祈りの幕が下りる時 | akaneの鑑賞記録

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滋賀県に住む女性が東京都葛飾区で殺され、松宮(溝端淳平)ら警視庁捜査一課の刑事たちが担当するが、捜査は難航する。やがて捜査線上に女性演出家・浅居博美(松嶋菜々子)の存在が浮かび上がり、近くで発見された焼死体との関連を疑う松宮は、その遺品に日本橋を囲む12の橋の名が記されていることを発見する。そのことを知った加賀恭一郎(阿部寛)は心を乱し……。

いや~、前評判通り、とっても見ごたえのある映画でした。
キャストもみんな素晴らしいし、脚本演出も申し分なし。
強いて言うなら、松嶋奈々子の子供時代&娘時代を演じる女優さんに、もうちょっと共通点があると良かったかな、ぐらい。

父親と娘、母親と息子、この親子関係を軸に、様々な人間模様が織りなされていきます。
地道にコツコツと現場で聞き込みを重ねて1つ1つ謎を紐解いていくいつもの手法。
全然派手なところもアクションシーンもありませんが、飽きることはありません。。
少しのヒントも見逃さないように集中し、加賀恭一郎と一緒に、じっくりをなぞ解きをしていく気分。

 

松本清張の「砂の器」を思い出させるようなストーリです。
貧しさ、壮絶な過去、新しい人生を手に入れたもののどこか常に怯える日々、白黒はっきりとは付けられない人の心、色々な思いを背負った人生。
もちろん殺人は決して許されることではないけれど、追い詰められた人間の哀しさなど
そういう鬱々とした思いが静かに心に積もっていく感じでした。
加賀恭一郎も主役ですが、ストーリーテラーの部分もあるので、圧倒的に松嶋菜々子さんがメインですね。
優美な女性演出家としての顔。

そしてあのキムラ緑子を関西弁で追い詰める迫力たるや!

小日向さん、すっごく良かったなー。
40代を演じなきゃいけないので、少々不自然な髪型だったりもしましたが
真面目で不器用で、でも一途に娘を愛し、守り続けるお父さん。
ある人物の人生を乗っ取るのはすぐピンと来たのですが、あくまでもお父さんの考えでやるものだと思っていたので、娘を守るためだったのはかなり衝撃でした。

お父さんは一応旅館でお風呂に入っていたんだね(笑)
幼少期の浅居博美を演じた桜田ひよりさんも、すごく良かったです。

押谷道子役の中島ひろ子さん。

登場シーンは少しですが、いらんことに首突っ込んで自滅してしまうミーハーなおばちゃんを好演。

松宮役の溝端淳平君、演技上手くなりましたね。

アイドルっぽいイケメンですけど、背丈もあるしすごく落ち着いた雰囲気が出てました。

捜査一課のエリートでありながら、嫌みがなく、ほどよい存在感で。
テレビシリーズの頃から出演している印象なかったな~。

最後、松嶋奈々子のシーンは、まさに「幕が降りる」というタイトルにふさわしいエンディング。
実際に明治座の舞台や客席もふんだんに使われていてとても臨場感がありました。
加賀恭一郎の母親失踪の謎も解け、彼がなぜ人形町にこだわっていたかなどもすべてクリアになり、とてもスッキリとした終わり方でした。

エンドロールが流れる中、おせんべい屋の杏ちゃんや香川さん、恵さんなど今までゆかりの人達も登場していて、いかにも完結編といった趣き。

そしてズバッとすべてを断ち切るかのように終わる映像が印象的でした。

 

 

新参者のテレビシリーズは見ていましたが、2010年だったんですね。
前作「麒麟の翼」は見ていなかったので、さっそく動画チェック。
こちらも素晴らしい映画でした。
松坂桃李、山崎賢人、菅田将暉、新垣由衣と今をときめく若手メインでしたが、中井貴一がさすがの存在感で、やはり人と人のつながりや思いを紐解いていく感動的なストーリーでした。
こちらにもキーパーソンとして教師が登場します。
先生が生徒に「自分の犯した罪はきちんと償うこと」を教えなかったから今回の悲劇が起こったんだ!お前に人を教育する資格はない!と加賀が怒るシーン、グサッときましたね。
咄嗟の時には同じようなことをしてしまうかもしれませんから。
生徒の将来を守るためという大義名分を掲げながらも、実際は自分の保身を一番に考えていたかもしれませんし。

 

これで本当にシリーズは終わってしまうのかな?

ちょっと残念です。