累 -かさね- | akaneの鑑賞記録

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歌舞伎や演劇、映画、TVドラマなど鑑賞作品の覚書

 

伝説の女優の娘・淵累は卓越した演技力を持ちながら、自分の醜い外見にコンプレックスを抱いて生きてきた。彼女の母親は、キスした相手と顔を取り替えることが可能な謎めいた口紅を娘にのこす。一方、舞台女優の丹沢ニナは、容姿に恵まれながら芽が出ずにいた。やがて二人は出会い反発し合いながらも、互いの短所を補うために口紅の力を使うことにする。

土屋太鳳ちゃんの独壇場、まさにハマり役。
普段のニナ、演技の下手なリナ、累の演技力で輝くニナ、累に乗っ取られていくニナ。
どれもちゃんと演じ分けができていました。
彼女はこれだけのポテンシャルがあるんだから、青春ドラマなんかやってないで、もっと舞台や映画にシフトしていけば良いのにと思います。

プルートゥも素晴らしかったですよ。

https://ameblo.jp/mio1384/entry-12343378940.html

 

ダンスシーンの表現力、求心力はすさまじかった。
基本的な体がしっかりできているから、普通に演技しているときも動きや形がとても綺麗なんです。
表情も豊かだし、これからもっと伸びてほしい女優さんです。
 

 

芳根京子ちゃんもかなり頑張っていましたけど、だんだん「ニナの顔を持った累」に人生を奪われてしまう役なので印象が弱くなっちゃうのは仕方ないかな。
「累の顔になっているニナ」の時に、実の母親が訪ねてきたのに、他人行儀に応対されてしまう時の哀しみが胸に刺さりました。
恨みを込めて上目遣いに睨むとき、「貞子」ばりの三白眼になるのが非常に怖かったです。
どうしても「べっぴんさん」でのおっとりした役柄が定着していますが、この夏は「高嶺の花」でもかなり突っ込んだ役に挑んでいたように、ちょっとダークサイドに落ちた演技が、意外とハマっていて良かったです。
今後もいろいろな役に挑戦してほしいですね。
 

 

累の母親であり、大女優だった淵 透世を演じた壇れいさんも、さすがの存在感。
かつて彼女を見出し、新進演出家として共に舞台で成功を収めたのが浅野忠信さん演じる羽生田。
透世を失ってからは居場所をなくし、今はマネージャー業。
累とニナ、両方をうまく操り、自分の野望を叶えるために奔走します。

もう一度、自分の手で透世を創り出すために。
ある意味、彼が一番狂っているのかも…。

羽生田と透世のオマージュとして、烏合と丹沢ニナを配したのでしょうが、ちょっと横山裕くんでは無理でしたね。
明らかに演技力の差が出てしまって…
この烏合役がもっとハマっていたら、羽生田と透世の過去、繰り返される恐ろしい秘密にもっと深みが出て面白かったかな。



佐藤祐市さんは、とても好きな監督さんです。キサラギとかね。
今回も最後のサロメの舞台をきちんと本物の役者さんで再現してくれたのが素晴らしかった。
衣装も「蜷川マクベス」みたいに和風のデザインで、ちゃんと舞台で上演している。
稽古場や本読みのシーンも、まさに本物だったし。
ここにしっかり予算をかけて本物を見せてくれたのがとても高評価です!
村井国夫さんの大御所演出家もピッタリでしたし、なんといっても太鳳ちゃんサロメの舞踏シーンは圧巻でした。
 

 

 


「累」とは、江戸時代に茨城県の累ヶ淵に言い伝えられる「顔が醜く脚が不自由な娘が殺された」ことによる因果応報の物語で、歌舞伎や舞踊、落語の題材にもなっています。
歌舞伎だと「色彩間苅豆(いろもよう ちょっと かりまめ)」という演目です。
タイトルだけでちょっとエロくないですか?
少女 累は壮年の男との恋に溺れましたが、世慣れた男にとっては遊びでしかなく、しかもその男は母の密通相手で父を殺した犯人でした。その因果が巡り巡って何も知らない累の顔は崩れ、脚が不自由になってしまいます。醜い姿で男に取りすがるも無残に殺されますが、怨霊となって男を殺そうとする、という物語。
いずれも「累」という名前、醜さゆえに殺され、その怨念が後々まで因果となって人をとり殺すお話が多く作られています。