近年は山間部の湯治場にも訪日客の姿が目立つようになってきました。人里離れた場所で堪能する湯や食事、もてなしは慌ただしい日常生活を忘れさせてくれます。
秘湯を紹介します。
● 貝掛温泉(湯沢町三俣)目に効果があるとされる源泉かけ流し温泉
300年以上の歴史がある湯沢町三俣の貝掛温泉は「目の源泉」として知られる一軒宿です。
目を洗いに来る場所として江戸時代から親しまれ、大正期まで源泉を目薬として販売していた。
現在も白内障やドライアイに悩む客が訪れる温泉には目薬の成分でもあるメタホウ酸が含まれており、源泉は37度、ぬるめなので成分が逃げていかないという。
露天風呂の源泉の湯口から湯を救って、目を洗うと効果があるとされる。
源泉をボイラーで加熱した42度の内湯もあり、外湯との交代浴も楽しめる。
食事には毎日自家精米した、南魚沼産のコシヒカリを提供する。
人参やトウモロコシなどを加えた「薬膳玄米がゆ」は明治時代からの定番メニューで人気です。
客からのリクエストに応じ、養殖したイワナを塩焼きや刺身で堪能している客室から窓の外を眺めると山々の勝沢川に囲まれた四季折々の絶景に目を奪われる。
60代以上のリピーター客が多く、冬場は海外からのスキー客も訪れる。
合掌造りの本棟は1869年に建てられた。
昔からの建物を生かし、改良を重ねつつ古き良き日本らしさを残している。
貝掛温泉公式ホームページ
● 自在館 (魚沼市上折立) ぬるめに長くが伝統
栃尾又温泉は魚沼市湯之谷地域から福島県境に向かう途中の静かな山間にある。
古くから湯治場として知られ、自在館は約400年にわたり温泉を管理する「湯守」を受け継いできた。
大浴場は栃尾又温泉3館の共同浴場となっており、3カ所ある。
源泉かけ流しの湯は無色透明のラジウム温泉だ。
36度前後のぬるめの湯に1~2時間入り、上がる時にさっと熱い上がり湯で温まって出る。
長湯という伝統的な入浴法を勧める。 貸切風呂も館内3カ所ある。
創業時期は不明だが、江戸前後の記録が残る。怪我や病気の療養を目的に遠方の客が訪れ、1~3ヶ月滞在した。
現在では心の静養や病気になる手前の未病をケアしようと首都圏を中心に客が訪れる。
一人客が半数以上を占め、2、3泊から1週間ほど滞在する。
宿泊客からは1人で来ても居心地がいい。ぬる湯でリラックスし、ぐっすり眠れたなどの声が聞かれるという。
地元食材を使い栄養バランスを考えた、一汁四菜の食事も好評だ。
昨年大正期に建てられた大正棟をリニューアル。
温泉に浸かって体を癒すという400年間守られてきた。
栃尾又温泉自在館公式ホームページ
● 嵐渓荘(三条市)息をのむ絶景、雪の夜圧巻
三条市下田地域の山間にたたずむ一軒家。
守門川沿いに立ち、湯船や客室から望む四季折々の風景が訪れた人を癒している。
1927年創業、100年ほど前に創業者が井戸を掘ったことに始まり、当時は療養所のような施設だった。
創業者が亡くなると戦後は残された家族が観光旅館として経営を確立。
現在は年間約8000人が宿泊に訪れる。魅力の1つが渓流に立つ宿ならではの絶景だ。
特に雪深い季節はどこから見ても絶景。雪の夜は圧巻でライトアップされた渓谷は吸い込まれるような美しさ。
前庭と国登録有形文化財の本館、緑風館を同時に見下ろす渡り廊下からの眺めもおすすめだ。
客室も大きな1枚窓があったり、自然の光や音を取り込む設計になっていたりと周辺環境を活かす工夫が施されている。
あんどんやフォトスポットなどを用意し、季節を切り取る演出で景色と時間帯を掛け合わせた滞在価値を高めている。
越後長野温泉嵐渓荘公式ホームページ
● 鷹の巣館(関川村湯沢) 吊り橋の先に和の老舗
山形県境近くの鷹の巣温泉の老舗で年間2500人ほどが訪れる。
温泉は江戸時代の発見とされ、明治期の新聞には県下5大旅館の1つとして写真付きで紹介されている。
荒川にかかる吊り橋を渡っていくのが特徴です。
離れと本館合わせて12の部屋があり、全ての離れには温泉かけ流しの風呂がある。
本館に隣接する大浴場には内湯と外湯がある。お湯に浸かりながら川の流れもたも楽しめます。
ナトリウム・塩化物・硫酸塩温泉で柔らかいお湯がリラックス効果をもたらす。冷え性や皮膚の乾燥症などに聞くとされ、常連も多い。
訪日外国人観光客の姿が明治から続く旅館にも目立つようになってきた。 以前は中国からの方が多かったが、冬の予約で米国や欧州からの人も増えてきた。
湯に浸かって良し、舌鼓を打って良し、これからは雪景色を眺めて良し、非日常のひとときを満喫してできる。
鷹の巣館公式ホームページ