大映「濡れた二人(1968)」観る 若尾文子の若妻色気の妖艶さが際立つ 日本ニューシネマの源流
ランク Bの中~Bの上倦怠期の若い夫婦の妻が 伊豆の漁村で起きたアバンチュールから 一人で生きる道を歩みだす 大人のメロドラマです。女盛りの若尾文子の色気に 圧倒される映画です。 (ヌードシーンがありますが 吹き替えのはずです)吉永小百合が、いくつになっても、 女と、女の色気を演じることが 出来なかったかですが、 若尾文子は、天性の美貌だけでなく 演技力の高さで、観客を 虜にしてしまいます。女の色気を演じさせたら、日本でも トップクラスの女優です。 (建築家・黒川紀章が、離婚してまで 万難を排して、若尾文子との結婚を 貫いたのも、分かるような気がします。 作家・井上ひさしの自伝的小説 「青葉茂れる」のヒロインは、 若尾文子のようですが 若尾文子は否定しています)この映画の素晴らしいところは 男女の大人の恋の機微、葛藤、愛憎を、 描いているところです。伊豆の漁村で起きた3日間?の火遊び?を 無機的な?風景の中で、大胆に描いています。北大路欣也が相手役なのですが 育ちの良さを隠し切れなくて 野性味が少ないのが、残念でした。漁師の男というものを、 私はよく知らないのですが、 「海の男」イメージが強すぎて 北大路欣也には、向いていない キャラだったのかと思いました。この映画で、若尾文子をおいといて 最も、上手い演技をしたのは 元女中役を演じる町田博子です。前半と後半の豹変ぶりの演技には 驚かされるだけでなく 日本の狭い村社会の掟を 体現していました。自己主張を曲げない恋敵役を演じた 渚まゆみは、美人を輩出する秋田出身で 作曲家浜口庫之助と 27歳差で結婚をしています。監督・増村保造は、三島由紀夫の 東大法学部の同級生で、卒業後に 大映に入社します。若尾文子や勝新太郎の監督をし、 ヒット作、話題作を連発し、 映画界の斜陽後は 大映TVドラマシリーズで活躍します。成瀬巳喜男、今井正などの 私小説的、小市民的、自然文学派的な 映画を批判します。映画は、作り上げるものという 信念があったのかもしれません。この映画の風景も、美しいだけではなく 無機的な、冷酷さを感じさせられます。少ない登場人物による演劇的な作品です。人間の情念の不完全さを描いていながら 女性の強さ、自立、性の解放を 描いているので、フェミニズム映画とも いえるかもしれません。若尾文子の衣装も、 この映画の魅力の一つです。オートバイでヒロインたちを 何度もグルグルとしつこく回るシーンは、 迷いながら生きる人間の弱さであり この映画のテーマを象徴している のかもしれません。この映画は、この後に始まる 日本ニューシネマの源流といえます。ヒロインのラストシーンは、 新旧映画表現の転換点と 言えるかもしれません。是非、ご覧ください。隠れた渋い秀作です。youtubeで観ました。