『光る君へ』第24回「忘れえぬ人」の話 | 星野洋品店(仮名)

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とある洋品店(廃業済み)を継がなかった三代目のドラマ感想ブログ

実資さん、怒ってましたね~。『小右記』にも、中宮 定子が職の御曹司(しきのみぞうし)に入ったことについて、「天下不甘心(誰も納得しない)」と記しています。また、「中宮の周囲の者が『中宮は出家していない』と言っているようだ」とも書いています。

 

定子の姿を見られるのは中宮の身内と一条天皇だけですから、彼らが口裏を合わせれば、髪を切ったことを隠すのは可能です。「髪を切っていないのだから出家ではないし、離婚でもない」と言い張ってるんですね。以後、定子の出家についてはあいまいなままになります。出家したとみんなが思ってるけど。

 

平安京 大内裏の中央より東寄りに内裏 外郭があり、内裏 外郭の中に内裏 内郭があります。天皇は内裏 内郭からめったに出ないものです。そして、尼さんは内裏に入れない。一条天皇と定子を会わせるために行成くんがひねり出した策が、定子を職の御曹司に入れることでした。

 

職の御曹司とは〈中宮職のお部屋〉の意です。内裏 外郭のすぐ東に隣接して、中宮の世話をする中宮職が建っています。中宮が喪中の間に内裏で神事が行われる場合などに、中宮は内裏を出て職の御曹司に宿泊します。

 

『枕草子』では、「建物が古すぎて、身舎(もや。建物の本体部分)に鬼が出るという噂で、廂(ひさし。身舎の四方につけられた拡張部分)に御座所をしつらえた」と書かれています。身舎がアウトで、身舎に隣接する廂はセーフなんかい!

 

あまり居心地のいい場所ではないけど、定子はここにずっと滞在することになります。『枕草子』に描かれる定子の楽しげな様子は、じつは多くがこの職の御曹司での出来事です。

 

 

一方、越前の国際ロマンス詐欺は、宣孝おじちゃんのプロポーズによって阻止されたようです。そもそも、元カノから左大臣への手紙くらいで国の政策が変わったりしないし。周明、フラれ損だな。

 

朱仁聡は官方貿易(グァンファンマオイー。公式の交易)を求めていましたが、これって朝貢貿易なんですよね。つまり、〈野蛮人がしょうもない手土産をもって挨拶に来たので、おやさしい中華皇帝が素敵な先進国グッズを持たせて帰す〉というもので、日本が属国認定されてしまいます。せっかく遣唐使がなくなったんだから、いまさら属国にならなくてもいいじゃん。

 

それに、都まで最短5日の越前は都に近すぎて怖い、という道長の主張ももっともです。なにしろ平安京は無防備ですから。中国の都市は城壁で囲まれていますが、平安京の城壁は羅城門の脇にちょびっと作ってあるだけ。平安京に入る外国使節に見せるためだけの城壁なんです。外国使節も来なくなっちゃったから、倒壊した羅城門の復旧すらしてませんし。

 

結局、大宰府でのみ民間船の交易を認めるという現状がベストです。一条天皇は、「藤原氏が貿易の利益を独占していやがる」と怒っていましたが。

 

日本側には硫黄くらいしか産物がなくて、すさまじい貿易赤字が出るので、朝廷としてはあんまり交易したくない。でも、唐物は欲しい。この葛藤を突いて、藤原氏が私的な交易で利益を出してるんです。宣孝おじちゃんも大宰少弐(だざいのしょうに。大宰府の実質的な次官)として赴任した際、こそっとボロ儲けしてましたよね。あの儲けは、おそらく道長にも献上されているはずです。他人事みたいな顔してるけど、道長だって当事者なんだぞ~。