アミに対していくら真剣に話しても、アミは はぐらかすばかりでした。
そこで、私は、「どんな思いで私が、アミを養子として迎え、育てることにしたのか」
「ウソをついたり、誤魔化したり、自分が決めたことを先延ばしにしていてはいけないのか」
を私自身の体験を通して伝えることにしました。
それは、49歳の誕生日の時、
「棺おけリスト(邦題:最高の人生の見つけ方)」
という映画を見たことをきっかけに、、意を決して、それまで先延ばしにしたいたことに決着をつけた私自身の体験でした。
アミもこの映画は見たことがある とのことで、初めて私の話に耳を傾けてくれました。
実は、オレの生みのお母さんは、オレが2歳の時に死んだんだ。
そして、5歳の時に二番目の母が来てくれて、
とてもよくしてくれたんだけど、同時にとても厳しい面もあってね。
それで、今のアミと同じようにオレもよく反抗したんだ!
その度に「よその子を育ててあげているんだから、感謝しなさい」と言われてね。
でも、「親が子を育てるのは当たり前じゃないか! いちいち恩に着せるなよ!」
って反発していたんだ。
子供の頃、アミと同じようにオレも本を読むのが大好きで、いっぱい本を読んだんだ。
白雪姫とか読むと、「まま母にいじめられるシーン」がよく描いてあるよね。
オレも、「まま母にいじめられている可哀想な僕」っていうストーリーを勝手に作っていたんだね。
でも一度だけ、ある本に
「亡くなったあなたのお母さんに代わって私が託された子供だから、なんとか一人前に育てなくてはと思って厳しくしてるの」
というようなことが描いてあったことがあったんだ。
「もしかすると、お母さんもそうなのかな?」
って考えたことがあるけど、オレはすぐにそれを否定した。
なぜかというと、親戚の家に行った時なんかに、
「まま母にいじめられている可哀想な子供」でいた方が、
「不憫な子ながら、なんて健気にいきているんでしょう!」って受けが良かったんだね。
そうこうしているうちに、どんどん親子関係はどんどん断絶していって、ますます反抗するようになっていったんだ。
15歳の時に、母から
「信二ちょっと話があるの。今まで黙っていたけど、私には本当の子供がいるの。
その子の父親とは、産んですぐに離婚することになったので、ずっと別れ別れで暮らしてきたの。
でも、その子が、『お母さんがそんなに苦労しているなら、僕と一緒に住もうよ』と言ってくれているの」
と告げられてね。
オレは、その時、すごいショックだったんだ。
そして、なんでことあるごとに「“よその子”を育ててあげているんだから、感謝しなさい!」と言われてきたのか、その意味がやっとわかったんだ!
オレはお母さんのことが怖くて、大嫌いだと思っていたけど、本当はお母さんのことが大好きで甘えていたんだね。
でもひねくれていたから、素直に甘えることができなかったんだ。
本当は、お母さんの本当の子供だと思いたかったんだね。
だから「よその子」って言われる度に打ちのめされたような気持ちになって反抗していたんだ。
そうえいば、そのことを告げられる1週間前に、15歳のオレにお母さんが「信二一緒にお風呂に入ろう!」
って言ったんだ。
オレは、お母さんがなんで急にそんなことを言うのか不思議で、
お兄さんには、からかわれながらも、一緒にお風呂に入ったんだ。
きっと小さい頃はよくお母さんと一緒にお風呂に入って頭を洗ってもらってたから、
家を出ていくことを決めていたお母さんは、オレがどの位成長したのか、一緒にお風呂に入って確かめたかったんだろうね。
でも「お母さんに本当の子供がいたんだ」と知らされた時には、「もうこれ以上甘えちゃいけない!」って思ったんだ。
だって、その子の方は、「あなたのお母さんはあなたを生んですぐに死んだのよ!」
って言い聞かされてきたんだって。
その子は、死んだといわれてきた母親が実は生きていると知らされ、「どうしても一緒に暮らしたい」と思ったんだね。
オレは、その子に対してもお母さんに対しても、一番大切な時期をオレ達兄弟の方が母を独占してしまったことに対して
本当に申し訳ないことをしたと思ったんだ。
だから、「もうお母さんをその子に返してあげなきゃいけない」って思ったんだ。
オレが本当に伝えたかったのは
「お母さん、今までありがとうございました。いろいろ反抗もしたけれど、ここまで育ててくれたことに感謝しています。どうぞ、その子の方に行ってあげて下さい」という言葉だったんだ。
しかし、実際に口から出てきた言葉は
「出ていきたいなら、いつでも出ていけばいいじゃないか!その方がこっちもせいせいするわ!」という悪態だったんだ。
オレ、ひねくれてたから、どうせなら思いっきり嫌われたほうが、その子の方へ行きやすいだろう…って子供心に思ったんだね。
お母さんは、それから一週間位後の父が不在の夜、オレ達兄弟が眠っている間に、別れも告げずに黙って消えちゃったんだ。
予期していたこととはいえ、頭が真っ白になっちゃってね。
それから34年間、いい時にはあまり思い出さないんだけど、何かうまくいかなくなると、あの時の罪悪感が残っているから、こんな目に合うんじゃないかって考えるようになったんだ。
その度に、「なんとか所在を突き止めて、お詫びとお礼をしなければ」と思いながらも、あてもないまま先延ばしになっていたんだ。
49歳の誕生日に「棺おけリスト(最高の人生の見つけ方)」を見て以来、
「このまま、もし母が死んでいて、本当の思いを伝えられないままになってしまったら一生後悔することになるだろう…」と思ったら、居ても立ってもいられなくなってね…
そして、意を決して、子供の頃に連れて行かれた浜松の母の実家を訪ねていき、居場所を突き止めたんだ。
お母さんは、その時、愛知県小牧市に住んでいて75歳で生きているってことだったんだ。
電話番号を教えてもらい、恐る恐るかけてみたんだ。
「田中と申しますが、○○さんはご在宅ですか?」
すると、とても若々しいのですが、明らかに警戒した声で「どなた様ですか?」と返ってきたんだ。
声が若いので「お嫁さんかな」と思い、 「もしかして75歳の○○さんですか?」と尋ねたところ、ますます訝しげに「そうですが…」との返事、間違いなく本人のようです。
せっかく繋がったのに、危うく「オレオレ詐欺」と間違われて切られそうになりながらも、慌てて「子供の頃育ててもらった田中信二です」と早口で名乗ったところ、「ああ…」という言葉と共に、思い出してもらえたんだ。
「ああ、やっとつながった!」と思ったら、いきなり涙が溢れてきたんだ。
そして、長年伝えられないできた、本当の思いを伝えるうちに、とめどなく感情が湧きあがってきて、自分の中にこんなにも蓋をしたままの感情があったのかと驚きました。
そして、母の方からも
「あの頃は、こうしている間にも、自分の子には不幸な思いをさせているのかと思うと、ついつい憎くなってね…。
あなた達には随分辛い思いをさせてしまってごめんなさいね。 黙って出ていってしまったので、ずっと後ろめたい気持ちがあったのよ。本当にごめんなさいね。幸せになって下さいね」 と言ってくれたんだ。
オレの中で長年つかえていたものが、この時外れたんだ。
それまで、いつも流れに逆らった生き方をしていたんだけど、それ以来、人生の大きな流れにのって生きれるようになってきた感じがするんだ。
アミは初めて、黙って私の言葉に耳を傾けてくれていました。
だから、アミのことを見ていると、子ども時代のオレを見ているような気がするんだ。
アミのお蔭で、あの頃のお母さんやお父さんの気持ちもようやくわかるようになってきたんだ。
オレもセラピストとして、いろいろな人の相談され、いろいろな親子関係を見てきたけれど、
実の血の繋がった親子でも、酷い家はいっぱいあることを知ったんだ。
だから、血が繋がっているかどうかよりも、互いに選択して一緒に生活することの方が大切だということに気づいたんだ。
オレのお母さんは、実の子と別れながらも、オレの母になることを選んでくれた大切な人だったんだ。
でも、オレの方が、お母さんの子として、素直にお母さんの話を聞くことを選んでいなかったんだ!
オレは、そんな経験をしてきているからこそ、アミと暮らすことになった時、
「アミがどんなに反発してきたとしても、それを受け止めよう」
そして、「お母さんがどんな思いでオレを育ててくれていたのか」をしっかり感じ取ろうと決めたんだ。
「そして、最後には本当に心から理解し合える関係を作り上げよう!」って決めているんだ。
なぜなら、それがオレの人生のテーマだと気づいたからなんだ!
でも、これは俺の選択であって、アミには、アミの選択がある!
アミは、一緒に暮らして2年になるけれど、なんとなくママに着いて来ただけで、ちゃんと選択してないよね。
これから、「オレとママと莉愛ちゃんとアミとで4人家族として一緒に幸せに生活していくのか」
それとも、「この家を出て、お爺ちゃんのところに帰るのか、もしくは施設に入って暮らすのか」
もうそろそろ、ハッキリ選択して欲しいんだ。
もう今までのような「中途半端なまま、なんとなく一緒に住んでいる」という関係は今日で終わりだよ!
ここでママも話しました。
「アミは、“妹が欲しい”ってずっと言ってたわよね。
それから“引越しをしたら、自分の部屋が欲しい”
それに“パパが欲しい”とも言ってたわよね。
その全部が今手に入っているんじゃないの?
あとは、信二さんのことを“パパ”と認めて
素直にそう呼ぶだけで、
家族皆が幸せに暮らせるようになるんじゃないの?
アミがここで、素直になるのか、反抗し続けるのか
それはアミの人生だから、アミ以外は誰も本当には困らないのよ!
でも、アミにとっては、今日ここで選ぶか選ばないかで、
全く違う人生になってしまうのよ!」
アミはしばらく考えた末に、
「アミ、素直になる。
今日からパパって呼ぶことにする!」
ようやく、自分から本当に決めて言葉にすることができました。
そこで、最後の仕上げに、アミと手をつないで、二人の関係を調和させる為にオンサセラピーをすることにしました。
手をつなぐと、それだけで、アミのエネルギーが伝わってきて、私のノドや胸がつまって、苦しくなってくる。
これほどまでの、ネガティブな感情エネルギーが体のチャージされていたら、本当の思いは全て変換されてしまうのも当然でした。

初めは曇っていたオンサの響きがだんだ明るく響くようになっていくに連れ、アミから伝わってくるノドや胸のつっかえていたエネルギーが消えていきました。そして、なんだかウキウキ楽しい気分になってきました。
オンサセラピーが終わったあと、アミはいいました。
「今まで反抗してきてゴメンなさい。
パパよろしくお願いします!」
こうして、アミの人生の分岐点となった長い夜は終わりました。
朝の5時を過ぎ、外はもう明るくなっていました。
それから、少し寝て、目が覚めてからアミとリビングで顔を合わせました。
パパ: 「アミおはよう!」
アミ : 「おはよう!」
パパ: 「あれ、それだけだっけ?
アミおはよう!」
アミ : 「おはよう! パパ」
アミは、少し照れくさそうではあったが、顔つきが、昨日までとは違った、確実に素直な可愛い表情になっていました。

《つづく》【人生を変える旅路15 被害者ゲームと加害者ゲーム】
http://ameblo.jp/mindupdate/entry-11276961472.html