プルートゥ | akaneの鑑賞記録

akaneの鑑賞記録

歌舞伎や演劇、映画、TVドラマなど鑑賞作品の覚書

 

人間とロボットが共存する時代。世界最強といわれるロボットが次々と破壊される事件が起こる。高性能刑事ロボット、ゲジヒトは犯人の標的が、自身を含めた7体の大量破壊兵器となり得るロボット達だと確信。日本に渡り、限りなく人間に近い存在であるロボット、アトムと共に謎を追うことに。内戦で家族を失った世界最高峰の頭脳を持つ科学者アブラー、人間を殺害した唯一のロボット、ブラウ1589との接触により核心に迫っていく。
ゲジヒトは日々、忌まわしい悪夢に苛まれ、妻ヘレナも彼の不調を感じ不安を隠せない。アトムもまた、お茶の水博士に愛情豊かに育てられながらも、自身の生みの親である天馬博士との複雑な関係がその心に影を落としている。葛藤を抱えながらも事件の解決に向けて尽力するアトムとゲジヒトであった。
  時を同じくして、アトムの妹で悲しみを察知する能力を持つウランが廃墟の壁に花畑の絵を描く不思議な男と出会う。そこにアトムが駆け付けると、男に異変が起こり…


人間とロボットの共存。
憎しみや哀しみの感情。
憎しみの連鎖とそれを救う赦し。

そういったテーマでしょうか。
ともかく舞台セットと演出が素晴らしかったです。

シディ・ラルビ・シェルカウイ氏の振付&演出。
ダンス、芝居、映像など様々な要素を自由自在に絡み合わせ、それを演劇作品として完成させています。
セットはチラシにもあるようないびつな四角形の枠組みと、1枚の大きな板をランダムな形で7つに分割したもの。
これを組み合わせて様々なセットに仕立てるのがまあ鮮やかで!
それらに原作漫画のシーンや人物やイメージが、プロジェクションマッピングで次々と投影されていきます。
効果音や音楽も非常に的確で、ダンサーの動きや役者陣の台詞とも完全に融合していて、五感をフルに揺さぶられる超感覚的な舞台でした。
内容は非常に重く、まさに近未来を予言するかのような内容ですが、スタイリッシュで流れるような演出が絶妙なバランスを生み出しています。


森山未來さん。出てくるだけでパッと目をひく存在です。
あのしなやかな身のこなしは、ドラマなど映像の世界では堪能できません。
本当に子供のようなあどけない少年の表情をしたアトムなんですよね。
生まれ変わって初めて知った憎しみの感情、それを乗り越えてプルートゥを赦し地球を救う逞しさ、どんどん変化していきます。
ダンサーたちに支えられて、あのアトムのポーズ(片腕を前にすっくと伸ばす形)で空を飛んだりするのも素敵でした。

大東駿介君の舞台姿は初めてみましたが、とても落ち着きがあってゲジヒトの哀しみもよく伝わってきました。
アイドルっぽいイメージでしたが、しっかり経験を積んできているんだな、と。

土屋太鳳ちゃん。
初めての舞台ということですが全然!!
ウランとヘレナの二役も完璧に演じ分けて、体の動きも発声も不安要素全くなしです。
凄い!
ウランは割といつものキャピキャピした女の子キャラでしたが、ヘレナは声も完全に使い分けて、落ち着いた人妻。
むしろこういったキャラクターでのお芝居を今後も見てみたいと思わせるほど素敵でした。
ダンスに関しては全く遜色ありませんし、そういう基礎がきちんとしているので、舞台での佇まいや体の使い方も美しく、活舌もとても綺麗で。
これから舞台の仕事も増えるかもしれませんね。

吹越 満さん、柄本 明さんは言わずもがな。
特に柄本さんは、キーマンとなるロボット「ブラウ1589」の声も吹き替えていて、その不気味さが秀逸でした。

9名のダンサーたちの滑らかな動き。

舞台セットの転換もまるでダンスのように優雅でスピーディ。
アトムやウラン、ゲジヒトなどロボットの周りで、その手足の動きを司ったり感情を表したりします。
「これは文楽だわ!」って思い当たって一人ほくそ笑む私。


単純なアニメの少年アトムしか知らない私には、かなり衝撃的でした。
今後は海外公演も控えているようです。

 

世界的に通用するテーマ

手塚治虫の原作

斬新な演出

クォリティの高いパフォーマンス

 

きっと世界でも絶賛されることでしょう。