ステイション・ホテルのティーラウンジでH氏のセッションが始まった。
まずは、脳と心と体の関係に関する基本知識のレクチャーから始まった。 http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=10685363&comm_id=1320062
彼は、赤ベコのように首をタテに振り続けていった。今まで学んできたことや疑問に思ってきたこと全てが繋がっていったようだ。
通常なら、予備知識が整ったところで本人がどうなりたいかを聴いて、それを妨げているエネルギーブロックを外すセッションに移るのだが、最初のクライアントK氏が訪れる10時を過ぎてしまっていた。そこで、一旦H氏のセッションはここで終えることにした。
K氏から連絡が入ってないので、店内を見回してみた。
すると カウンターのあたりに、一人でキョロキョロしている人がいた。声を掛けてみるとK氏であった。
一対一の個人セッションのつもりでいたのに、見知らぬ男が同席していることに不審を感じているようだ。
そこで、ここまでの経緯をお話し、彼が同席していることが全体にとって、どんなメリットがあるかを話した。
というのは、セッションでどんなに変化が起きるという話をしても、「それは、田中さんみたいに、長年いろいろな勉強をしたり、体験をしてきた特別な人だからこそ、できるんでしょう!」と本人が思ってしまったら、効果は半減してしまう。
ここにいるH氏にしても、「人間は一瞬にして変われるんだよ!なぜなら君は昨日までの私そのものだから!」とK氏に言われたからこそ新幹線の最終に飛び乗って名古屋まで駆けつけたのだから…。
そこで、H氏自身からも、ここまでのプロセスを語ってもらった。
その上で、「『あくまで一対一でお願いしたい』ということであれば、席をはずしてもらう」ということで、K氏にどうしたいか聞いたところ、「別にいいですよ」と気のない様子ではあったものの、同意してくれた。
さて、K氏のテーマは「自分から率先して行動できない。
一対一なら話が出来るが、ミーティングのような周りに沢山人がいる場だとうまく話せない」とのこと、K氏にとっては、H氏の同席を許したことは、自分に対するチャレンジでもあったようだ。
他には、「彼女はよく気が利くのに、自分は何を言われても直そうとしない為、彼女から『一緒にいるとイライイラする』と言われるのを直したい」「カラオケが苦手」「失敗を恐れる」とのことだった。
カウンセリングをしながら、結局全てに共通しているのが、「人の目が気になって仕方ない」ということだということがわかってきた。そこで、「どうなりたいのか? 人の目が気にならなくなったらどんな自分になるのか?」という質問を投げかけたのだが、のらりくらりしているうちに、残り時間30分になってしまった。
この雰囲気のままいくと、何も変わらないままに時間切れになってしまうことは目に見えていた。同席していたH氏も、昨日までの自分の姿を客観的に見ることができたようだ。
そこで、
「原因が何だったか理解したところで、出来ない言い訳が正当化されるだけで、大した意味はない。
それよりも、『人目を気にして恐れていたことが、実際には起きなかった。それは単なる幻想に過ぎなかったんだ』という体験をすることは自分にとって価値あることがどうか」
尋ねてみた。
K氏は大きく頷いた。そこで一つ聞いてみた
「帰ってからではなく、今ここで出来ること…。そうだな、例えば、今このお店の中で人目を気にせず、歌を歌えたとしたら、恐れを克服できたことになる?」
「うっ」と詰まったものの、「ハイ、なります」
「そう、じゃあやってみたら…」
K氏は、下を向いて考え込んだ、身体がどんどん」フリーズしていく様子、時々顔を上げるか、また下を向いてしまう。
「いつやるの?」「今やります!」そんな言葉が時折、交わされながら10分が経過。
「田中さんやります! 『春がき~た、春がき~た♪』」
一瞬、店内が静まり返り、お客さんが一斉にこちらを見たが、すぐに、何事もなかったように、それまでの喧騒にもどった。店員の一人が「他のお客様の迷惑になりますので、おやめ下さい」といって去っていった。
K氏も、大変なことをやってのけた割には、何も変化した様子も見られなかった。
ということは、何かとてつもなく大きな変化を起こしたようでいて、実はこれすら自分のパターンを抜け出していないということだ。
私達は日ごろ人の手前、自分の感情を抑え我慢し続けていく、そうするとストレスがドンドン溜まっていき、「もうこれ以上我慢できない!」となると、「テメエ、いい加減にしろよ!」と感情を爆発させる。そうすると、関係性を破壊してしまう為、「しまった!またやってしまった!」と後悔し、また我慢しつづけることになる。そしてまた爆発し…。ということを延々と繰り返している。
これを、「ご機嫌取り⇒誘惑⇒隷属⇒復讐サイクル」とスリーインワンでは呼んでいる。
ストレス下では、脳はサバイバル・モードに切り替わる。それは「戦うか/逃げるか」というモードであり、日頃逃げてばかりいる人は、「窮鼠猫を噛む」状態で戦いに転じることがある。しかし、それは日頃その人が演じている姿とはあまりにかけ離れている為、周りがびっくりしてしまうのだ。
いずれにしても、コインの裏表であり、変化したことにはならいない。
さて、「失敗したら、やり方変えて後9回!」
同じパターンで何度繰り返しても意味がないけれど、やり方変えて全部で10回やれば、統計上、必ず成功できるそうだ。
WMでクリス岡崎氏に教わったパワーボキャブラリーをK氏に紹介し、こんな提案をした。
「今回は既に1回失敗できたんだから、後8回、思いっきり失敗してみたらどう? そうしたら9回目には必ず成功できる!
それで人生が変わるとしたら、やってみる価値はあるんじゃない!? しかも、残されている時間は15分間。たった15分間で人生がガラリと変わってしまうかもしれない!
だとしたら、長い人生の中のたった15分間、全力を出し切ってやってみる価値はないかな?」
K氏の目ツキが変わった。「田中さん、やってみます!」そういって、店を出て行った。
残された、H氏と二人でワクワクしてK氏の帰りを待っていた。H氏は、同席しているだけで、体中に電気が走り、震えがきて、嬉しくて嬉しくて仕方なかったそうだ。
15分が経って、K氏が目をキラキラさせて戻ってきた。明らかにオーラが違っていた。
駅の構内で、大きなぬいぐるみにハグをしたり、大声で歌ったり、走り回ったり、いろいろなことをしているうちに、子供の頃のような、喜びが湧き上がってきたそうだ。
また一人、スーパーサイヤジンが誕生した。
興奮して話すK氏。そろそろ次のクライアントが来る頃だ。
K氏は最初、午後から仕事があるので、「セッションが終わったらすぐに帰らないといけない」と言っていた。ところが、
「田中さん、私も同席させてもらってもいいでしょうか?」
「次のクライアントの同意が得たれたらいいかもね、ただ会社はどうするの?」
「今、電話して、なんとか調整してきます!」といって、表に出て行った。
店内を見回すと、キョロキョロしている女性がいた。
<つづく>
