遺品整理の過去ログから2話です。
少し前にホンモノの特殊清掃と遺品整理◇過去ログ集めてみました という記事では人の縁について触れましたが今回は人の『業の深さ』に触れてみます。
ワタクシたち日々遺品整理現場では様々なドラマを目にするわけですが、中にはドロドロぐちゃぐちゃな相続争いに出くわすことがあります。
(2016.6.28)死人に口なし
過激な題名ですがもの言わぬことをいいことに事実をねつ造したり勝手な解釈でことを進めようとすることですが遺品整理現場ではときどきあります。
都内の一等地と言える戸建てで80代のお爺さんが孤独死、室内の特殊清掃と遺品整理を行ったんですが過去例がないぐらいのバトルというか骨肉の争いとなりました。
まず汚染ヵ所を除去し異臭を低減させてから遺族と一緒に作業をするという流れです、依頼者は長男でしたが当日は別に兄弟2人とそれぞれの奥さん、そして従弟3人も参戦するというなんともいえない構図でのスタートみんなそれなりのお歳です
こんな場合はタンスの中とかいかにも出そうな部分は私たちは触らないのがセオリー、開始から1時間もしないのにもう始まっちゃいました、どうやら株券(?)を見つけた弟がこれは昔親父から死んだらお前にやると言われてたモノだ!と、それに応戦する他の遺族・・・
何か出るたびにこんなことされたらたまらない、依頼者である長男を呼び今後の打合せをしました。
「すみませんお見苦しいところをお見せして」「あいつら親父が死んだ途端ハイエナのように群がってきやがって!」と苦悩の胸の内を吐きだしてました。
とりあえず発見した貴重品は一か所にまとめ話し合いは後にして作業優先と決め再開したのですがしばらくして弟と従弟が私や他のスタッフに絡みだしたのです「さっき兄貴と何話してたんだ?お前ら兄貴とグルになって金を隠しただろ!」
どうやら長男夫婦とすぐ下の妹夫婦はそれなりに常識的な感じで立ち居振る舞いからもそう思えます、一方弟夫婦は上2人と対照的、なんとなくアウトロー感が漂ってます、従弟3人は微妙に弟寄り、このような構図です。
モメ事は今しないと決めたのにもかかわらず500万の無記名債券(昔政治家やバブル紳士が脱税やマネロンで使ったやつ)が10枚ほど出たときにとうとう勃発しました、例のごとく弟が「これは親父がお前にやると言ってたやつだ、間違いない俺はこの目で見て直接聞いたんだ」
兄)「勝手なことを言うな!コレが売られてた頃はお前はとっくに家を飛び出してただろうが!」「だいたいお袋が生きてるときにばんたび金むしってたの知らないと思ってるのか!お前にそんなこという権利はない!」
もう作業どころじゃありません、とりあえず貴重品捜索はそちらでやってくださいな、後日不要なモノだけ回収しますから、とその日は撤収したのです。
死人に口なしをいいことに好き放題やる輩たまにいます、これとは別に遺品整理中に知らない人が来て実は生前お父様のお金を貸してまして・・・ってのもありました。
で、その放蕩弟の現場ですが私たちが撤退すると言ったとたん全員の態度が変わりなんとか続行してくれと懇願され、今度こそは絶対モメないと固く約束し続行したのでした、後日大モメするんだろうなあって思ったけど片付け途中に私のところのスタッフが公正証書を発見し長男に渡しました、内容は私たちにはわかりませんでしたがどうやらみんなにとって最良の方法が提示されてたんだとその後の皆さんの行動から伺えました。
しかし遺産争いって壮絶です、あーー貧乏でよかった。
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ここまで壮絶なのは珍しいですがこういうの見ると故人が浮かばれません、すごく悲しい気持ちになってしまいます。
(2016.7)誰のモノなんだ?
誰もが大切で絶対必要なモノ、それは現金や貴重品です、これを必要ないとか捨ててくださいと言った人は今まで皆無(;^_^Aだから私たちはいかにも出そうな現場ではかなり時間と手間をかけ捜索するんです。
でも発見したはいいけど誰に渡せばいいんだ?ってことが過去に何度かありました、普通は依頼主がその対象だけどあくまでもこっちの判断で渡せないこともあるんです、ある不動産屋さんのご依頼でどうやら残置物付の物件を買い取りそれのお片付けでした、まあこのような場合は理由があるから売却に至るんで金目のモノはまず出ません。
築年数もかなり古く何世代かにわたって住んでた模様、それなりに部屋数もあり古い衣類なんかもミカン箱に入って押入れなどを埋め尽くしてました、そんな中から出たのです!現金が・・・今はほとんど見かけない聖徳太子の1万円札、しかも帯封でそれなりの数Σ(゚д゚;)
誰に渡せばいいんだ?おそらく物件の引き渡しは済んでるでしょうから依頼主の不動産屋?いやいや筋から言えばそうなんだろうけど渡すわけにはいかない、一応顧問弁護士に相談したところ微妙ではあるけど元の持ち主に渡したほうがいいね、ということで登記簿から元の所有者を割り出し弁護士経由で連絡を取ってもらったのです。
数日して元の所有者が来社されました、聞けばあの家を建てたのはお爺さんでかつては三世代9名が暮らしてたらしい今回商売上のことで家を手放すことになりかなり叩かれたけど即金の魔力で整理をする間もなく手近な荷物だけ持って引越したということでした。
例のモノと一応取っておいたアルバムや子どもの頃であろうと思われる文集を渡したところ、目に涙をいっぱい浮かべ「おじいちゃん、おやじ、すまない・・・」と言葉を絞りだしてました、私たちにも何回も何回も頭を下げしばらくは遠くでひっそり暮らさにゃなりません、落ち着いたら改めてお礼にきますと言ってくださいました。
これほどじゃないにしろ絶対私たちから本来の持ち主に届けてあげなきゃ、ってのはあります、本当に天涯孤独の場合はどうしようもないんだろうけど今のところそのケースにはあたってない。
モノは本来あるべきところへ必ず行くようにすべきなんです、私たちが発見できるのもモノが発する主張に呼応できる心構えがあるからだと自負してます。
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部屋の片付け、遺品整理どちらも人の暮らしや時には人生にまで踏み込む仕事です。