韓国の『中央日報』に気になった記事があったので、貼り付けておきます。

ーーーーーーーーーーーー

「このままでは日本のようになるのでは」。1990年以降の約20年間、日本経済は嘲弄の対象だった。 世界各国は経済が傾くと、日本式の長期不況と国家負債を心配した。 「日本化(Japanization)」という新造語まで出てきた。 日本は似ないのが上策の「反面教師」だった。

しかし最近は言葉が変わっている。 日本は学ぶことが多い「他山の石」論だ。 グローバル金融危機の発生から4年目だが、欧州の状況は悪化し、米国と中国の経済までが下降している。 今後、グローバル経済は日本のような長期不況を避けるのが難しい見込みで、日本政府が行った財政投入がまだ最善の処方という考え方だ。 ポール・クルーグマン米プリンストン大教授とマーティン・ウルフ英フィナンシャルタイムズ(FT)コラムニストがこうした主張をしている代表的な人物だ。 2人は最近の対談で、「日本に謝罪したい。 今のグローバル経済は過去の日本に劣らない状況に陥っている。 日本のようになればまだ幸いだ。 日本をロールモデルとしなければならない」と話した。 2人の話に共感する人が増えている。

整理するとこうだ。 一つ目、グローバル経済の現状況は、金利を下げて流動性を拡大供給する処方ではとうてい収拾できない。 1929年の大恐慌後、最悪の資産価値崩壊を迎えると、企業と家計は政府はいくら低金利で資金供給を増やしても、これに背を向けて負債の縮小に没頭した。 いわゆる「流動性の罠」だが、1990年代の日本経済がまさにそうだった。

二つ目、それでも日本がバブル崩壊前の国内総生産(GDP)を維持し、0-2%の緩やかな成長を続けたのは驚くべきことだ。 当時、日本の商業用不動産価格は80%以上も暴落するなど、バブル崩壊の様相は大恐慌に匹敵した。 企業は投資をやめ、家計は消費を減らした。 それでも日本経済が奈落に沈まなかったのは、政府が財政投入を通じた成長促進策で総力対応したからだ。 企業や家計の立場で自分の所得は誰かの支出によって創出される。 ところが誰もが負債を返済するとして一方的に支出を減らせばどうなるだろうか。 経済沈滞の悪循環は明らかだ。 こうした危急な状況に対抗できるのは政府だけだ。 日本政府はこうした正答を実践し、所期の成果を上げた。 国家負債がGDP比で60%から220%に上がったが、成果に比較すれば貴重な犠牲だった。

現実に戻ってみよう。 いまユーロ圏では企業と家計に続き、政府までが緊縮に入っている。 ドイツが主導する財政健全化要求の前で、日本式の経済浮揚論は背を向けられている。 米国も年末の大統領選挙を控え、オバマ大統領の財政拡大構想に共和党が反対している。 中国が先日、政策金利を引き下げたが、財政カードは今もためらっている。 成長促進のためのグローバル協調が出てこない限り、市場は空転を続ける公算が大きい。 各国政府は市場がより深刻な恐怖局面になってこそ、やむを得ず動き出す雰囲気だ。
ーーーーーーーーーーーー

クルーグマン教授の新刊で、最初の部分で強調していたのが、「誰かの支出が、自分の所得」という問題でした。

経済が成長するためには、誰かがお金を使わなければならないのです。

この点から見ても、野田首相の増税は変なのです。

イギリス人であるGideon Rachman という人が、Financial Times にドイツ人に少しばかり同情して次のように書いています。

「1930年代のようにスペインの出来事は、ヨーロッパの運命を握っているようだ。もうすぐにケインズ主義を標榜するエコノミストの集団がカタロニアに到着するだろう。そして、ドイツはもう一度悪者にされるのである。もちろん、戦後のドイツの民主主義に対して誰も疑問をもっていない。ギリシャの末端の新聞がヒトラーとメルケルを比較しているだけである。しかし、世界の紙面から見えるのは、頑固なドイツ人が世界を脅かしているという姿である。今週のエコノミストのカバーは、世界経済が沈む中で『メルケル首相次第だ』というものであった。」

クルーグマン教授の新刊でも、ドイツの緊縮財政を批判しています。ヒトラーを産んだのは、1920年代のハイパー・インフレではなく1930年代のデフレだと書いて、ドイツは3ー4%のインフレにしなければならないと言うのです。

しかし、そもそもドイツはマルクを捨ててユーロに乗り換えることに熱心ではありませんでした。

ちょうどこの時期、冷戦が崩壊してドイツの統一が問題になります。英国のサッチャー首相とフランスのミッテラン大統領が強硬にドイツ統一に反対するのです。

そこで、ドイツのコール首相は、ミッテラン大統領と統一ドイツとユーロ導入の交換の約束を結ぶのです。

果たして、ユーロの失敗をドイツに帰すのは、私もRachman のように少し気の毒な気がします。
クルーグマン教授の最新刊 End This Depression Nowをようやく読み終わりました。

現在日本の政府の負債はGDPの200%を超え、このままではハイパー・インフレになってしまうという識者がいます。

アメリカでも、このまま財政赤字が拡大するとジンバブエや1920年代のドイツのようになると脅かす人がいるようです。

そのような人たちに向かって教授は次のように答えています。

「企業が商品の価格を上げるのは、マネー・サプライが上昇したからではない、彼らの作る商品の需要が上昇したからだ。」

これを短くして、No boom , no inflation.、と書いてあります。

つまり、景気が加熱しなければ、インフレなどなりようがないというわけです。

ところが、現在の金利は日米ともに0近辺に張り付いているのですが、誰も作った以上のモノを買わないのです。

このような場合は、政府支出の増加で対応するしかないと教授は書いています。

さらに、ハイパー・インフレ論者の矛盾点を教授は指摘しています。

つい最近、10年モノの日本国債の金利が9年ぶりに、0.8%を下回ったというニュースが出ていました。

マーケットは、全然ハイパー・インフレを予想していないわけです。

ところが、ハイパー・インフレ論者はいいます。「今、増税しなければ、いずれ銀行は日本国債を大量に売り出すだろう。そうすればマーケットで金利が暴騰して終わりだ。」

このような人に対して教授は、「マーケットの期待に添う政策をうたっておいて、現実のマーケットを無視するのはおかしい」と幾分皮肉をこめて書いています。