PC Watchによると、デスクトップを拡大して生産性を高められるマルチモニター環境ですが、Windows 10時代までは必ずしもメリットばかりではありませんでした。
解像度の異なるモニター同士ではマウスカーソルの行き来がスムーズではなかったり、モニターの着脱でウィンドウの位置がすぐにリセットされてしまったりなど、使いにくいと感じる場面もけっこうあったのです。
すべてのモニターの解像度を合わせ、マルチモニターの使い勝手を補助するサードパーティツールを導入するなど、独自の工夫で乗り切ってきた人もいるかもしれません。
ところが、Windows 11となった今、そうした不都合はほぼ解消されています。
OS標準機能だけで快適なマルチモニター環境を実現できるのです。
というわけで、今回はマルチモニター環境におけるWindows 11の改善ポイントと、より便利で快適なマルチモニターライフを送るためのテクニックをいくつかご紹介しています。
なお、ここではWindows 11のバージョン「23H2」をベースに解説しています。
Windows 10から11になったことで、マルチモニターまわりの挙動が変化した(変化させられる)ところがあります。
中でも使い勝手に大きく影響しそうなのが、各モニターの解像度が異なっていてもマウスカーソルの移動がスムーズに行なえるようになったことです。
Windows 10までは、たとえば異なる縦解像度のモニターを横に並べて使用するとき、高解像度のモニターから低解像度のモニターへマウスカーソルを移動させようとするとモニター間で「引っかかって移動できない」状態になりやすかったのです。
実際にはデスクトップに“段差”ができている状態なので、そうなるのも仕方がありません。
ところが、Windows 11では「ディスプレイ」設定の「マルチ ディスプレイ」セクションが拡充され、「ディスプレイ間でカーソルを簡単に移動させる」という項目が追加されました。
これをオンにすると、マウスカーソルが高解像度モニターのどの縦位置にあっても低解像度モニターのデスクトップに移動させやすくなります。
反対に低解像度モニターから高解像度モニターにカーソルを移動するときは、低解像度モニターでのカーソル座標がある程度引き継がれるため、モニター間移動を繰り返すと若干「不思議な感覚」になることもあります。
とはいえ、“段差”を意識することなくモニター間をシームレスに移動できるようになったのはうれしい改善です。
もう1つのポイントは、「モニターの接続に基づいてウィンドウの位置を記憶する」ようになったことです。
こちらも「マルチ ディスプレイ」セクションに追加された設定項目です。
シングルモニターなのか、デュアルモニターなのか、あるいはトリプル以上のマルチモニターなのかといったモニターの接続状況ごとに各ウィンドウの位置をちゃんと記憶して、接続を変えたときにも自動で位置を復元してくれる、というものになります。
これは特にノートPCユーザーにとって便利な機能でしょう。
外出先ではノートPC本体のシングルモニター環境だけれど、オフィスや自宅では外部モニターを接続してマルチモニターにしている、という人も少なくないはずだからです。
ノートPC本体のみの時はそれに最適なウィンドウ位置が、外部モニターを接続したときにもそれに最適なウィンドウ位置が、それぞれですぐさま復元されます。
モニターを接続/解除するたびに手動でウィンドウを配置し直す、なんていう煩雑な作業は一切不要なのです。
デスクトップまわりのWindows 11の標準機能には、使い方次第でマルチモニター環境をより快適にできるものがあります。
その中から3つほどピックアップしています。
Windows 10で導入されたウィンドウの「スナップ」機能は、Windows 11以降も継続的に改善が図られ、使い勝手が変わってきています。
現在のスナップ機能の利用方法は主に2通りです。
1つはアプリケーションウィンドウのタイトルバーにある最大化ボタンを使う方法です。
最大化ボタンの上にマウスカーソルを置く(またはウィンドウをアクティブ状態にして「Win+Z」キーを押す)と、スナップ レイアウトの候補が表示されるようになります。
あとはそのウィンドウをレイアウトしたいゾーンをクリックすればOKです。
もう1つはウィンドウのタイトルバーをドラッグして移動しているときに、デスクトップ上部に近づける方法です。
そうするとスナップ レイアウトの候補が現れるので、そのまま任意のゾーンにドロップすればレイアウトできます。
先ほどの最大化ボタンからスナップする方法は、そのアプリケーションがタイトルバーを独自にカスタマイズしている場合に利用できないケースがありますが、こちらの方法だとほとんどのアプリケーションが対応しています。
ある意味ウィンドウ単位でデスクトップを分割できるようにするスナップ機能は、マルチモニター化して広くなったデスクトップを有効活用するのに役立ってくれるでしょう。
Windows 11には仮想デスクトップの機能も標準で用意されています。
現在見えているデスクトップとは別に、仮想的なデスクトップを複数保持して、いつでも好きなデスクトップに切り替えられるようにする機能です。
仮想デスクトップの作成方法は、「Win+Tab」キーを押して画面下部に現れる「新しいデスクトップ」をクリックするだけです。
切り替え方も「Win+Tab」キーを押して使いたい(仮想)デスクトップをクリックするだけです。
配置したウィンドウの位置/大きさなどは、仮想デスクトップごとに記憶してくれます。
そのため、通常使っているデスクトップではオフィスアプリケーションを、仮想デスクトップではWebブラウザや画像編集ソフトを立ち上げておいて、用途に応じて切り替えながら作業するのに都合が良いでしょう。
仮想デスクトップという考え方は古くからあり、もともとは解像度のあまり高くないモニターを利用している場合に、デスクトップを仮想的に広げて効率良く使えるようにすることを狙ったものでもありました。
しかしながら、大容量のメモリを比較的低コストで搭載できるようになった今は、多数のアプリケーションを常時立ち上げておき、必要に応じて切り替えながら作業して、極限までマルチタスク化を極めるのもいいかもしれません。
なお、マルチモニター環境では全てのモニター画面がまとめて「1セットの仮想デスクトップ」として扱われることになります(モニター1台は通常のデスクトップにし、別のモニターは仮想デスクトップにする、というような使い方はできません)。
マルチモニター前提の作業環境を「マルチモニター×仮想デスクトップ」で複数作成しておけば、劇的な生産性アップを図れるのではないでしょうか?
マルチモニターにすると、こだわりたくなってくるのが壁紙です。
ずっとワンパターンの壁紙だと飽きてしまうかもしれませんが、Windows 11では(それ以前から)壁紙のさまざまなカスタマイズオプションが利用でき、デスクトップを賑やかに彩れます。
マルチモニター環境向けの壁紙設定としておすすめなのは、やはりモニターごとに異なる画像にするものです。
設定方法はデスクトップの右クリックで表示されるコンテキストメニューから「個人用設定」→「背景」を選び、「背景をカスタマイズ」のプルダウンから「画像」を選択します。
次に「写真を参照」ボタンで壁紙画像を選択した上で、「最近使った画像」として候補表示されているサムネイルの上で右クリックし、表示させたいモニターの識別番号を選びます。
これで任意のモニターに任意の壁紙が表示されます。
もちろんすべてのモニターで同じ壁紙に統一することも可能です。
または「スライドショー」にするのもアリです。
「ページ幅に合わせる」、「画面のサイズに合わせる」、「拡大して表示」、「中央に表示」のうちいずれかのレイアウトを選べば、モニター1台1台に異なる壁紙をランダムで表示させられます。
レイアウトを「スパン」にすれば、複数のモニターをまたがる形で1枚画像を表示できたりもします。
統一感を出しつつモニターごとに壁紙に変化をつけたい時は、これもおすすめです。
マルチモニターにすると、デスクトップが広くなるのと引き換えにマウス操作が非効率になったり、思わぬアクシデントに遭遇したりする場合もあります。
Windows 11が標準で用意しているキーボードショートカットなどの機能も活用して、マウス操作に頼ることなく自由自在にデスクトップを操れるようにしましょう。
マルチモニター環境で作業中、直前まで使っていたはずのウィンドウが何かの弾みで画面外に移動するなどして見えなくなってしまうことがあるかもしれません。
そんな時は下記の手順を試してください。
今使っているウィンドウを手っ取り早くきれいに配置したい、というときは、スナップ機能のショートカットキーとなる「Win+左右」キーを使いましょう。
そのモニターのデスクトップ内で、ウィンドウを素早く左右に寄せたり、元の位置に戻したりできます。
モニター間でウィンドウを移動したいときは、それに「Shift」キーを加えるだけです。
「Win+Shift+左右」キーで、一発でモニター間を移動させることが可能です。
全画面表示のゲームなど、タイトルバーがなくマウスで動かせないウィンドウもこれで移動できます。
また、Copilotのウィンドウをメインモニター以外に移動したいときにもこのワザは有効です。
通常はメインモニターの右側に固定表示となるCopilotですが、「Win+Shift+左右」キーでサブモニターに移動させておけば、常時表示でも邪魔にならず、いつでもAIのサポートを受けられるでしょう。
ちなみに「スナップ」機能が有効で、かつ「ウィンドウをドラッグした時に、画面の端までドラッグしなくてもウィンドウをスナップできるようにする」がオフになっていると、ウィンドウをマウス操作で移動しにくくなってしまいます。
そんなときにも「Win+Shift+左右」キーを使えば簡単です。
Windows 11の通常のスクリーンショット撮影手段としては「Win+PrintScreen」キーがよく知られています。
押すだけでスクリーンショットを撮影し、自動で「ピクチャ」フォルダに画像ファイルとして保存してくれる機能です。
ただし、この方法では全てのモニターのデスクトップがスクリーンショットの対象となってしまうのです。
任意のモニターのデスクトップを撮影することは不可能です。
よって、代わりに使いたいのがWindows 11標準の「Snipping Tool」を利用する方法です。
メインモニターのみのスクリーンショットを撮りたいのであれば、Snipping Toolで「ウィンドウ」を選択し、デスクトップやタスクバーにマウスカーソルを合わせてクリックする、という方法もあります。
ショートカットキー一発で、というわけにはいかないものの、ある程度省力化はできるはずです。
このように、Windows 11ではOS標準の機能が追加・改善され、マルチモニターの運用が以前よりもしやすくなっているのです。
ショートカットキーもあわせて活用することで、作業効率は一段とアップするでしょう。
独立前に勤めていた会計事務所時代からマルチモニターを利用しています。
ワードやエクセルやパワポ、会計ソフト、申告ソフトなどを使う会計事務所では、コピペも多いため、マルチモニターだと、効率が格段に上がります。
個人的には、モニターを縦で使うことも多いです。
知らない使い方もいっぱいありましたので、使っていきたいと思います。
「マルチモニターが使いにくい」は過去のことであることについて、あなたはどう思われましたか?