宿命 | Promised Land -帰りたい何処か-

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わたしにとっての「約束の地」はどこなのか?

その答えを今探しています。

木曜日。ようやく宿命を借りることができた。

この日も残業だったので、職場を8時半に出て、
猛ダッシュで図書館へ。
閉館9時5分前になんとか辿り着き、
無事借りることができた。


早く読みたくて矢も立てもたまらないが、
自宅にはあまり帰りたくなかったので
駅構内のカフェで本を読み始めた。


そして、序章と第一章を読み終えたところで
電車に乗り、帰途に着いた。

家に戻ってからはもうずっと読み耽っていた。
自分だけの世界。
幸い親はもう寝てしまっていた。



もう何度もWOWOWのあらすじを見ていたので
大筋はわかっていたが、それらの点がどのように
つながっていくのか、晃彦と勇作、美佐子との
つながり、過去のサナエとの関係・・・一体
何がどういう関係をもっているのか知りたかった。



藤木さんがWOWOWの番組紹介VTRで語っていたとおり、
原作では勇作が主人公として描かれ、晃彦の心理描写は
殆どない。だから、晃彦が事実を知ったときの悲しみ、
自身の運命・・宿命の重さとの葛藤、
そして、自らの心に鍵を掛け、宿命を全うしようとしてきた
生き様などが、ドラマの方では描かれているのだろうか?



東野圭吾本人も
「ドラマと本を両方みることによって、「宿命」という
 物語をちょうど表と裏から見ることができる」
とコメントしていたようだから、おそらくはそうなのだろう。




ネタバレになってしまうので本来は書くのは良くないとは思いつつ、
この「宿命」についてだけは書いておきたいのでご了承あれ。




電脳式振動操作の研究、という戦後直後の狂気染みたといっても
過言ではない人体実験からそれに関わってきた人々の人生が翻弄される。



幼い頃「レンガ病院」で勇作が出会った女性「サナエ」は
「日野早苗」という、この悲しい人体実験の被験者であり、
そして、勇作と晃彦の母親だった。
父親は、同じく被験者で、途中脱走した中国人孤児。

実験の後遺症のために、妊娠後期、急激に知能レベルが低下した
サナエが産んだ二卵性双生児は
一人は、当時この実験に関わっていた瓜生直明の実子として、
もう一人は、妻が不妊症だった夫婦の実子として、引き取られた。



「サナエ」怪死事件を捜査していた勇作の父も、勇
作が小学生のとき、この事実を知らされ、操作を打ち切った。
そして、早苗の墓に彼を連れて行った。
この怪死事件にこそ、UR電産の須貝派が絡んでおり、後の
UR電産社長殺害事件へとつながっていく。


そして、幼い頃から反発しながらも相対するものを持ち、
何かの力でひかれあっていた晃彦と勇作は、
UR電産社長殺害事件を契機に再会する。
エリート脳外科医(大学助手)と刑事として。



そして、晃彦の妻美佐子はかつての勇作の恋人。
心ならずも別れてしまった、
勇作にとって、そして美佐子にとっても
最初で最後の恋愛の相手。

そして、この美佐子もまた、彼らの運命の「糸」に
絡まっていた一人だった。
彼女の父親もまた、この悲しい実験の被験者だった。


原作の最後で、晃彦は、
自らの宿命や勇作との関係、勇作や美佐子への思いを
語る。



「重要なのは、自分にはどういう宿命が与えられているかだ」




彼は、自分自身に与えられた「宿命」のために、
子供らしさを失い、人生の大半を犠牲にしてきたのだ。



物語はここで終わるが、彼らのこれからがどうなるのか
ちょっと気になった。
晃彦は美佐子に少しずつ心の鍵を開けて、色々なことを
話していくつもりだといい、
勇作はこのとき、美佐子を永遠に失った。



晃彦は晃彦で、「宿命」によって人生を翻弄されたのだが、
勇作もまた、その宿命によって、最愛の人を永遠に失い、
医学の道を断念して警察官にならざるを得なかった、
犠牲者なのかもしれない。



この先、希望の光を見つけられるのは多分晃彦。
美佐子という愛する妻が傍にいるから。

勇作は私のように弱くはないだろうけれど、
でもやはり、「美佐子」という最愛の人を失い、
孤独の中で生きなければならないだけ、
きっと辛いと思う。




結局犯人は晃彦ではなかった。(原作では)。
ただ、ドラマ化されたりすると、若干原作とは結末が
変わっていたりすることがあるので
正確なところはわからないが、もしご存知の方が
いらっしゃったら教えてください。