
私の娘は知的に最重度です。まだおしゃべりどころか身辺自立もままなりません。オムツを取りたくて毎日練習して、でも結局毎日、娘がお漏らしした後を私が消毒して、衣類も全部洗って・・・そんなことを7歳まで繰り返していました。「この子は本当にオムツが取れる日がくるのだろうか・・」7歳の夏、途方に暮れていた私に向かって、近所に住んでいる私の実の父がこう切り出しました。
「夕食の後に散歩に行ったら、おなかがこなれてウンチが出るんじゃないか?夏の夕暮れ時ならちょうど涼しかろうし。」
そんなに上手くいくもんかねぇ・・・と半信半疑の私。でも父は娘の夏休みの間、毎日娘が夕食を食べ終える頃を見計らい我が家を訪ね、娘を連れ出して一時間、夏の夜道を散歩させてくれてたんです。だけどそんなこと続けたって、何日経っても失敗する日は続きました。「あぁ・・・やっぱりダメなのかなぁ・・・」何度も心が折れそうになりました。
ですが忘れもしません!あれは夏休み最後の日のこと。洗い物をしていると散歩から娘と両親が帰ってきました。そして娘がトイレに入ったのですよね。そうすると、
「お姉ちゃん!とうとう自分でウンチしたよ!やったよ!やった!」
と母の声。もうビックリしました!
「ウソ!本当に?!」
とトイレを覗き込むと・・・本当に汚い話でごめんなさい(笑)でもこの日を7年待ったんです。心が折れながら待ったんです。・・・嗚咽して泣きました・・・家族全員で泣きました・・・。
その時に思ったんです。両親は孫の成長のことももちろん心配だけれども、きっとそれ以上に私のことを心配してたんだなぁって。トイレだけではなく、両親は私に内緒で娘にいろんなことを教えていたそうです。「うわぁ!こんなこともできるようになったんだぁ!」と私が娘の成長を喜ぶ顔が見たかったのだと。親って本当にありがたいなぁ・・・それに比べて甘えることが当たり前になっていたなぁ、私は。もっともっと、両親に感謝しなくちゃなぁ・・・。
でもずっと突っ張って、我がままばかりで生きてきた私。なかなか恥ずかしくて「ありがとう」のひと言が言えずにいました。でもこの思いは両親にちゃんと伝えないと。そんな思いがこみ上げてできたのがこの「蝉しぐれ」という曲です。
親への感謝の気持ちって、なかなか言い出せないことって皆さんも多いのでは?この曲を聴いていただき、みなさんのご両親に対しても「ありがとう」っていうあったか~い気持ちを思い出していただけたら幸せです・・・。こんなエピソードを踏まえて、この曲を聴いていただけたら、また違う味わいがあるかも・・・とお話させていただきました。
蝉しぐれ 作詞:作曲:編曲 MIMO
「夏の日の夕暮れ時は
もう涼しかろう」と
小さな手 連れ出して行く
父と母の背に 手を振った
交わす言葉 少ないままに
言うことも ろくに聞かずに
振り返れば 我がままばかりの
娘でした・・・
花嫁の手紙の中じゃ まだ 浮かばなかった
この想い 溢れて 涙 にじんでます
母となり 初めて知った
親とはこんなにも
胸こみ上げる 愛しさ 強さ そしてやさしさ
おんなじでしょう?
たとえ どんな 悲しいことに
この身が 打ちひしがれても
ただ この子を 守るために
生きていくから
もの言わぬ 我が子に教わり
自分も愛されてた その想い
気づいて 涙 にじんでます
これからも
春夏秋冬と 駆け抜け
想い出は 満ちていくけど
いついつまでも 元気でいて ほしいから
照れくさい「ありがとう」を
素直に言えなくて
この想い 唄うため 涙 こらえてます
涙 こらえてます