韓国映画「グッドニュース」観る 愚直に生きるしかなかった若者たちを描く笑えないパロディ映画
ランク Bの上~Aの下よど号ハイジャック事件の 政治的パロディ、コメディ映画です。政治的パロディ映画を楽しむには その国を知っておかねばなりません。日本人である私には 韓国社会を知っているわけではないので この映画のパロディを 十分に楽しむことが 出来なかったというのが事実です。たくさんの皮肉、風刺が込められているのは 何となく分かるのですが、 笑うのが難しかったです。それでも、いくつかのシーンでは 大笑いをしました。日韓の演技力重視の 豪華キャストでハイジャックの ドタバタを描いています。この映画に好感がもてるのは 韓国語、日本語のセリフを 明確に使い分けていることです。日韓の言語コミュニケーションを 誤魔化すことなく、日韓の俳優に 会話させていることです。日本人は日本語を、韓国人は韓国語を 会話するときは、その場の言語を 俳優たちに話させているところです。この結果、日韓の立場の違いや齟齬 事件のリアル観、臨場感を 生み出す効果を高めています。時代考証にお金をかけた作品に 駄作は少ないです。この映画もタップリ、時代考証に 力を注いでいるので、 事件当時を知っている私には 懐かしく映画を 楽しむことが出来ました。 (日韓の映画力の差を 痛感させられました。 日本映画界の貧乏性ですが…トホホ、嗚呼)ただ、ハイジャック犯が、 マシンガンを持っていたのには 驚きました。ここは猟銃でしょう!パロディ、コメディ映画は とても難しいです。笑いのツボが、万人共通でないからです。政治家、政府をパロディにすると その関係者は気分を害します。つまり、パロディ、コメディ映画は 必然的に政治的、社会派映画の 要素を持つことになります。この映画も、政治的、社会批判的 メッセージの塊です。KCIA、日韓関係、米韓関係、宗教問題など 批判と皮肉だらけです。ハイジャック映画の傑作に コロンビアドラマ 「ハイジャック FLIGHT601」 があります。このコロンビアドラマと比較すると パロディ化の違いがよく分かります。笑いは、理屈ではなく、 感情だということです。この映画は、理知的遊びが多く、 一般受けが難しいといえるのです。知識がないと笑えないということです。その点、「ハイジャック」は 知識がなくても、タップリ笑えて、 パロディを楽しめるのです。娯楽の基本は、泣き笑いです。よど号事件を映画化するなら コロンビア「ハイジャック」を 参考にして、シナリオ化すれば 傑作にできたと思ってしまいました。演技派俳優、個性派俳優をそろえて 灰汁の強いキャラを 演じさせている分だけ 惜しい気がしました。この映画で違和感を感じた理由の一つは 飛行機内のドラマに笑いがなく 飛行機外で、笑いを作ったことです。このギャップで、映画の統一感、一貫性が 失われたことのように思いました。素材をいかようにも料理できる よど号事件です。笑いのツボの計算違いを したのかもしれません。と、悪口を書いてきましたが 映画自体はよくできています。人間が、利害関係で生きていくのを たっぷりと描いています。責任回避、責任の擦り付け合いで 生き残ろうとする人間たちの 醜悪な姿を、観客に 見せつけています。日本人と韓国人が、 似た文化的、社会的背景を 持っているという現実も この映画でよく分かります。 (なお、日本が朝鮮併合した後 日本の官僚システムを 韓国社会に根付かせた事実があります。 敗戦後の米軍の韓国進駐軍も 日本官僚システムを温存し 韓国占領支配を続け、 現在に至っています。 北朝鮮は、徹底的に 日本官僚システムを破壊し ソ連型官僚システムを 導入しました。)日本同様、韓国も航空管制が 米軍下にあることがよく分かりました。共産主義に夢があった時代です。共産主義国家が崩壊し、 エセ共産主義独裁国家 の時代となりました。この映画の時代の 純粋に?共産主義を信じた若者の姿を 真面目に描いていたのには 驚きました。ハイジャック犯や管制官のような 愚直に生きる若者への シンパシーを感じました。この映画のような 政府批判、社会批判の映画を 作ることが出来る韓国映画界が 羨ましいです。今の日本社会は、政治パロディ、 社会批判コメディを、 抹殺しようとしています。言論の自由は、笑いが原点です。ロシアに多いという政治小話に 政府批判の原点があります。昭和には、政治パロディが TV、ドラマ、映画、寄席で 普通にみられました。今の日本には、失われました。この映画を観て、 政治パロディが作られる 韓国が羨ましいです。このような映画を作る韓国の 映画力は力強いです。「国宝」は頑張っていますが、 芸能界の世界です。日本も政治を舞台にした パロディ映画を作ってほしいと思いますが 見果てぬ夢になりそうです。是非、この映画を、ご覧ください。日本映画界が失ったエネルギーに 満ち溢れています。ネットフリックスで観ました。最後に、この私のブログの 記事「北朝鮮旅行記」をお読みください。ピョンヤンのホテルに よど号事件の赤軍派3人との 出会いを書いています。また、帰国後、日本の公安警察との 顛末を書いています。お読みください。