小学生の頃からの友人。
その友人によって、どんどん人生を変えられていった男が、
最後に抱いた真の殺意。
物語の中核はそこにある。
「白夜行」のように、物語は主人公が小学校時代から
順々に時系列を追って進んでいく。
最初はよくわからない。ぼんやりと風景が描かれていく。
主人公の田島和幸を巡る出来事。
物語の途中で、不幸になっていく分岐点がいろいろある。
そしてその分岐点には、必ず倉持修が関わっていた。
確かに倉持が田島を陥れていったのは事実だ。
だけど、田島にも、それを回避することはできた。
田島が不幸になっていったのが、倉持だけのせいとはいえないと思う。
しかしながら、結局のところ、田島の性格さえ読んで、
巧妙にわなを仕掛けていく倉持は、一種の天才なのかもしれない。
倉持には、裕福な歯科医の息子だった田島に、
強烈なコンプレックスを持っていたのだ。そして、
ある種の憎しみも持っていたのかもしれない。
物語の最後で、倉持が師と仰ぐ人物が田島に言う。
「人生には捨石が必要なんだ。
だけど、この捨石には、条件がいる。
それは、自分が最も信頼を置いている人物であるということだ。
そして、皮肉なことに、彼にとっての唯一の友人とは、
その捨石に相当する人物なのだ」と。
ひねくれてしまった生き方をしてきた倉持は、最後植物人間になってしまう。
そして、すべての不幸の原点を倉持が作っていたのだという確信をもった田島は、
最後、「殺人の門」を越えたのだと思う。
久々に深く引き込まれて読めた東野圭吾作品だった。