『光る君へ』第17回「うつろい」の話 | 星野洋品店(仮名)

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とある洋品店(廃業済み)を継がなかった三代目のドラマ感想ブログ

チョートク! チョートク? チョードク!

 

今週の実資 with 無能コンビ(道綱&顕光)による殿上コントのお題は改元でした。長徳と改元されたものの、「長毒」と音が似ている。また、〈徳〉の付く年号は村上天皇時代の〈天徳〉だけ(当時)ですが、天徳年間にも疫病の大流行がありました。縁起わるっ! 

 

じっさい改元後も疫神は去らず、20人ほどしかいない公卿のうち、6人が死亡するという惨事になります。関白 道隆は、「しもじもの者しか罹らぬ」なんて言ってましたけどね。投げ捨てられた死体で側溝が詰まる状況では、貴族の邸の遣水(やりみず。水路)も逆流しますし、井戸水だって汚染されます。道綱ママもこの流行で死んじゃうんです。

 

道長は嫡妻 倫子の財まで使って庶民を救おうとしていますが、焼け石に水。それどころか、倫子さんの尋問で個人的な大ピンチじゃないですか。

「(悲田院を視察した晩は)内裏に戻って仕事をしておった。ハハッ」

と誤魔化したものの、倫子さんなら内裏に戻っていないことのウラは既に取ってるはず。早めに白状したほうが傷は浅いぞ。

 

 

関白 道隆の体調悪化は誰の目にも明らかになってきました。なんとか中関白家の権力を次世代に継承させようと、道兼にまで慈悲を乞い、定子に皇子を生めと要求し、一条天皇の御簾の内に乱入してまで伊周を関白に任じてもらおうとします。

 

現実問題、数え22歳で伊周が関白になるのは無理だけど。一つ上の世代でも、伊尹→兼通→頼忠→兼家パパと、兄弟・従兄弟間で摂政・関白が継承されていますし。

 

体調不良の道隆と公卿に嫌われている伊周の裏で、中宮 定子 vs 東三条女院 詮子の暗闘が起きていました。姑を完全に政敵と見做して政治行動をする定子というのは新機軸ですね。面白い。約20年前に彼らの大伯父 兼通が関白就任に先立って内覧宣旨を受けた先例を調べ、伊周も内覧宣旨を受けるように勧めました。

 

しかし、伊周が受けた宣旨は、道隆の病の間という条件が付いていました。これでは、道隆が死ぬと無効になってしまう。伊周は、「病間」という文言を「病替」と書き換えてもらおうとしましたが、一条天皇を不快がらせただけに終わりました。

 

ここは一旦退いて、定子が皇子を生むのを待ってもよかったんですが、権力を一度手放せば、二度と復権できないと思ってたんでしょう。実資に「積悪の家」と言われちゃってるし(『小右記』にもそう書いてある)。

 

積悪の家には必ず余殃あり (「易経」坤卦)
悪事を積み重ねてきた家には、子孫に至るまで禍が起きる
 
一方、東三条女院 詮子は伊周を嫌う公卿の背中をひと押しし、道兼を引き立てようとしています。面と向かって「道兼兄上のことは嫌い」と言っちゃってるけど。いくらお気に入りでも、道長を最高権力者にするのは無理と見切っているあたり、嫁の定子より政治力が上ですね。道兼さんには、女院のご期待に応えて頑張ってほしいものです。心の底からそう思うよ……。