現代日本には公的年金に対する不安が溢れかえっています。
皆さんも何かしら不安を感じているのではないでしょうか?
しかし、その不安というのは果たして根拠のあるものでしょうか。
マスコミは金融機関の煽りに乗せられて、年金に対して何の根拠もない不信感を抱いてはいませんか?
私たち日本人の多くが抱いている三つの年金に対する勘違いに対し、正しい事実をお伝えしたいと思います。
年金に関する勘違い一つ目、「年金財政は赤字」
まず最初に年金財政は赤字であるという誤解について説明しましょう。
一般に、日本には巨額の財政赤字があると言われています。
確かにこれは事実です。
しかし、ここで勘違いしてはいけないのは、赤字なのはあくまで一般会計であるということです。
財務省が発表している財政に関する資料によれば、2021年度の歳出の総額は106兆6097億円となっています。
歳入の総額、税とその他収入を合計すると約63兆円です。
このことから2021年度はなんと約43兆円の赤字であったことになります。
この赤字を埋めるために発行されている国債の残高は、2021年度末で990兆円になると見込まれています。
このことは我が国の財政赤字は1000兆円近くあるということを意味します。
年金財政が赤字だというのは、こ国の財政赤字がめちゃくちゃ多いというところから派生して広まった噂だと思いますが、実態はまったく異なります。
というのも、年金はこの一般会計とは全く別の勘定になっているからです。
年金の会計は「年金特別会計」と言い、戦前からあったいくつかの保険事業を統合して作られたものです。
この年金特別会計には年金積立金と呼ばれるお金が2019年度末で約190兆円もあります。
つまり年金財政は赤字なのではなく、190兆円もの貯金を持っているんです。
従って年金財政は赤字というのは全くの勘違いであり、むしろ今後も安定した運用が望める健全な制度であることがわかります。
年金に関する勘違い二つ目、「年金の運用は赤字続き」
さて、190兆円の貯金を日本はただただ金庫に隠し持っているわけではありません。
私たちの大切な年金積立金は「年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)」 という組織によって運用されています。
では、この GPIF による運用は一体どんな状況になっているのでしょうか。
積立金運用に関する実際の数字は GPIF のホームページを開くと誰でも見ることができます。
GPIF のホームページ https://www.gpif.go.jp/
それによるとこの20年間の間の累積収益額はなんと101,6兆円であり、収益率は年率にすると3,56%となっています。
GPIF は過去20年間で100兆円余りの利益を上げているんです。
GPIF が運用を開始して以降累積収益額の推移を見ますと確かに年によってはプラスやマイナスの時はありますが、全体的には着実に増加しています。
2020年度は、37兆7986億円のプラスとなっており、1期の収益としては史上最高の収益でした。
このように全体としては圧倒的なプラスであるにも関わらず、日本人の多くは年金の運用は損ばっかりしていて、赤字続きだという誤ったイメージを持っています。
これはマスコミによる無用な煽りのせいであると言えます。
マスコミは基本的には運用益がプラスの時には報道せず、マイナスになった時だけ大騒ぎします。
特にテレビのワイドショーなどでは、マイナスの年にだけ街行く人にインタビューしたりして、私たちの不安を煽るんです。
このようなメディアの嘘に騙されないようにしていきましょう。
年金に関する勘違い三つ目、「少子高齢化が進むので年金は崩壊する」
皆さんは次のような論旨を耳にしたことはありませんでしょうか?
かつて日本は多くの現役世代でお年寄りを支える「お神輿型」だった。
しかし少子高齢化が進む中、現在は三人で一人を支える「騎馬戦型」となり、将来的には一人で一人を支える「肩車型」に確実に変化していく。
今のままでは将来世代はこの負担に耐えられない、このような論旨の展開は至る所で述べられています。
少子高齢化が進むから年金制度は持たないよというのが多くの人の感想かもしれません。
ある意味、年金不安を煽るには最も効果的なロジックと言えます。
ですが本当にこのロジックは正しいのでしょうか。
実際の数字を見て調べてみましょう。
日本人口の中で65歳以上一人に対して65歳未満が何人いるかを見てみると?
1970年には高齢者一人に対して、若者は13.1人。
それが1990年になると高齢者一人に対して、若者は7.3人。
そして2020年には、若者が2.6人となりました。
このままいくと2040年には高齢者一人に対する若者は1.8人となるため、まさに肩車型といってもよく、確かに先の論旨は正しいように思います。
ところがこれはもう少し深く考える必要があります。
今申し上げたのは、65歳以上か65歳未満とか、単に年齢で切っただけの数字です。
ですがそういう切り方は統計上果たして正しいのでしょうか。
年金のような社会保険制度は現役で働いている人が保険料を負担します。
年齢に関係なく働いていれば保険料は負担しますし、逆に働いていなければ年齢が若くても保険料は払いません。
そういう観点で考えると単に年齢で切り分けてその比率を比べるのではなく、働いている人が働いていない人を養っている割合がどれくらいかで考えるべきだと言えます。
つまり一人の就業者が何人の非就業者を支えているか、これを見ることが大切なんです。
このような観点で実際の数字を調べてみると先ほどとは全く違う風景が見えてきます。
一人の就業者が何人の非就業者を支えなければいけないかで見てみると、1970年には1.05人であったのが、1990年になると0.96人となり、2020年では0.89人となりました。
つまり何人の働いている人が何人の働いていない人を支えているかという観点で見ると昔からこの数字はほとんど変わっていないどころか、むしろ改善し続けていることが分かるんです。
これは高齢化が進んで働いていない高齢者が増える以上に、60歳を超えても働き続ける働く高齢者が増えているためである。
また1980年には1114万世帯もあった専業主婦家庭が2020年には571万世帯にまで半減し、逆に共働き世代が倍増したことも、就業者が増加した要因の一つであると言われています。
さらに2021年からは70歳までの就労機会の提供が企業に対して努力義務として求められるようになったことも一因となり、就労者が増え続ける流れは今後も続いていくと考えられています。
そうなれば年金制度は崩壊するどころか、むしろより健全な形に変わっていくと考えるのが当然です。
従って、少子高齢化が進むからという単純な理由だけで、年金が崩壊するというのはあまりにも軽率すぎる結論だと言えるんです。