吉例顔見世大歌舞伎 | akaneの鑑賞記録

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●鯉つかみ

 

昼の部はどうしても時間が取れず、でも「鯉つかみ」だけは見たくて幕見で。
幕見するのが久しぶりでなんかすっかり忘れていて。
朝一番だから空いているだろうと勝手に思い込んで、早めに東銀座についていたのに、地下でゆっくりコーヒーとか飲んで販売開始時間に上がっていったらすでに長蛇の列!「お立見です」の看板。
バカバカバカ!なにやってんだ私!
まー、通路のところに陣取れたのでよく見えましたけど、やっぱり立ち見は疲れる。

宙乗り、本水と色々仕掛けを仕込んであって、楽しい演目でしたが、もうちょっとストーリー性も欲しかったかな。
前半は踊りが長いな~って思っちゃった。
鯉の精志賀之助 vs 本物の志賀之助 

全く同じ衣装同じ鬘とメイクで同時に一人二役ってのは珍しいですよね。
刀を持っているか持っていないか、でしか見分けがつかないのですが、そのスピーディーな早変わりでもキャラクターの違いがちゃんと出ていました。

本水になってからの早変わりは、衣装なども違うので、代役が複数人いたように見えました。つまり一人は本物、一人は代役、ではなく、舞台上に出ている二人とも代役になっている場面がいくつかあったように思います。それによって、より早変わりが複雑になっていました。
振り落とされた浅葱幕が、袖に捌けるのではなく中央のセリに吸い込まれていったり、宙乗りしている染五郎さんも、中央のセリに消えていくなど、小さなことですが、今まであまり使われていない技法が使われているなと。

ワンピースのアンコールで花道から登場した猿之助さんといい、セリに落ちていく染五郎さんといい、チャレンジャーですよね。
トラウマなんてくそくらえ!ってことかしら。

 

 

さて用事を済ませて夜の部はガッツリと。

 

●仮名手本忠臣蔵

五段目と六段目、仁左衛門様の勘平。
一つ一つの動きも美しく、品の良い勘平。
でもちょっと真面目というか武士の品格を失っていないというか
「色に溺れて人生を失敗する人」ではないような…。
どっちかっていうと「誰かにはめられた」みたいな感じ。
「その濡れ衣を晴らすために、今はこのような状況に身を置いております」ぐらいの。
五段目の勘平って、もちろん討ち入りに参加したいという希望はありつつも、現実的にはお金の調達も難しいし、ご法度の恋愛問題で失脚してるし、実際討ち入りは無理かな~、もうこのまま田舎暮らしでもいいか…って心境なんじゃないかなって。
この段に関しては、やはり菊五郎さんに軍配かな。

 

2015年国立劇場での感想はこちら

 

ちょっとチャランポランしたところあって、状況に流されちゃう弱さみたいなのがありつつ、愛嬌がある。
しかも何もしていないようでいて過不足なく完璧に、勘平の人となりや物語が全て伝わってくるんです。
あっさりしているんだけどものすごく納得できるし感動するという
これこそニンというものでしょうか。演じている回数もダントツでしょうし。

仁左衛門様はやはり大星由良之助です。
判官切腹の時、駆け付けてくれただけで泣ける。
全身全霊で引き受けてくれるあの大きさよ。

そして一瞬ですけど、染五郎さんの定九郎がやっぱり素敵でした!
憎々しくありながら、黒紋付に白い太もも、そこに滴り落ちる赤い血。
これ考えた役者さん、ホント天才だわ。


●新口村

松竹座で仁左衛門様で見た時は、一人二役でしたが、今回はきちんと忠兵衛と孫右衛門は別々でした。
扇雀さんの美しいこと!!!


●大石最後の一日

 

今回はこれが一番感動しました!
以前も一度見たことがあって、まぁちょっと退屈系だったんですけど…

染五郎さんの磯貝十郎左衛門が、本当に20代の若々しい姿でビックリです。
婚約者に悲しい思いをさせないよう、ずっと気持ちを抑え込んでいるんだけど、最後の最後に本心をうちあけ、ほんのわずかな時間だけ二人で愛を確かめ合い、あの世での再会を願う。
涙~~~~。
児太郎君のおみのもすっごく必死でけなげで周りの人もみんなすすり泣きでした。

細川内記の金太郎君。
あの「育ちの良さ感」は、そうそう出せるものではないですよ。
声変わりも進んで、ようやく安定してきたみたいで良かった。
演技というにはまだまだ、って部分もありますが、セリフや動き、全てに心を配って、きちんと教えられたとおりに一生懸命やっている姿。そして少しずつ自分らしさも出せるようになってきているなと思いました。
浅草組の若手たちも10代の頃はまだまだでしたけど、たくさんの舞台を経験してどんどん成長していますもんね。
これからが楽しみです。

荒木十左衛門。
これこそ仁左衛門様!と申しましょうか。
静かにそして最大の敬意を持っての使者の役目。
彼の心の中にもいろいろな思いがあるのだろうな、とまで思わせる思慮深い佇まいでした。