地獄の扉を開けたのは誰だ | 風の日は 風の中を

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~職場や学校で不安感に悩んでいる方へ~
「不安とともに生きる」森田理論をお伝えしたいと思いブログを書きはじめました。
2011年9月からは、日々感じたこと、心身の健康などをテーマに日記を綴っています。

(前記事のつづきです)

この記事は、1989年にピークをうった日本のバブル経済が崩壊していく過程で、「相続税対策」を謳い文句にした商品が多数の犠牲者を生み出した【変額保険事件】についてです。


バブル期に、もっともふくらんだもの、それは土地の値段です。

多数の人が、「土地の買い占め」にのり出したことで、地価が上昇。

買った土地を担保に銀行から融資を受け、また土地を買う。

土地の売買で得た資金は、大量の株買いにも向かい、株価も急上昇しました。


これらの現象のスタート地点にあったのは…やはり銀行が、企業に貸し出す場合の金利の大幅な引き下げをおこなったことでしょう。(1980年代)


資産を手にした人々がみんなバブリー(←死語?)な生活、精神状態だったわけではありません。

土地の所有者のなかには、地価の急騰という現象に、将来の不安を感じた人たちもいました。

【相続税】の心配です。当然その方たちは高齢者。


地価高騰で、跳ね上がる相続税。先祖から受け継いだ土地を子孫にわたせなくなるかも…そんな不安を抱いた人々のもとに銀行員&大手保険会社営業マンが二人組となってあらわれました。

そして「最強の相続税対策」の名のもとに、変額保険の契約をさせていきました。


銀行員と保険会社営業マンが組んでいたのは、この商品が「融資一体型」といわれる非常に特殊なものだったからです。


この時代、銀行は「厳正な審査のもと融資をする」ことで、保険会社は顧客にリスクある商品を販売したりしないことで、それぞれ絶大な信頼を得ていました。

その信頼を背景にむすばれていった契約。


【融資一体型変額保険】とは、以下の特徴があります。


①保険料全額に相当する金額の融資を受け、保険料全額を一括で支払うかたちで保険に加入。

つまり、融資契約と保険料一時払いがセットになっている。


②借入金の利息は順次貸し増しされる。

③相続発生時に死亡保険金(ないし解約時の現金)を用いて元金及び利息の返済を行う


あきらかに、従前の保険とは性質を異にするものです。

運用の成果を、支払う保険料や解約返戻金の増減に反映させるハイリスク・ハイリターン商品といえます。運用のリスクは契約者が背負わされるのです…

(投機的商品であり、保険の運用が高率であるときには相続税対策効果が得られますが、 保険の運用が悪いと相続税対策どころか、契約者(ないし相続人)に巨額の損失を負わせることになります)


バブル末期から約3年、販売されたこの保険は文字どおり、契約者を地獄におとすものでした。

信頼していた銀行員&生保会社営業マンのすすめで、相続税対策をしたつもりが、自宅を競売にかけられたり、巨額の債務および日々増大する損失に絶望して自殺したり・・・


そして銀行、生命保険会社を相手に訴訟が多発。

これほどリスクが高い商品を、契約させるにあたり有利性のみ強調、リスクを正確に説明しなかった責任を司法の場で追及できるのでは、と思われていました。


しかし、裁判の勝率は低かったのです。9割くらいは敗訴したのでしょうか…


個人への融資を拡大したかった銀行、金融自由化の中で営業拡大したかった生保会社。

説明責任をあいまいにし、すべてのリスクを被害者におしつけるかたちで逃げ切ったのです。


裁判に勝てなかった理由は、組織vs個人という圧倒的な力の差、情報量の差、自己責任の強調、裁判所の無理解(変額保険の特殊性。また本来、裁判所は、銀行・生保会社寄りといわれる。再就職と関係あるから!?)etc、なにもかも不利で、ほんとうにお気の毒だと思います。


あの裁判は、国を相手取ったものではなかったけれど、それに近いものだったのでしょうか。

リスク商品を認可していたんですものね…

変額保険契約を通じて多額の資金が株式市場に流入、それによって株価を支えられるというメリットを財務省(当時は大蔵省?)は見出していたと思われます。


時代が大きく変化するとき、その先を予想すること、なんと難しいことでしょうか。(それ以上にあやまちをおかした事実を認めることがもっと、むずかしいんですよね)


上記の話をしてくれた私の義父は、元証券マンです。1989年の秋に証券会社を退社し、自分で事業を始めています。まさに、いちばんおいしい時代だけ、証券マンをやり、そこで得た資金をもとに事業をおこす。。。義父は時代を先読みできたほうなんでしょうか!?

多少は、そうなのでしょうが、「負け知らず」ではないようです。

変額保険には手を出していませんが、べつのことで読み誤り、目論見がはずれることはあったみたい…


義父と話していて、つくづく思うのは、私の結婚後の家庭生活の中でも、やけに存在感が大きいなぁという事。ダンナより大きいかもしれません。今までブログに義父のことは、あんまり書けなかったのですが、また機会があれば。。。('-^*)/