田中登「女教師(日活1977)」 TV2時間ドラマの原点 学校教育問題を批判した社会派ピンク映画
ランク Bの上女性音楽教師のレイプ事件から 関係者や学校が翻弄されていくという 教育問題を取り上げた社会派成人ピンク映画です。 教師、学校、教育問題を取り上げた 真毛色の変わった、面目な?成人ピンク映画となっています。清水一行の小説を原作とした、日活ロマンポルノ作品です。清水一行は、貧しい複雑な家庭で育ちます。父親は、大工だったのですが、再婚相手の関係から 東京・玉ノ井で娼家(売春宿)を始めます。小学校でいじめを受けながらも、鉄道学校卒業し、 早稲田大学法学部を中退することになります。敗戦後、共産党員となり活動するが 1952年の血のメーデー事件で、党と決別する。実際の企業や経営者をモデルにした 経済小説、ミステリー小説で人気作家となる。この映画は、学校教育や問題教師を取り上げて ミステリー仕立てになっています。事なかれ主義優先の学校、教育界を 強烈に批判している作品です。旅行会社と修学旅行担当教師との癒着、 保護者と教師の不倫や付け届けなどは 私のまわりでもよく話がありました。また、この映画の問題教師が、ほとんど生徒教育より 自分本位で生きるさまなど、さもありなんです。この映画が製作された1970年代から、 学校や教師への信頼が崩れ始め、 教師像の神格化も失われていきます。まあ、昔も今も、人間の道徳性の進歩なんか なかったとは思うので、1970年代からは、 学校教育の閉鎖性が、マスコミ報道の大衆化によって 壊れていく時代を、この映画は象徴しています。何といっても、私の父は、中学校長だったので、 教師の多面性を身近で知っていました。学校における不祥事の隠蔽、事なかれ主義は、 教育委員会を含めて、ごく普通のことです。レイプなど重大事件は、被害者人権重視から、 公にならないのが、当たり前でした。この映画のように、被害者である女教師が 警察に訴えようとするなどということは、 現実にはあり得ないです。この意味では、この映画の非現実性が 歴然と存在しています。レイプ事件後に続く、引き起こされる大事件も ありえない設定となっています。つまり、この映画は、学校を舞台にした、 大人のエンタテイメント映画となっているのです。セックスシーンが無くても、娯楽作品として 成立する内容でもあります。原作を読んでいないので、どこまで、原作を脚色しているかは 判断できませんが、少し誇張された、荒唐無稽なストーリー といえる作品です。むしろ、セックスシーンを外した映画にした方が もっとすっきりした娯楽作品になったと思います。まさしく、TV2時間ドラマの原点のような作品です。特に、オープニングのピアノ演奏シーンなんか、 典型的な演出で、ここまでやるのかと、あきれるほどでした。ただ、1970年代ですので、このTV的演出方法が 一般的でなかったのかもしれないので、当時は、案外、 斬新な演出だったのかもしれません。何といっても驚いたのは、この脚本で、 学校撮影がよくできものだと、感心しました。現代なら、まず、学校撮影は許可されないでしょう。また、当時の国鉄(JR)の新幹線で撮影できたのは 映画が、世間から強く支持、認知されてたためでしょう。この新幹線シーンを見て感じたのは 黒澤明「天国と地獄」の特急列車シーンへの オマージュではないかと思いました。ベテラン俳優陣で、固めた映画です。ヒロインは、日活ロマンポルノ映画デビューをした 永島映子です。 この映画で、エランドール新人賞を受賞します。難しい役どころで、心の動揺や感情の起伏を 上手く演じています。この後、映画TVで、演技派女優として 日活ロマンポルノ界を越えて、 「渋い女優」として活躍します。いけ好かない不道徳教師を演じるのが 1932年生まれの、名脇役の砂塚英夫です。小狡い悪役を演じさせたら、日本有数の俳優です。日本大学で歌舞伎研究会に入るなど歌舞伎通です。映画TVで大活躍し、特に岡本喜八監督のお気に入りでした。この映画でも、教育観など否定する自己保身と 欲望のままに生きる教師を、いやらしく見事に演じています。味方によっては、この教師は、 自分に正直に生きていたとも言えます。あえてゆうなら、セックスシーンに ぎこちなさがあるような…。私の大好きな女優・絵沢萌子が 中年女性の色気を存分に発揮しています。色気ムンムンの熟女を演じさせたら、 日本一二の女優です。画面から色気がはち切れそうになります。1935年生まれで、中学時代から女優を志し 関西学院大学英文科の卒論では、「テネシー・ウイリアムズ」を 取り上げているインテリです。大学卒業後の会社務めをしながら、演劇を続け、 劇団四季に合格したが、新藤兼人監督「弱虫女と弱虫男」で 映画デビューをする。この映画では、中学生の息子を溺愛する母親役を 画面いっぱいに色気を振りまいて 事件の関係者を圧倒します。日活ロマンポルノでは、欠くことのできない女優となり、 演技力の幅広さから、映画TVで活躍します。数いる女性名脇役の中で、ヌード、裸を厭わない、 確固たる地位を確立した名女優です。豊満な肉体を惜しげもなくさらしながら シーンを支配してしまう印象深い演技で 他の俳優を圧倒します。レイプ犯となる中学生を演じたのは 古尾谷雅人です。1957年生まれで、川崎の旧家に生まれますが 両親の離婚、継母関係で悩みます。靴メーカーに勤めながら、劇団活動をはじめ 日活ロマンポルノでデビューします。5歳年上の日活女優鹿沼エリと結婚し、 田中登監督の映画への出演が続きます。役へののめりこみ、父親の遺産問題、仕事の悩みなどから アルコール依存、妻へのDV、鬱状態になり、45歳で自殺します。妻の鹿沼は、古尾谷が残した借金で苦労し続けます。この映画の中学生役には、多少、年齢的に無理がありますが 屈折した少年の心情を、真剣に演じています。この役柄同様、心の陰のある役を演じる時が 演技が輝いています。俳優業に真面目に取り組み過ぎた悲劇だったのかも しれません。この映画に登場する教師の中で、 正義を貫こうする教師を演じるのは、山田吾一です。 1933年生まれで、北海道から俳優を志して 上京します。1958年TVドラマ「事件記者」の記者役で 人気を得て、TV映画で、名脇役で活躍します。この映画では、正義を貫こうとする教師を 堅実に演じています。若い頃の樹木希林もワンシーンながら 出演しています。監督の田中登は、地味なベテラン俳優を揃え 学校のリアル感を追求しています。1937年生まれで、明治大学卒業後 200倍以上の競争率で、日活演出部に入社します。フランス映画好きで、日活ロマンポルノで 監督デビューします。日活ロマンポルノ、TVドラマで活躍します。この映画を観て思ったのは、 韓流映画の匂いを感じました。アクションありのテンポの良さで、 ストーリー展開をどんどん進めていくところです。現代なら不可能な、野外や町中、公共交通機関で、 ロケ撮影を自由?にできた70年代の映画です。監督が、思う存分に撮影できてこそ 良い映画が生まれます。教育問題が、社会問題化してきた時代に ピンク成人映画が、大胆に教育問題を映画化した 特異な意欲的な作品です。俳優たちも真面目に、真剣に演じています。エロ、暴力、サスペンス、教育問題などを 詰め込んだ作品です。新幹線のシーンが、一番印象に残りました。でも好きなのは、絵沢萠子なんだよなあ…嗚呼、トホホBS放送 WOWOWプラスの深夜放送で観ました。チャンスがあれば、ご覧下さい。ご家族で観るときは、ご注意下さい。