スーパー歌舞伎II ワンピース | akaneの鑑賞記録

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歌舞伎や演劇、映画、TVドラマなど鑑賞作品の覚書

 

2015年新橋演舞場での初演、2016年松竹座と見て、今回は「麦わらの挑戦」を見たいと狙ってゲットしたチケットでしたが、図らずも、このような事態になってしまって…

オープニング、勘九郎さんのナレーションの後、あの音楽が流れるだけでもう涙が零れました。
1回目はとにかくビックリ、2回目はもう楽しくて楽しくて。
そして3度目の今回は、感動で泣ける。
演出はどこが変わった、と指摘できるほどわかってないんですが、それぞれのシーンがとてもバランスよく、一切中だるみすることなくちょうどよい配分で進んでいくのが素晴らしかったです。初演の時はまだ少しもたつく部分もあったと思うので。
猿之助さんの演出能力、凄いですね。

猿之助さんのルフィはやはり技量で見せている部分もあり、よく組み上げられたお芝居、という楽しみ方ができましたが、若い4人が引っ張っていくストーリは、そのまま彼らの成長物語でもあり、全キャストが強い絆によって結ばれ、1つの舞台を作り上げていく様が否応なく感動を呼びます。
石橋直也さんも大病をなさったのに、しっかり復帰していてそれもまた…涙。
まさに彼らキャストもみんな、ワンピースという船に乗って航海しているかのように思えてきます。

右近さんのルフィは、少年そのものの元気さをふんだんにアピール。
素直に弾ける若さで。
普段女形も多い右近さんは、やはりハンコックの方がしっくりくる感じ。
落ち着いた女主人というよりは、結構お茶目なキャラもあって可愛い。
ちょっと声が辛そうな感じもありました。

精神的にも肉体的にもあり得ないほどの負担を背負っていたでしょうね。
巳之助君と隼人くん、この二人はもうワンピースの世界にかかせない存在になりました。
どのキャラクターもしっかり自分のものにしていて、もはや代わりのキャストが考えられないぐらい。キャラクターの演じ分けもさらに明確になって、貫禄を感じるほどでした。
慎吾君は初めての参戦ですが、ほっそり美人さんだしサディちゃんはとっても生き生きしてました。


そして何より感動したのは、第1幕は笑三郎さんが、第2幕はイワンコフの浅野さんが、第3幕は右團次さんがしっかりと芝居を支えていたこと。
笑三郎さんのユーモアのある温かさ。
あのハチャメチャなファーファータイムまで盛り上げていく浅野さんの独壇場。
白髭海賊団が回り舞台でせりあがってくるだけで興奮しますが、ずっと最後まで彼らを父親のように包み込み、守り抜く姿が本当に大きく見えて、感無量でした。
まさに右團次さんの包容力とお人柄が伝わってくるようで。


猿之助さんは本当に悔しい思いをしたと思いますが、2年目ですでに自分が出なくても作品が独り立ちして完成しているのは素晴らしいことです。

若手メインの回を作っていたことも先見の明。
一歩間違えれば命にかかわるような大事故で怪我をなさったことは、本当にショックでしたが、もはや怪我の功名どころか、通常公演を上回る成果を上げているように思います。まさに転んでもタダで起きないと言いますか、猿之助さんのオーラの強さ、人徳、みんなの思い、全てが集約した舞台でした。

若い4人が誇らしげに並んでセンターに立つカーテンコール。
素晴らしかったよ!