久しぶりの更新です。

今日ラジオ番組を聞いていたら評論家の宮崎哲弥さんがヒトラーと当時の経済情勢について語っておられました。

私もちょうどイギリスの歴史家イアン・カーショウのヒトラーという1000頁もある伝記を少しずつ読んでいて、ようやくヒトラーが政権を獲得したところまで到達したので、当時のドイツの経済情勢について書いてみたいと思います。

ワイマール共和国の経済的危機は最初にドイツが戦後賠償を払えないためにフランスがルール地帯を占領したところから始まります。

この時にルール工業地帯でドイツ人労働者がストライキを起こして生産が停滞した上にドイツ政府が無責任に財政を拡大させたためにハイパーインフレが起こったことは有名です。

この時にヒトラーが何をしていたかというと、ちょうどドイツ南部のバイエルン州のミュンヘンで「ミュンヘン一揆」というクーデターを企てていたのです。

しかし、このクーデターは失敗してヒトラーは投獄されることになります。この投獄中にヒトラーが『我が闘争』を書いたことは有名ですが、ヒトラーは獄中で政権を取るためには合法的な手段でなければならないと珍しく反省しています。

そして1929年アメリカで世界恐慌が起こると、アメリカからの投資に依存していたドイツも巻き込まれ、今度はデフレと失業の拡大といった事態が引き起こされます。

そしてこの異常なデフレの時にヒトラーは合法的に政権を奪取してしまうのです。ヒトラーの政治活動と経済情勢には密接な関係があるように思われます。

アメリカのクルーグマン教授などもよくデフレがヒトラーを登場させたと強調していますが、今回ヒトラーの伝記を読んでわかったことはドイツがハイパーインフレの時にクーデターを企てて投獄されていたことでした。

日本がようやくデフレから脱出するために財政を拡大するとハイパーインフレになるという経済評論家がいますが、ドイツの歴史からは随分ずれているというのが私の認識です。
今回の参議院選挙において与党が優勢を保ったことで、安倍総理はさっそく経済対策を指示しました。

[東京 11日 ロイター] - 安倍晋三首相(自民党総裁)は11日午後、参院選の結果を受けて党本部で記者会見した。会見では、石原伸晃経済再生担当相に対して12日に経済対策の取りまとめを指示するとしたうえで、ゼロ金利環境を生かした財政投融資の積極活用も併せて表明。内需拡大に向けた対策の取りまとめを急ぐ方針だ。

緊縮しか頭にない財務官僚を抑えるためには与党が選挙で勝つしかありません。

では、改憲勢力が参議院の2/3に達したことで、安倍総理の念願である憲法改正は達成できるのでしょうか。

私はこれに対しては否定的です。

なぜなら、公明党が本当に憲法改正に賛成しているかどうかはっきりしないからです。

さらに公明党よりも決定的な要素が存在します。

それはアメリカの態度です。

これまで安倍政権によって決められた特定秘密保護法や集団的自衛権といった日本のリベラルから評判の悪かった政策は基本的にアメリカが従来から望んできたものでした。

アメリカがこれらの法案に反対しなかったから、安倍総理は国内に多少の抵抗があってもそれを通過させることができたのです。

ところが憲法改正の場合は簡単にアメリカは賛成しないでしょう。

民主党系の戦略家であるジョセフ・ナイは以前から日本の憲法改正に対しては批判的でしたし、共和党系のリチャード・アーミテージも以前は憲法改正に対しては好意的でしたが、最近では口を濁すようになっています。

アメリカにとって日本が憲法改正してしっかりとした独立国になるよりも、現在の状態でアメリカに依存したまま集団的自衛権を使ってくれる方が都合が良いのです、

いくら改憲勢力が2/3を超えても、アメリカが反対したら憲法改正は難しいでしょう。

これが戦後日本の正体なのです。
アメリカの日本研究者であるトバイアス・ハリスさんはブログで次のように書かれています。

「結局長期にわたって政治が安定するため、または有効な政策を作るためには日本において有力な2大政党の競争が欠かせない。」
http://www.observingjapan.com/2016/07/japans-upper-house-elections-question.html

日本が衆議院の選挙において小選挙区制度を取り入れてから、彼の主張するようなことを目標にやってきたわけですが、どうもこれまでうまくいったとは私には思われません。

なぜうまくいかなかったのかを理由を考えると、日本において政策を作ってきたのは政党ではなく官僚だという事実です。

以前に取り上げたこともあるフランシス・フクヤマの新刊でも「強い官僚制」は必要だけれども勝手に国家目標を作ることには否定的で、その例として帝国陸軍が行った満州事変について書いていました。

官僚が「勝手に国家目標」を作るという例は現代の日本にも受け継がれており、その例が民主党野田政権の時に起きた消費税増税を決めた三党合意です。

このような重大な問題を決めるのにほとんど国会で消費税増税について議論が行われた形跡はありません。

日本のような強い官僚制で2大政党を作ってしまうと頭の良い官僚が分割統治(divide and rule)を行い自分勝手な政策を作りかねないのです。

それが3党合意の正体でした。

ゆえに日本においては官僚の暴走を許さないためにも力のある政権党は必要であり、2大政党では官僚を抑制することはできないのです。