ブラックパンサー | akaneの鑑賞記録

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アフリカの秘境にあるワカンダで産出される鉱石ヴィブラニウムは、全てを破壊してしまうほどのパワーを持つ。歴代の王は、悪用されないように鉱石の存在を極秘にしていた。若くして王になったティ・チャラ(チャドウィック・ボーズマン)は、謎の男エリック・キルモンガー(マイケル・B・ジョーダン)がワカンダに潜入しようとしていることを知り……。

 

 

まず美術、音楽が素晴らしかったです!
ワカンダの表向きの姿であるサバンナと、本来の姿である超近代都市が見事に融合された風景。
超近代でありながら、完全に無機的な感じではなく、武器やラボなどにもアフリカの紋様などがさりげなく使われていてお洒落。
色鮮やかなアフリカの民族衣装も素敵だし、王族の衣装も戦闘スーツも全部素敵でした。

 

 

それに打楽器を多用したプリミティヴな音楽や儀式も随所に使われていて、テンション上がります。
もちろん現代風にアレンジはされていると思いますが、これほど民族性がプッシュされている映画、マーベルでは初めてではないでしょうか。

さすが世界トップレベルのエンタテインメント集団、毎回色々とチャレンジして楽しませてくれるなと思いました。

日本の歌舞伎、インドのバーフバリのように、その地発祥である文化文明は、やっぱり説得力があって落ち着きますよね。

ストーリーはシンプルに、王位継承の争いと、ワカンダのこれまでとこれから。
実を言うと、最近のアベンジャーズの世界観にはちょっと辟易していたんです。
アイアンマンだって、最初は社内の揉めごと。
キャプテンアメリカも、第二次世界大戦のお話でしたしね。
宇宙からなんか攻めてくるとか、異次元の世界から神が来ちゃうとか、なんかもう訳わからないでしょ?
敵側がそんなスケールになっている割には、メンバー同士が大人の事情で争ったり世間から叩かれたりして、あまりいい雰囲気じゃないし。
ヒーロー物なのか現実社会への警鐘なのか、ちょっと中途半端な感じで、見ている方も辛い。

それに比べると、ブラックパンサーはとっても分かりやすいです。
王子が王になるための試練、親子二代に渡る隠された罪、忠実な部下の犠牲、などなど
とってもオーソドックスなんですが、現在にも繋がる差別問題、持てる国と持たざる国、支援の難しさなども織り交ぜながら、とてもスマートにまとまっていたと思います。
バーフバリも同じようなストーリーですけど、荒唐無稽さが比べ物になりませんね(笑)
マーベルも大概ぶっ飛んでると思ってましたが、バーフバリに比べると、とってもお利口でお行儀がいいです。さすがディズニー。

それに「復讐の連鎖」ではなく「救済の連鎖」になっているのも優しさなのかな。
ティ・チャラの婚約者であるナキアをかばって撃たれた瀕死CIAエージェントのロスを、ワカンダの高度医療で救ったこと、王位継承儀式の闘いの際、はみ出し者の部族長エムバクにとどめを刺ささなかったこと、この二人が窮地に立たされたワカンダ王国を助けてくれるんです。
長年、本来の豊かな国家であることをひた隠しにしていたワカンダにとって、その秘密を知られるのは大きなリスクとなるアメリカの諜報員、また遥か昔から関わりを持たなかった野蛮とされる部族、そういう人とも分け隔てなく向き合えるのが、ティ・チャラ王子の良いところなのでしょう。
父親と叔父とのいきさつを知ってしまい、キルモンガーとの闘いに迷いが生じてしまう。
その事件のきっかけとなった部下の死に取り乱して負けてしまう。
そういう弱さもありますが、彼は心優しい王子ですね。
父である国王は亡くなってしまったから周りにいるのも女性ばかり。

 

気高く優しい母

 

スパイ活動で見分を広げている婚約者ナキアと天才科学者の妹シュリ

 

それに王子の護衛隊は全員女戦士!

 

その隊長のオコエがすっごくカッコイイ!!!めっちゃ強いのーーーー!

 

車だって槍1本で仕留めますよ、ハンパない。

 

ブラックパンサーは、秘伝の薬草でパワー増大してるし、無敵のスーツ着て戦ってますけど、オコエさんは戦士の衣装着てるだけだから。
「私は王家に仕える戦士です。国王が変わればキルモンガーに仕えます…」というのも、カッタッパみたいですよね。
オコエを演じているダナイ・グリラさんは、「ウォーキングデッド」でも大活躍とか。
次回作のアベンジャーズ/インフィニティ・ウォーにも登場するみたいで楽しみです。

キルモンガーは、ティ・チャラにとっては従弟。
父親の復讐のために現れ、王座を奪い、ヴィブラニウムを全世界にばらまこうとするのですが、最期は父親の話してくれた美しいワカンダの夕陽を見ながら息を引き取ります。
ティ・チャラもいつもなら最新医療で助けるのだろうけれど、本人の意思を尊重して死なせてあげるのもまた優しさでしょうか。
ただラストバトルは、暗いトンネル内で二人ともブラックパンサーのスーツを着ているので、ちょっと見分けがつきにくい。

あとはロス役のマーティン・フリーマンがいいですねーー!
最初、コメディな感じは封印して渋いエージェントですけど、だんだんお茶目な感じが出てきて、彼が登場するとなんとなくほんわかして場が和みます。

シビルウォーとかなり連動しているので、また見直そうかな。