金沢21世紀美術館とSANAA | にっくんのブログ

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21世紀美術館

金沢21世紀美術館


 金沢の新しい名所が2004年に開館した金沢21世紀美術館です。
 直径112メートルの円形の建物で、外壁がガラス張りとなっており出入り口が4カ所にあります。
 高い位置から鳥瞰してみると、いろいろな建物をまとめて円形の建物で囲った感じです。 設計したのがSANAAという妹島和世、西沢立衛の二人の建築家です。SANAAはこの建築でイタリアのヴェネツィア・ビエンナーレ国際建築展金獅子賞を受賞し、世界的な建築家となり、2010年には建築界のノーベル賞と言われるブリツカー賞を受賞しました。




外観


ガラスを多用している開放的な建物です。





中から外


 建物が円形になっており、歩いていると外の風景に目が行ってしまいます。



スイミングプール

スイミングプール


 中庭にあるプールです。透明のガラスに水が張ってあるだけで、その下の部屋の人が見えます。






ルーブル・ランス


 少し前にNHKでSANAAについての番組を放送していたので見てました。新国立競技場で話題となったザハ・ハディドのライバルになり、フランスの炭鉱の街だったランス市に建設されるルーブル美術館の別館、ルーブル・ランスのデザインコンペでは、ザハ案とSANAA案が最後まで争いました。ザハ案の新国立でもわかるように個性的で圧倒的な存在感のデザインに対し、SANAA案は周囲にマッチした落ち着いたデザインでした。二つの案は最後までもつれ、最後は審査員長に委ねられ、SANAA案に決まりました。



ルーブルランス

ルーブル・ランス外観


 アルミとガラスを多用した建物で、ルーブル美術館の館長は日本の貴族の邸宅にたとえました。





ルーブルランス図面

ルーブル・ランス図面


 日本の御殿建築に見られる雁行状に建物が配置されています。




ルーブルランス内部

ルーブル・ランス内部


 




新国立競技場


 そして2012年に新国立競技場のデザインコンペで再び争うことになります。ル―ブル・ランスとは逆の結果になりザハ案が採用されました。
 しかし東日本大震災での復興工事、東京での建築ラッシュで人件費の高騰、円安による建築資材の高騰、消費税の3パーセントアップなどで建築費は当初見積の1300億円を遙かに超える3000億円以上と試算され、批判が相次ぎ白紙撤回されてしまいました。




新国立

ザハ案


流線的で近未来的なスタジアムです。廻りを圧倒する存在感があります。キールアーチ構造は当初から難工事が予想されていました。審査員の一人は実現は可能だろうが、ただしいくら掛かるかわからないと言っていました。審査員長の安藤忠雄氏の強い後押しがあり、ザハ案に決定しましたが、建設費が高騰が問題となり撤回となりました。






新国立SANAA案

SANAA案


後ろ側が新宿御苑、右側が明治神宮外苑絵画館になります。国立競技場の建設される土地は明治神宮外苑になりますが、SANAA案はそれほど高くなく、周囲の環境にマッチしています。それでいて屋根のウエーブが個性を出しています。しかしスタンドと屋根の間に空間が出来て、それがネックとされてしまいました。計画ではコンサートにも使われるように遮音性も重視していました。





 巨大建築物の建築がストップしたことは過去にもありました。
 明暦の大火(1657年)で焼失した江戸城の天守閣。その高さは石垣上約45メートル、石垣を含め59メートル近くある巨大建築物でしたが、4代将軍徳川家綱の後見人で、家光の腹違いの弟である保科正之は復興を優先し、加賀藩により天守台は修繕されたものの、天守閣は無用の長物と再建にストップをかけました。
 戦国時代が終わり平和な時代が訪れると、幕府、各藩は新田開発に力を入れ石高を上げることに努めます。石高が増えると人口が増加し(一石当たり一人を養える勘定です)経済は発展しました。それと同時に貨幣経済が進みますが、それに対して幕府、藩の収入は年貢に頼っていたため、財政的に色々と問題も出て来た時代でした。
 総面積1万坪という本丸御殿や西の丸御殿は再建されましたが、天守閣再建の計画はあったものの、経済の停滞期に入り(17世紀中頃から後半ぐらいに新田開発が一段落し、石高を思うように増やせなくなりました)時代が下るにつれ幕府の財政は更に悪化し、とうとう再建されず、3層の富士見櫓が天守の代用とされました。
 将軍家の江戸城の天守閣が再建されなかったため、五層での再建を希望した小田原城や和歌山城も三層での再建になりました。




新国立競技場の問題は、現在の日本の状況を浮き彫りにした事象です。
 計画を推し進めた人たちは60代、70代と、高度経済成長期、バブル期を知っている人たちです。オリンピックに国家の威信をかけたいのでしょう。そのためにはいくら金をかけてもいいと思っているのでしょう。国家の威信をかけるのに迫力のあるザハのプランはピッタリだったのです。
 しかし現実の日本は経済が思うように浮上しません。1000兆円という莫大な負債を抱え、税金の負担が徐々に増えてきています。少子高齢化が進み年金もどうなるかわからない状態です。その中で建設費が上昇し、3000億以上とも言われるようになりました。選定も不透明で、潤うのは一部の人だけで、多くの人は負担だけがのしかかるだけと思うのも当然です。批判が集中し、安保法案に対する批判をかわすためにスケープゴードとなり、白紙撤回となりました。
 新国立競技場は仕切り直しになりましたが、これからの日本を象徴する競技場にしてもらいたいものです。