小学2年生のAちゃんがお母さんに連れられて、体験レッスンに来たのは、1年8ヶ月前です。
近所の教室に通っていたけど、練習もしないし、音符も読めるようにならないし、
「ピアノ、やめる」
と言ってやめてしまった。
もう一度先生のところでやり直したい。もし、それで、やる気にならなかったら、ピアノをさせるのをあきらめます。というお母さんのお話でした。
一児の母として、気持ちがわかるので、「なんとかしてあげたい」と思いました。
レッスンを始めたのですが、Aちゃんは、なかなか手ごわかったです。(笑)
練習の習慣がなく、読譜が面倒な様子で、細かいことを注意し始めると、だんだん気持ちがなえてくるのがわかり、返事がなくなってしまいます。
本人はどうしていいかわからなくなって、寡黙になるらしいのですが、こちらからすると、ふてくされているように見えてしまいます。
グレンツェンコンクール出てみては?と提案して受けたものの、予選落ち。
高松まで、リベンジに行ってなんとか準優秀賞に入ったものの、本選は賞に入れませんでした。
しかも、お母さんがわざわざ仕事を休んで、高松まで走ってくれたにもかかわらず、練習させていたら、お母さんに対して反抗的な態度を取ったという話でした。
少し、荒治療だと思いましたが、「やる気がないならもう二度と来なくていい!」
と叱りました。
泣きながらAちゃんは帰っていきました。
後味は悪かったです。
これで、Aちゃんが、本当にピアノが嫌になって来なくなったら、もうしょうがない。だけど、這い上がってくれるものと信じて、待とうと思いました。
次の日、グランフジに買い物に出かけると、なんと、Aちゃんがいるじゃないですか?
声をかけるとびっくりしてました。「先生に何か言うことないの?」と話かけてみました。
「もう一度ピアノをがんばるので、レッスンしてください」
と言って欲しかったのです。でも、黙っていました。
お母さんに、「Aちゃんの心境が変わったら、連絡ください。」と言って別れました。
次のレッスンの日、「伺います」とお母さんから連絡がありました。
レッスンでは、もう今までとは別人のAちゃんになっていました。
自分からやる気で弾いているそんな感じでした。
彼女なりに、一週間でいろんな事を考えたのだと思います。
グレンツェンコンクールと一緒に目指していたのが、ピアラピアノコンクール。
コンクールがカンフル剤になればいいと思い、2つのコンクールにエントリーしていました。
自由曲なので、早くから準備していたのですが、だんだんうまくなっていき、音が出るようになってきました。
そして、予選銅賞。
これに勢い付き、本選の曲も一生懸命練習するようになりました。
今まで、教則本を沢山弾いてないので、苦戦しましたが、なんとか本選ギリギリのところで、弾けるようになりました。
広島の本選の日、ドキドキしながら結果の報告を待っていました。
結果は本選最優秀賞。
なんと、全国大会出場が決まりました。
大変身のAちゃんは、お母さんが仕事をしている間、1人で練習をするようになり、全国大会の課題曲が難しいのに、投げ出さず、懸命に練習しました。
課題曲がバッハだったので、大変苦労しましたが、なんとか本番は弾けました。
結果は賞をいただくことはなかったのですが、バイエルをやっと弾いているAちゃんにとっては奇跡とも言えます。
これが自信となり、教則本も前向きに向き合うようになり、譜読みも1人でできるようになりました。
もう少しでバイエルが終わります。
発表会は全国大会で弾いた曲にして、教則本を沢山進む予定です。
将来はピアノの先生になりたい
というようになったAちゃん。
これからも山あり谷ありだと思うけど、
がんばれ!
もし、がんばって、3月までにブルグミュラーがある程度弾けたら
ピティナも夢じゃないかも。
竹本喜代美