中川右京「アニメ大国建国記」読む 「金の生る木」のアニメに群がった大人達と天才・手塚治虫の記録
ランク Aの下~Bの上1963年の手塚治虫「鉄腕アトム」の TVアニメ放送から始まった 日本のアニメ界盛衰史と アニメに魅入られ、 金儲けと芸術の相克と、 必死に格闘した 人間達の記録です。副題 「1963~1973 テレビアニメを築いた 先駆者たち」ほぼ、同時代に生きた私には、 懐かしいアニメ番組の裏に 多くの人間達の競争、確執、裏切り?が 渦巻いていたことを 初めて知りました。この本を読めば分かりますが 戦後の漫画界、アニメ界を動かしていたのは 天才・手塚治虫であったことを 痛感させられました。 「手塚治虫の前に、手塚治虫は無く 手塚治虫の後に、手塚治虫は無い」60歳で亡くなった手塚治虫の 墓碑銘のような本です。ディズニーアニメ → 東映アニメの 映画館上映アニメから 手塚治虫は、一気に、 毎週放送のTVアニメ「鉄腕アトム」を 世に問います。 (それまでは、TVコマーシャルアニメが アニメ業界の中心でした)手塚治虫は、採算を度外視して 赤字覚悟でTVアニメを始めます。 (本業の漫画で稼いだお金を 「鉄腕アトム」放送につぎ込みます)多くの漫画、アニメ好きの若者が、 「鉄腕アトム」に集まり その後の、日本のアニメ界の躍動の 原動力となります。この時、一つの都市伝説が生まれます。 「アニメ業界が低賃金なのは、 手塚治虫が『鉄腕アトム』制作費を 安く請け負ったためである」 (放送局が払うアニメ制作費用を 手塚治虫が安く請け負ったためだと・・・)この都市伝説の経過を、 この本で、明らかにしますので、 是非読んで下さい。 (ひょっとしたら、著者は この都市伝説のカラクリを 明らかにするために この本を書いたのかもしれません)子供向けのアニメなのに 多くのアニメ制作会社、放送局、漫画家 スポンサーお菓子会社などの大人たちが 入り乱れ、群雄割拠して 日本のアニメ界は成長していきます。この本には、多くの人物、会社名、作品名が 登場し、読んでいて混乱することもありますが アニメに賭けた情熱が、伝わってきます。つまり、アニメは、今も昔も 「金の生る木」だったのです。我家には1台しかテレビがなく、 地方都市だったために、NHKと民法1局だけしか 見られませんでした。アンテナを立てると、他局も見られるのですが 映りは悪くて、まともに見ることはできませんでした。そして、なにより、テレビのチャンネル権は 私には無かったので、満足に アニメも怪獣番組も 見ることができませんでした・・・トホホ。映画館で上映した東映動画長編映画は 貧しくて毎回は観ることはできませんでした。ゆえに、この本に登場するテレビアニメ、 東映動画映画を 見たり見なかったりでした。漫画月刊誌は買えず、漫画週刊誌も、 サンデーは読んでいましたが マガジン、キングは 遊び仲間で回し読みを するぐらいでした。地方都市の私のような子供たちが 貪るように漫画を読み、 そのTVアニメを観ていた裏で 大人たちの悪戦苦闘が あったことを教えられました。漫画に魅せられ、ヒット作を求め 一方では、商業主義に踊らされずに 作りたいもの、芸術性が高いものを 目指した人間達が描かれます。この本を読んで、漫画、アニメにのめり込む 原動力は何だったんだろうか?です。多くのものを失った敗戦後の日本で、 自由になった子供たちにとって 手軽な最初の娯楽が 漫画だったのでしょう。そして、天才・手塚治虫こそ 敗戦後の、子供達の最初のヒーロー ということになったようです。漫画の面白さ、表現の自由さ、 奇想天外の物語展開と 貧しさの中に、希望を与えてくれたのが 手塚漫画といえるようです。この本を読んで、 文字より、ヴィジュアルに目覚めたのは 世界で一番早かったのは、 日本だったような気がします。この本で教えられたことに SF分野が、漫画やTVアニメで 認知され、成長したと言うことです。多くのSF作家が、TVアニメの脚本から 一流の小説家へと飛躍していったことです。 (この本を読んで驚いたことは 多くの関係者、脚本家が 毎週、毎週、シナリオのアイデアを 量産していたことです。 プロ根性には、恐れ入りました)子ども文化は、B級歴史扱いですので 記録されることは少なく、 アニメ創成期を記録したこの本は とても貴重です。この本の時代を生きていない人には この本の面白さを 理解できないかもしれません。それでも、この本に登場する人物たちは 魅力的で、人間性に溢れ、人間臭く、 ドラマチックに生きています。 ゆえに、この本で 映画、テレビドラマを制作できます。 (どこかの会社が制作しないかなあ・・・。 この本にもタップリ書かれていますが お菓子会社も、TVアニメ番組で 大儲けをしているし・・・嗚呼)最後に、TVアニメ番組と言えば 戦争アニメ「決断」が、 私にとって一番の思い出となっています。私の父は、戦前、戦中、戦後と 教師をしていました。子供の頃からミリオタだった私が 「決断」を見ていました。仕事から帰った父が 突然、有無をも言わせず、 テレビの電源を切りました。この時の、怒りと言うか、悔しいというか、 父の複雑な表情をして、立ちつくした姿を 何十年もたった今でも憶えています。 (父は、軍隊に行きましたが 戦場へは入っていません。 父は、教え子を戦場へ送り出しました。 その時の教師時代を 一切語らず、亡くなりました。 ファミヒス記事に書いてますので・・・)多くの人間が登場し、錯綜し テレビ会社、スポンサーのお菓子会社 海外映画会社を巻き込み 数多くのアニメが制作された ダイナミックな事実を 実に、著者はよくまとめ、読み易く 書いています。著者の文章力の成せる業の本です。漫画、アニメ好きは、必読の書です。現在のアニメ界のルーツが分かる本です。この本のエピローグに書かれていますが 宮崎駿が、手塚治虫が亡くなった時に あえて?手塚治虫批判を述べました。越えなければならない(越えられない?) 天才巨人・手塚治虫の偉大さを 語っているのかもしれません。この本は、手塚治虫に 捧げられた本だと思います。