召人システムの話 | 星野洋品店(仮名)

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とある洋品店(廃業済み)を継がなかった三代目のドラマ感想ブログ

『光る君へ』第8回で、道兼がまひろを「麗しいが不愛想だ」と評していました。下級貴族の娘がわざわざ顔をさらして琵琶の腕前を見せたってことは、道兼の愛人になりたいか女房(侍女)として雇ってほしいというアピールのはずです。なのに愛想がない。当時の常識からすると、謎の行動です。

 

謎といえば、道長のしていることもまあまあ謎。まひろちゃんとどうなりたいんだろう? ひと言多い公任さんの言う通り、嫡妻にはできないしさ。夫の生活費は妻が負担し、子育ての費用も妻持ちですから。ダメ時パパがほかの女のところに通っていたのも、嫡妻 ちやはが貧乏だったからです。

 

そんな道長さんにおススメしたいのが、召人システムです! 召人(めしゅうど)とは、〈呼ばれた人〉の意で、嫡妻の女房を寝所に呼んだのが召人というわけです。まひろを倫子さんの女房として雇わせれば、毎日堂々と愛する人に会えるってことですよ!

 

嫡妻にとっても実は悪い話ではない。高貴な男性が一人で寝るのはおかしいと思われている時代です。嫡妻が体調不良などで夫の相手をできないときは、女房を夫の寝所に送りこむんです。別妻の屋敷に行かれるよりはマシだし。

 

夫と召人の間に子どもが生まれれば嫡妻の子として育て、召人は子どもの乳母になります。『源氏物語』の明石の御方のようなものです。明石の御方の娘(明石の姫君)は紫の上の娘として育てられ、入内の際には実母である明石の御方が女房のひとりとして付き添いました。

 

これが当時の常識だからって、心の底から納得しているわけでもないとは思います。第8回で、穆子さん(倫子ママ)が夫の左大臣 源雅信が赤染衛門と二人きりで話したと知って、「なんか、イヤ」と言っていました。「わたくしが雇っている女房に、許可なく手をつけたんか? アァン?」ってことですな。土御門邸は穆子ママの持ち物なので、離婚するとしたら、出ていくのは雅信パパのほうなのよね。パパ、自重して!