賓日館 その一
先日、三重県伊勢市二見町の賓日館という、明治時代の貴人達が宿泊した施設を見てきました。
賓日館の玄関
三重県伊勢市二見町にある賓日館は、明治20年(1887年)に伊勢神宮に参拝する賓客が休憩・宿泊施設として、神宮の崇敬団体、神苑会によって建設されました。
明治天皇の御母堂である英照皇太后の宿泊に間に合わせるように、明治19年12月に着工、翌年2月19日に竣工しました。
明治24年(1891年)7月29日から8月20日まで、皇太子時代の大正天皇が避暑、療養、水泳訓練を兼ねて滞在なされました。そのほかにも歴代諸皇族や各界要人が多数宿泊されました。
明治44年(1911年)に隣接する二見館に払い下げられ、二見館の別館として利用され、二度にわたる増改築で現在の規模になりました。
しかし平成11年(1999年)11月30日に二見館は休業しました。その後平成15年(2003年)、賓日館は二見町に寄贈され、資料館として再スタートを切りました。そして平成22年(2010年)6月29日に国の重要文化財に指定されました。
賓日館 見取り図
玄関は昭和5年の二回目の改築で屋根を唐破風に改めました。唐破風は寺社建築や城郭の御殿の玄関にも使われる格式の高いもので、銅葺きとなっています。玄関の上がり框は檜、式台はケヤキ、天井板は屋久杉と高価な材料を使用しています。
玄関は高貴の人の入り口なので、一般人は玄関脇から中に入り、受付で入館料の300円を払います。
二見町では2月4日から3月9日まで「おひささまめぐりIN二見」というイベントをやっており、来る途中の駅や旅館、商店でもひな人形が飾られていましたが、この賓日館の中はひな人形がところ狭しと飾られていました。夫婦円満の象徴である夫婦岩が有名な二見町らしいイベントで、今回で10回目を算えるようです。町全体で6000体もの人形が飾られているということです。
二階翁の間のひな人形
御殿の間
御殿の間は二階にあり、賓日館の中で最も格式の高い部屋で、二重格天井、床の間の框(かまち)は螺鈿(貝殻の内側を薄く剥いだもの)細工の輪島塗で装飾された豪華な造りとなっています。壁も天井まで壁紙が貼られており、他の客間とは様式が異なっております。