『光る君へ』第18回「岐路」の話 | 星野洋品店(仮名)

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第18回の主な舞台は清涼殿でした。まずは清涼殿南廂 殿上の間での実資コント。助演は時には的を射たことを言う道綱と平惟仲(道兼の前妻 繁子の再婚相手)。

 

「好きではない。まったく好きではない」と例によって強調しながら、実資は常識に従って道兼を関白に推しました。内大臣 伊周より右大臣 道兼のほうが官位も年齢も上ですし。

 

殿上の間と昼御座(ひのおまし。天皇の御座所)は、壁一枚を隔てただけ。その壁には、実資が座る下座のあたりに〈櫛形の穴〉と呼ぶ半月型の窓が開けられています。桟が斜め下向きに入れられており、昼御座の床のほうが高いため、天皇からは殿上の間をのぞけるけど、殿上の間からは昼御座の様子を伺えないようになっています。実資はこの構造を利用して、一条天皇に〈雑談〉を聞かせているんですね。策士!

 

 

結局、関白には道兼が選ばれました。しかし、御礼言上のために参上した清涼殿東孫廂で、道兼は倒れました。立っていられなくなったのではなく、不意に意識を失った人の倒れ方でした。さすが舞台役者。

 

ナレーションでも説明されましたが、道兼死後の1カ月ほどで上位の公卿の多くが死去し、大臣は内大臣 伊周、大臣の職権を代行できる大納言・権大納言は権大納言 道長しかいない状態になりました。

 

早急に左右大臣を選任する必要がありますが、選任をおこなう天皇の補佐を誰がする? 官位が一番高いのはもちろん内大臣 伊周。しかし……。

 

ここに東三条女院 詮子が介入してきました。歴史物語によれば、昼御座北側に隣接する夜御殿(よんのおとど。天皇の寝室)北側の扉から夜御殿に乱入して天皇に詰めよったそうですが、本作ではスタジオのスペースの都合で北の扉がないため、南側の扉から一条天皇が出てきました。

 

昼御座の御帳台(みちょうだい)に腰かけた一条天皇に、詮子女院は円融天皇の話を持ち出して、訴えかけました。円融天皇が関白の影響を嫌って親政を望み、退位後は院政を志向していたのは史実です。体調が思わしくなく、実現はしませんでしたが。道兼が毒を盛ったから……。

 

一条天皇は「伊周に決めております」と言い捨てて夜御殿に引っこんだものの、内覧宣下を受けたのは道長でした。まあ、大学3年生に国政を総攬するのは無理でしょうな。それに、母方が中級貴族の高階氏で、公卿たちに対して影響力がないのも痛かった。付け焼刃で公卿たちを招いて宴を開いたけど、近い血縁でもないのに支持はもらえません。実資に至っては宴に欠席してるし。

 

 

第18回でストーリーとあんまり関係ないところで面白かったのが、蔵人頭 源俊賢の勤務ぶりでした。また夜勤中で、清涼殿に踏み込んできた詮子女院を追い帰そうとしていました。弘徽殿が火事になったときも夜勤中で、天皇に火事を知らせに来たし。正気を失った道隆が一条天皇の御簾の内に乱入しかけたときは、道隆に抱きついて押しとどめました。

 

異母妹の明子さんは「褒めるところがない」と酷評していますが、俊賢兄ちゃんは宮中で頑張ってるよ! 「娘を産め」とか「道長の前で褒めてくれ」とか言ってくるのは、明子さんにとって鬱陶しいだろうけどさ。

 

それに引き換え、もうひとりの蔵人頭 藤原斉信と来たら! 清少納言の胸元に紅葉を差し入れて口説き、しかもフラれるとは。ほかにやっていることといえば、公任邸でF4(道長を除く)とダベってるだけ。真面目に働け!