ちょっとつぶやき -15ページ目

ちょっとつぶやき

徒然に書き綴っております

夜の音を遮り
部屋は 
酒を啜る音と
三妖の声だけ


炎の灯りをぼんやり見つめて
死を招く神の話を
聞いていた

そなたは 生きて死ぬ事はできず
記憶は消えても 輪廻を生きねばならん
輪廻の最後は わからぬ

わしはそなたの死を見た 
そして
あのものはそなたの生を見た

われらが手を招く事なく
そなたは 死に産まれた

われらは見届けよう
そなたの最後を

輪廻の最後を

これが最後じゃな
お主が棲む舘は

次はもうなかろう


二人は杯の酒を空にすると
杯のふちを とんとんと二度叩いた
杯に酒は溢れる事なく
更々と砂になり
風に運ばれて消えた


美味しい酒を頂いた
姫よ  
また 逢おうぞ

二人の声が重なり
舘から消えた

山の霧は晴れ
紅い花は湖に路をつくり

何もなかったように
時は流れている



霧が晴れ
月が闇夜が明るく照らす 


約束事も交わさず
生と死の神は 魂の吐息を咲かせて
魂の吐息を刈り取りにゆく


ぼんやりと部屋を照らす炎が
天を目指すように揺れることなく
真っ直ぐに燃えている

盃を空にしても
盃からは酒が溢れてくる


一時生き死にから離れ
己の役割の荷をおろし
ただ静かに時を眺める

のう 鬼姫よ
喘ぎ苦しみ人は命を産み落とす
そして赤子は 苦しみ産まれ出たら泣いて世を渡る

そして 人は生きねばならん
苦しく辛く悲しくとも生ききらねばならん
戦で命を落とす間際まで人は生ききらねばならん

鬼姫が関わる人間は
強い命を持って死を迎える

不思議な鬼よ



雨が降る
闇夜で眠る人ね夢の断片が
舘に流れ込む


二人で買い物をしたり
笑っている
女は嬉しそうに
男もまた嬉しそうに
会話をはずませ
手を繋ぎ
道を歩き
時を進める

男は名のある歌人で
女は人の渦に紛れても誰も気にする事がない

この男女 出逢いどれ程の時を離れすれ違いながらも また出逢う信念を持っているのだろう

もうこの世におらぬ男女が夢にまで出逢う信念を

いつか 出逢いまた時を重ねてゆこうと願い想い呪を互いにかけた


ゆらゆらと灯りが揺れ
部屋を淡く照らす

ようもまぁ こんな念まで流れ込むとは

死を招く神が 酒をすすり呟く

なんとまぁ 時を遡りくる念とは鬼姫の舘ならでは 

真っ白な着物の生み出しの神が笑う


舘は 数年に一度死と生の神が出逢う


誠に不思議な鬼の棲みかである