ20キロ近くあるんじゃないかしら。
夕霧は、かんざしだけでなく、銀色のキラキラするフリンジが両脇についていて、頭を揺らすたびにそれがキラキラして本当に可愛いんです。

 


「一條大蔵譚」はあまり好きではないのでパスして昼ごはんへ。
歌舞伎座横ではためいていた「鯛めし」のぼりに惹かれて入ってみました。魚や ころすけ





店内はなんだかバーのような喫茶店のような…?

 

 

鯛めしは売り切れだったので鯛釜飯のセットを注文。
釜めし+300円で、サラダ、小鉢、お味噌汁、ドリンクがつきます。
しばらくしてやってきた釜飯をあけると

ど~~~ん

 

 

 

頭としっぽがどどん!と入っていて
イケメンのスタッフさんがほぐしてくれます。
半分はおこげも楽しみながら最初は釜飯で

 

残り半分は、卵でとじて雑炊にしてもらいました。

 

 

鯛のお出汁がしみていてうま~~~い!めっちゃ美味しかった!

お話を伺うと、夜はバーをしているオーナーさんのご厚意で、昼間だけ営業しているんだって。
11~15時なので、昼の部を全部見ちゃうと食べられませんね。
食べてから夜の部だと、ちょっと間が空いちゃうけど、なかなか美味だったので、また行こうかな。
オムライスで有名な「YOU」と同じ通り。
高麗屋さんのごひいきで、お弁当の差し入れなどもしているそうです。
予約すれば幕間にお弁当も注文できるとか…


 

 

さーて、夜の部行ってみよう!


●絵本太功記  
2014年 9月 ほぼ同じ配役で観賞。もう4年半前なのか~~。
本当はもっと長いお話なんですが、今は十段目の「尼崎閑居」しか上演されません。
武智光秀(明智光秀)は主君小田春永(織田信長)を本能寺で討ち果たしますが、母皐月は息子が犯した主君殺しの謀反に怒り、尼ヶ崎の庵室に籠ってしまいます。

そこへ光秀の妻操が息子十次郎とその許嫁初菊を伴ってやって来ます。討死を覚悟し出陣の許しを乞う十次郎を、皐月は別れを悲しみながらも初菊と祝言を挙げさせ送り出します。

 

江戸時代、芝居で実名を出すのは禁じられていたので、このような分かりやすい偽名になっています。

武智光秀の息子十次郎君。まだ17~18歳ぐらい。

幸四郎さん、今月は前髪のある若者2役ですね。
とても46歳には見えません!初々しい10代の少年です。美しい。
「見事手柄を立てたいので出陣したい」と威勢のいい事を言いましたが、戦況は最悪です。
しかし子として父親と共に闘って死のうと十次郎は決意しています。
そうとも知らず、自分が手柄を立てて戻って来るのだと信じて喜んでいる初菊ちゃんがかわいそうです。
このまま祝言を上げすに今出発してしまおうか…と独り言の十次郎くん。

その独り言を初菊ちゃんが聞いていて、部屋に飛び込んできます。

 

「待って!!討ち死にだなんて聞いてないし!!」

 

泣いて出陣をとめる初菊ちゃんですが、

「そなたも武士の娘だろう。しっかりしろ」と言い聞かせる十次郎くん。
初菊ちゃんは泣く泣く鎧を付けるのを手伝います。
兜が重くて運べなくて(どんだけお姫様なんだ?)
振袖の袖に乗せて、ずるずる~って運びます。
まだあどけない初菊ちゃん。14~15歳ぐらいかなぁ。
今回も米吉君。かーわーいーいー!
ほんとに「はんなり」「ぼんじゃり」の可愛い初菊。




さて、昨晩からこの庵室に身を寄せていた一人の僧侶。

この僧こそ、春永の腹心真柴久吉(羽柴秀吉)でした。

夜も更けたころ、久吉を追ってきた光秀は、障子越しに竹槍を繰り出しますが、そこにいたのはなんと母親の皐月。
そこに瀕死の重傷を負った十次郎も戻ってきます。
息も絶え絶えなのに、気付け薬を飲ませ、カツを入れて「傷は浅いぞ!案じるでない!戦況を語れ!」とか。
お父さん、鬼畜やわぁ。

結局、十次郎は初菊の腕の中で息絶え、お母さんも絶命。
光秀男泣き。

のところに、また戦の鐘の音。
我に返った光秀の元に秀吉と加藤清正登場!
この場で光秀を仕留められますが、久吉は手を出しません。
ここで相手を討つことは、「義はあるが勇はない」からです。
あらためて合戦の場で決着をつけよう、とお互いに言って幕。

光秀サゲ、秀吉アゲは、昔からデフォルトなんでしょうけれど
謀反を起こして主君を殺すわ、竹槍で母親は殺すわ、負け戦に行かせて息子は無駄死…となると、
いくら吉右衛門さんの演技が素晴らしくても、光秀に同情できないよねー。


●勢獅子
江戸三大祭の一つ、日枝神社の山王祭で賑わう江戸の街。町内の御神酒所には鳶頭や芸者たちが勢ぞろいし、ほろ酔い気分。鳶頭たちは曽我兄弟の仇討の物語、江戸前の威勢のいい獅子舞を賑やかに披露し、皆を盛り上げます。

「火事と喧嘩は江戸の華」てなことを言いますが(落語家?)
火事の多い江戸の街には町衆による火消しの組がありました。

それこそ「め組」とか。
当時の消防は破壊消防でしたから、彼らは火事の延焼を防ぐ為、火事の先回りをして現場に駆け付け、法被姿に火の粉を浴びながら家屋を引き倒して防火ラインを作り、最前線で活動したようです。
また、祭りの混雑には喧嘩が付き物。その喧嘩をさばいて納めるのも、町火消しの鳶の兄さんたちでした。
 そろいの法被を着て、カッコよく町内を仕切る鳶のお兄さんたちは、町のヒーローだったので、こういうお祭り系の踊りには必ず登場します。

胸元に藍色で紋をデザインした着物に、金銀の刺繍の入った、たっつけ袴。

 

 

合わせて登場するのは芸者の姐さん。

黒紋付に裾には波の模様、赤い襦袢、そしてこの綺麗な柄のストライプの帯が定番です。

 

 

浅黄色の幕が振り落とされると、総勢30名ほどの出演者が勢ぞろい!

非常に華やかな雰囲気で始まるのですが、ちょっと長かったですね。

踊ってるだけなので飽きますね。

でも福之助くんと鷹之資くんの獅子舞は凄く巧かったです!
 

●松竹梅湯島掛額
舞台は鎌倉時代の江戸の町。

(この時点であり得ないんだけどスルーしてください)

江戸に木曽義仲が攻めてくるともっぱらのうわさで本郷駒込の吉祥院へ、八百屋の娘お七たちが逃れてきます。

「紅長」の愛称で親しまれているひょうきん者の紅屋長兵衛。

お寺の小姓吉三郎に心を寄せるお七が、その恋がかなわないことを知り悲しみに暮れています。

吉三郎は幸四郎さん。ここでも前髪の美青年役です。

紅長はお七の機嫌をとったり、吉三郎とのラブシーンをセッティングしたり、役人を追い払ったり大忙し。
七之助さん演じるお七はぽわ~~んとした世間知らずで素直なお嬢様でとても可愛らしい。

 

この前半部分はかなり自由というかおふざけのシーンも多く、8月の納涼歌舞伎のノリです。
ハズキルーペあり、DU PUMPのU.S.A.あり、ソルマックあり(笑)

猿之助さんと松江さんがメチャクチャ弾けてます。

 

後半は八百屋お七の櫓の場面。

明日までに家宝の刀が見つからないと切腹になってしまう吉三郎を救うべく、お七は彼のもとに駆け付けたいのですが、すでに夜も更け、町の木戸は閉じられています。

木戸を開くためには、火の見櫓の太鼓を叩かなければなりませんが、厳罰に処されてしまいます。

それでも吉三郎に会いたい一心のお七は…意を決してやぐらに登り、太鼓を叩きます。

 

その決心の部分は、人形振りで演じるため、ここからは完全に文楽(人形浄瑠璃)になり、「とざい、と~~ざい~~」の口上があり、後見が2人ついて、お七は人形のように動いてお話が語られていきます。
追い詰められたお七の心を描くには、様式美を追求した人形の動きが適しているからなんだそうです。

吉祥院、櫓でのラストシーン、八百屋お七などの人物設定は、三人吉三のお嬢吉三にも使われていますね。

「八百屋お七」と名のつくお芝居は、必ず櫓に登って太鼓を打つのが決まりなんだとか。

実際のお七は、寺小姓の庄之介に逢いたい一心で自宅に放火し、火はすぐに消し止められたけれど、放火の罪で捕縛されて鈴ヶ森刑場で火あぶりにされてしまいました。可哀想。